text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は小田急3100形「NSE」と名鉄7000系「パノラマカー」の東西パノラマ特急のプラレール製品を比較します。どちらもデフォルメと造形が秀逸で今見ても見劣りしない製品、その魅力に迫ります。(編集部)
先日、プラレールの新シリーズとなる「プラレール リアルクラス」の発売が発表されました。その名の通り、通常のプラレールよりも大人向けとなるリアルな造型の製品になるようですね。第1弾として、小田急3100形NSEと185系特急電車が登場しますが、どちらも以前プラレールで発売されていた事があります。
↓東西パノラマ特急を比較!詳しい写真はこちら↓
新旧185系はリアルクラス発売の際にクローズアップするとして、今回は昭和の名車特急として名高い小田急3100形NSEと、同じくパノラマ展望が売りの電車である名鉄7000系パノラマカーのプラレールを見ていきたいと思います。
■赤い車体が美しい東西のパノラマ特急
名鉄7000系「パノラマカー」は、先頭部に展望室を、その上に運転台を設けた日本初の構造の電車として1961年にデビュー。小田急3100形NSEはパノラマカーの登場から2年後、1963年に東京は新宿と観光地箱根を結ぶ特急「ロマンスカー」の2代目車両としてデビューしました。
同時期に開発が進んでいた事やデザイン上の結果、両車は奇しくも似たような外見となりました。同じ赤系統の塗装を纏い、看板特急としてどちらも長く親しまれるようになります。
登場は名鉄パノラマカーが先ですが、プラレールではメーカーが関東にあることもあり、小田急NSEがまず製品化されています。実車のデビューから遅れること11年、1974年に「パノラマとっきゅう」として発売されました。この「パノラマとっきゅう」はNSEの車体ではあるものの、赤い車体に青い帯という架空の装いで登場しています。その姿は名鉄の走る中京圏に配慮した結果とも噂されますが、定かではありません。
パノラマカーは実車のデビューから遅れること20年、1981年に名前をそのまま「パノラマカー」として製品化。同時に「パノラマ特急」へと商品名を変えていたNSEは、塗装を実車に即したものに変更の上「ロマンスカー」としてリニューアルされました。
どちらも私鉄の名物特急電車というだけあり、プラレールでも度重なる再発売とそれに伴うグレードアップが施されています。今回はその2製品のうち、最も高度な仕様で発売された晩年の製品を比較します。
▲「パノラマカー」と「ロマンスカー」の並び
写真の「パノラマカー」と「ロマンスカー」はどちらも2003年に発売されたものです。「パノラマカー」は中京圏のスーパーマーケットが企画した限定品「名鉄7000系パノラマカー(白帯)」のもので、「ロマンスカー」は全国流通品のオールインワンセット「小田急 箱根の旅セット」のものです。車体の型はどちらも発売当時そのままで、動力が更新された以外はほとんど手を加えられていません。どちらも、古い車体に色差しを行うだけで見違えるようになる好例と言えますが、車輪だけはプラレールらしく黄色となっているのはご愛嬌です。
▲先頭部の比較。実車の特徴を上手く捉えつつデフォルメされている
発売時期による成型技術の差や、原型を作る際のデフォルメセンスの比較が出来るのも、似た構造を持つ車両ならではと言えます。「ロマンスカー」は複雑な塗装が施されるようになる前に発売された製品なので、特徴的な太いグレーの帯が入る箇所は帯を象った凸モールドとされ、ステッカーで表現されています。将来的に塗装する事を想定してか、実車の塗り分け線に合わせて溝が彫ってあり、先述の通り実車通りの姿で発売する際に活用されました。
「パノラマカー」はNSEより造型技術が向上した後の設計となっているため、拘りの造型が多く見られます。展望室の窓はクリアパーツ化され、クーラーにはルーバーを表現、車体には乗務員室へ登るステップまで再現。屋根も別パーツとなっています。
▲「ロマンスカー」は台車でスカートを表現。「パノラマカー」は近年の製品と同様となる車体のみの表現。
「ロマンスカー」は発売当時の他の車両と同様の設計思想を持ち、台車が車体と一体に見えるようになっています。「パノラマとっきゅう」時代の台車は白く成型されていましたが、1981年のリニューアル時と1999年の小田急復刻品では車体と同色に成型、2003年の「箱根の旅セット」ではスカート部と床下部で塗り分けられ、よりリアルに寄せられました。
「パノラマカー」は発売時からある造型を利用し、「名鉄7000系パノラマカー(白帯)」では、窓枠・ライトケースへの銀色塗装、乗務員室ステップの塗り分けが施され、連結器とタイフォンスリットも塗られています。
両車の特徴である運転台はプラレールの車両限界に収まるように上手くデフォルメされており、そこまで違和感のないように仕上がっているのが素晴らしいです。
ロマンスカーNSEは最後の発売から20年、パノラマカーも引退時に再度復刻された12年前を最後に発売されていません。両車ともに実車の引退からずいぶん経ち、既に馴染みのないレイル・ファンも多いかもしれません。「リアルクラス」でNSEが発売されるとなると、やはりパノラマカーの発売も期待してしまいます。昭和30年代の車両がおもちゃの世界でも再評価されるようになるのでしょうか?今後のプラレールに期待です。
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