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【いま再注目!】「旧型国電」って一体なんなの?古いだけじゃない、その魅力とは?

2023.04.08

text:鉄道ホビダス編集部

’53 夏 飯田線 牛久保 P:田中健吉
(消えた車両写真館より)

 鉄道趣味を続けていると目にする機会が多い「旧型国電」という言葉。模型の世界などでは現在も根強い人気を誇るジャンルで、近年においても新製品が定期的に登場していますが、実車の方ではすでにその姿を本線上から消し、名実ともに過去帳入りした車両群と言えます。そんな中で、そもそも旧型国電とは一体どういう電車たちなのでしょうか?今回はそんな旧型国電という存在に迫ります。

↓懐かしの旧型国電の写真一覧はこちら!↓

■そもそも旧型国電という概念とは?

’82.8.20 陸前原ノ町電車区 P:前 直也
(消えた車両写真館より)

 「旧型国電」という言葉が生まれたのには、1957年に登場したモハ90系(後の101系)の登場が大きく関わってきます。同車は近代的なカルダン駆動を採用しており、以降製造される同様の駆動方式の電車たちを「新性能電車」と呼称したことに対する言葉として、従来型となる吊り掛け駆動の国鉄電車たちを「旧型国電」と呼ぶようになりました。
 もちろん新性能電車が生まれる以前は、全てが吊り掛け駆動の電車であったことから、区別の必要はありませんでした。ですが、新しい概念が生まれたことで、従前の古い車両を区別するために生まれた言葉(レトロニム)なのです。

■昭和の始まりと共に生まれた「旧国」たち

 そんな旧型国電たちですが、広義の意味ではモハ90系誕生以前の、新性能電車ではない吊り掛け駆動の電車たちを指します。ですが、基本的には1926(大正15/昭和元)年に登場し、当時鉄道省が初めて本格的に製造した鋼製車であるモハ30系以降の車両を指すことが多いです。
 その後戦前〜戦中〜戦後の長きに亘って、様々な形式の旧型国電が製造されました。旧型国電の末期には「湘南電車」と呼ばれ、電車による長距離輸送の可能性を示した80系、新性能電車である101系などに通ずる点が多い72系全金属車など、その進化は集大成を迎えました。

 さらに、国鉄やその前身である鉄道省が設計した車両以外にも、国鉄が買収した私鉄所属の車両たちを編入した、いわゆる「買収国電(社型電車 とも呼ばれる)」という存在もありますが、これもまた独自の形態が多岐に亘っており、旧型国電とは分けて考えられる場合が多いです。

 ちなみに、この記事のみならず、旧型国電をレイル・ファンたちは「〇〇系」と、同一の設計思想を持つ車両を系列としてひとまとめに呼ぶ場合が多いですが、実は国鉄内部ではあくまで編成単位、ユニット単位での動きが基本となる新性能電車のみ系列で呼んでおり、旧型国電における「〇〇系」という呼び方は、正式ではありませんでした。最終的に国鉄は一貫して、旧型国電たちを単一の形式で呼び続け、まとまった編成で動くのが基本の新性能電車と、1両単位での動きが基本となる旧型国電の考え方の違いがここに現れています。

■楽園だった昭和の飯田線

 旧型国電の歴史を語る上で外せないのがやはり飯田線の存在ではないでしょうか。特に首都圏では大半が新性能電車に置き換えられ、その数を減らしつつあった1970年代当時において、バリエーション豊かな旧型国電の数々が現役であったことから、当時の飯田線は「動く旧型国電博物館」などとも呼ばれ、今もなお当時の様子は語り草となっています。

’77.08.06 飯田線 柿平~三河槇原 P:桑原浩幸
(今日の一枚Memoriesより)

 そもそもなぜ飯田線が注目されたのか…という点に関しては、まず路線距離が他の旧国仕様路線に比べて圧倒的に長いことが挙げられます。その長さはローカル線ながら200km近い総延長を誇り、そのため必要な車両数は必然的に多くなります。さらに、沿線の道路事情が不便であった点から、郵便・荷物輸送に必要な合造車なども配置。車両のバリエーションはより豊かなものとなっていました。
 また、その長い総延長に加えて、渓谷沿いや中央アルプスの麓をゆく沿線の景色は大変風光明媚で、撮影をメインとするファンにも絶大な人気を誇りました。車両だけではなくその路線の長さ、景色の良さなどもあって、多くのファンに受け入れられました。

 そして車両の方は、当時在籍した車両の車体スタイルを振り返ってみても、3扉であったり2扉であったり、クロスシートであったり、セミクロス・ロングシートであったり、合造車や事業用車、さらには旧型国電の始祖ともいうべき30系由来の車両から、美しい流線型スタイルを持ったクモハ52形、旧型国電の進化系ともいうべき湘南電車80系などといったエポックメイキングな車両まで、多様な形式・形態を一度に楽しむことができる路線でもありました。
 このように、それぞれの車両は最終的に活躍する路線が同一であったというだけで、その出自から製造時期、車体の形状に至るまでに特徴がありました。飯田線の電車は、画一的ではなく豊富な形態差が楽しめるという、旧型国電が持つ元来の魅力を凝縮したような場所でした。そういった点から、当時を好むファンは数多く、現在においても鉄道模型で定期的に新製品が登場するのは特徴の一つです。

 そんな楽園だった飯田線も、1978年からは幹線系統の新性能化で余剰となった80系が転入してきたことにより、流電を含む数多くの戦前生まれの旧型国電が引退し、さらに1983年には119系が営業運転を開始。同年6月に旧型国電はその活躍に終止符を打ちました。

 旧型国電は、調べていけばいくほどただ単に「古い電車」というだけではない魅力を再発見していくように思えます。今もなおレイル・ファンの心を離さない彼らの活躍は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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◆旧型国電を語り尽くすイベント開催!

 2023年4月29日に、本誌・月刊『RM MODELS』別冊「写真とイラストで綴る戦前型国電(下)」の刊行と、KATO「クモハ52(2次車)飯田線4両セット」の発売を記念して、連載でもお馴染み宮下洋一氏と関良太郎氏による、旧型国電に関する座談会をホビーセンターカトーにて開催されることとなりました。

▲写真とイラストで綴る 戦前型国電(下)詳しくはこちら

 旧型国電に造詣の深い両氏による実写と模型の貴重な話題から、旧型国電時代の飯田線の思い出など、ここでしか聞けない話を熱く語り合ます!なお入場は無料。会場はホビーセンターカトーの2階特設会場となります。イベントの詳細は下記をチェック!

イベントの詳細はこちら!

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