modeling & photo:でか模型屋(@decamokei)
text:鉄道ホビダス編集部
東京都、秋葉原駅から茨城県のつくば駅までを結ぶ路線「つくばエクスプレス」。その新型車両として2020年に導入されたTX-3000系ですが、先日、このTX-3000系のドアが開閉している動画がTwitterでアップされました。一瞬本物か…と思わせるレベルですが、実はこれ「模型」だったのです。ドアの開閉のみならず、車側灯の消灯するタイミング、ドアの警告灯、側面行先表示LEDまで、比較対象物がなければ本物にしか見えないその完成度にネット上で話題になりました。
今回はそんなTX-3000系の模型を作った でか模型屋 さんに直撃インタビューを敢行!詳しい模型のスペックや製作時の苦労話などをお伺いしてみました。
↓1:24スケールで作られたTX-3000系の詳しい写真はこちら!↓
●つくばエクスプレスの新型TX-3000系を作ろうと思ったそのきっかけをお教えください。
でか模型屋:もともと地元路線で、親しみがあるつくばエクスプレスの模型を作ろうと以前から考えておりました。そこへ新型車両TX-3000系の導入が発表、登場した実車を見てみると個性的な外見や内装等、魅力的な車両だったので「これは作るしかない!」と思い、製作に至りました。
●1:24スケールとした理由をお教えください。
でか模型屋:できるだけ大きくしつつ、何かしらの規格に沿うことを決めていたので、自分が調べた限り最も大きかった「Gゲージ」という規格で作ると決めました。Gゲージの線路幅は45mmですので、つくばエクスプレスの軌間である1067mmと比較しておよそ1:24であることから、このスケールで製作しました。
●模型の材質といった基本的なスペックはどういったものでしょうか?
▲製作中の先頭部。塗装まで済むとわからないが、こうして見ると確かに工作用紙でできているのがわかる。
でか模型屋:車体は基本的に100円ショップの厚紙(工作用紙)で出来ています。床板にはプラダンを使用しました。どちらも強度確保のため、2枚重ねにしています。その他床下機器やクーラー、ギミックの動力部品などは3Dプリンターを活用しました。
●ここだけはじっくり見てほしい!というような特にこだわったポイントはどこですか?
でか模型屋:やっぱり一番見て欲しいのはドア開閉機構です。他社車両ではあまり見られないドア上の幅広な警告ランプをはじめ、左右で音程の違うドアチャイム、ドアが閉まりきってから少し遅れて消灯する車側灯など、実物の挙動をできる限り再現しました。
■そのドア開閉の様子を動画で!
ドア開閉機構、ついに完成!!
— でか模型屋 (@decamokei) March 14, 2023
長かった…😭
一番左のドアにある単3電池は例によって大きさ比較用です pic.twitter.com/YKJZDNUjog
▲ドアチャイムや車側灯の消灯タイミングは実車を忠実に再現している。つくばエクスプレスを日常的に使う方なら「あるある」なネタなのでは…?
●作るのに苦労した点はどういった点でしょうか?
でか模型屋:上記の内容と重複してしまうのですが、こちらもドア開閉機構です。実は今動いている機構は2代目で、初代は床下機器を製作していた頃に壊れてしまいました。直すのが厳しそうだったので一度撤去し、新しく製作した機構を組み込んだのですが、内装を完全に固定してしまったこともあり、非常に大変でした。「あっちを直すとこっちが壊れる」状態で、これは賽の河原なんじゃないかと思うこともありました(笑)。ただ機構の作り直しを経て、制御をArduino(※)化したり、ドア位置の検出を物理スイッチから光センサーに置き換えたりすることができたのは良かったのかなと思います。
(※)Arduino:手のひら大の基盤に機能が集約されたマイクロコンピュータ(マイコン)の一種。
●もし、この模型を使って今後更なる展開や発展なども予定してましたら、可能な範囲でお教えください。
でか模型屋:普段つくばエクスプレスの車両といえば、ホームドア越しに見ている存在ですので、いずれホームとホームドアは製作したいと考えています。また、その他にもまだまだ作りたい車両がありますので、TX-3000系の製作で得られた経験や反省を生かして、2両目、3両目の製作もしたいと思っています。
●鉄道ホビダスのこの記事を読んでくださった方に何かひと言あればお願いします!
▲まるで本物のような内装。特徴的な「ユニバーサルデザインシート」も再現している。
でか模型屋:ぜひ大きな模型にもみなさん挑戦されてみてはいかがでしょうか。日本国内ではほぼ自作一択になってしまいますが、完成させればそのスケール感に圧倒され、満足感、愛着が湧くこと間違いなしです!
↓1:24スケールで作られたTX-3000系の詳しい写真はこちら!↓
地元路線の新型車両を作りたい!という熱意が実現させたTX-3000系のビッグサイズ鉄道模型。その製作の裏側を伺ってみると、毎日見る地元民ならではといえるこだわりの作り込みや、機構の連続でした。また、100円ショップの素材からマイコンや3Dパーツといった最先端の工作テクニックまでしっかり活かしきるその技術力に驚かされました。
苦労して作った模型への愛着というのはひとしお。これを機に、鉄道模型工作へチャレンジしてみるというのもいいでしょう。