text:RMM
photo:宮下洋一・青柳 明・浅水浩二・RMM
月刊『RM MODELS』連載「昭和模型工作室」でお馴染みのモデラーである宮下洋一さん。ごく最近では『写真とイラストで綴る戦前型国電(上)(下)』刊をはじめ、旧型国電の本も多数書いていらっしゃいます。そんな宮下洋一さんとは、いったいどんな鉄道趣味を持った人なのでしょうか。ここでは改めて宮下さんの作品や人物について掘り下げてみようと思います。
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『RM MODELS』の読者の方なら、宮下洋一さんといえば初期の作品記事「地鉄電車慕情」の世界で繰り広げられる個性豊かな吊り掛け電車が活躍する地方私鉄が思い浮かぶかもしれません。一方で毎年秋に行われるイベント「軽便鉄道模型祭」では、宮下さんの作る「軽便鉄道」のモジュールレイアウトも見ものです。
特に、宮下さんが40年以上に亘って製作を続けている架空私鉄「中越地方鉄道(略して地鉄電車)」の作品群は、宮下さんの趣味世界を象徴する作品群です。この地鉄電車の作り込みは、路線設定から車両、周辺の街並みに至るまで、まるで実在するかのようなこだわりの緻密さは見る者を飽きさせることはありません。
もちろん架空私鉄以外にも、実在する旧型国電や私鉄旧性能車両の製作のほか、1:48/16.5mmゲージの「Oナロー」作品ではそのスケールの大きさを活用して、家々に住まう人々の生活までも模型で再現しています。
さて、ここへ来て疑問が浮かび上がります。宮下洋一さんは「地方私鉄」の専門のモデラーさんなのか、「軽便鉄道」の専門のモデラーさんなのか、はたまた「旧型国電」が専門のモデラーさんなのかという点です。
それは宮下さんの作品そのものが答えとなっていると言って良いでしょう。例えば地方私鉄を一つ取り上げても、その電車の出自は大手私鉄由来の車両もあれば、国鉄からの払い下げもあり、紐解いていくとその車両の調査対象は、国鉄・私鉄と枠を問わない幅広いものです。また、軽便鉄道と一般鉄道ですが、線路のゲージが狭いといった違いなどはあるものの、鉄道以外の建物や構造物、背景となる景色といった周辺の風景に大きな違いはありません。
一見、「地方私鉄」「軽便鉄道」「旧型国電」と別のカテゴリーの題材に思えますが、こうした点で意外と共通項は多いのです。それらに精通し、各作品にそれぞれの要素を織り交ぜながら宮下さんの作品は作られているため、非常に奥行きのある味わい深いものになっていると言えるのではないでしょうか。
そしていずれの作品にも一貫しているのが、「古き良き時代の日本の風景を鉄道をモチーフに再現している」ということでしょう。鉄道は車両とレールだけで成り立っているわけではありません。利用する人が乗ることで鉄道は運行され、人がいるということはそこに生活があるということです。そうした生活の風景も抜かりなく作り込むことで、ある種の「物語性」が作品に生まれて個性へとつながっているのです。そうした理由から宮下さんは、この時代の風景に密接に関係する地方私鉄、旧型国電、軽便鉄道、そしてその周辺の風景や建物、そのいずれもの専門家であると言えるでしょう。
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◆宮下洋一氏とKATO 関良太郎氏が旧型国電を語り尽くすイベント開催!
2023年4月29日に、本誌・月刊『RM MODELS』別冊「写真とイラストで綴る戦前型国電(下)」の刊行と、KATO「クモハ52(2次車)飯田線4両セット」の発売を記念して、連載でもお馴染み宮下洋一氏と関良太郎氏による、旧型国電に関する座談会をホビーセンターカトーにて開催されることとなりました。