185系

特集・コラム

パソコンで車体を作図!3Dプリント製鉄道模型 実はこうして作られている!

2023.02.18

 パソコン上で作図したデータをそのまま立体物として出力する3Dプリンタは、現在新しい造形技術として注目を集めています。以前までは手作業が基本だった鉄道模型をはじめとしたホビー分野においても、こういったデジタル機器を活用したモデルも増えてきました。特に3Dプリンタは手作業では難しかった正確かつ精度の高いディテール表現を、データを作ってプリンタに送信するだけで実現できるようになりました。今回はNゲージ鉄道模型(1:150スケール)車両の作図手順のポイントを見ていきます。例題となる車体は側面と屋根を一体、妻面及び前面は別パーツを取り付ける構成で作図しました。

↓3D-CADによる設計風景はこちら↓

◆前回の記事

超入門!3Dプリンタで鉄道模型を作るには?まずは図形の作図に慣れるべし!?

■オリジナル車体の基本寸法図

 今回作るのは実在しないオリジナル車両です。寸法は20m級片側3扉車という設定。ここからは3D-CADで鉄道模型車両をどうやって作図しているのか、詳しく見ていきましょう。

 3D-CADとは言いますが、最初は平面で作図をしていきます。手順としては長方形を描いて中心を取り、そこから側面の窓割と扉を「線分」ツールで書き込んでいきます。大まかに窓割・扉を描き終えたら「トリム(不要部分の削除ツール)」「フィレット(角にRをつけるツール)」などの修正ツールを活用して細かい車体側面を描いていきます。

■3Dでディテールを付け加える

 平面の作業が終了したら、続いてはいよいよ立体に起こしていきます。「押し出し」ツールにより車体の図面を1.2mmほどプル(押し出し)して車体側面の側板を作ります。この時点では窓枠もドアも全てt1.2mmとなっているので、ここから扉と窓枠に段差を付け、窓はくり抜いていきます。
 そのほかにも車体側板裏面に、窓ガラス(透明セル板)を貼った際にまどが奥まりすぎないよう、窓ガラス板厚分の凹みを設けたり、扉窓と戸袋窓のHゴム表現を「パイプ」ツールで再現したり、雨樋・靴ズリといったディテールも各種作り込んでいきます。

  さらに側面と同様、妻面も一度平面で描いた後に押し出し、3Dにして作図していきます。複雑な曲線を描く屋根Rは、「3点を通る円ツール」を使いますが、肩部は曲率が異なるため、別々に作図。最後にはみ出した不要な部分を削除して作ります。ディテールも側面同様、押し出しツール等を使って作っていきます。
 屋根板の作図は、妻面の屋根R部分を押し出しツールで車体長分プルしていくだけで作ることができます。ベンチレーターの取り付け穴は円ツールで正円を描き、「短形状パターン」を選択して等間隔に配置、その後押し出しツールで穴を貫通させています。

 車両の顔となる前面は、平妻顔の場合は妻面データを流用し、一旦ディテールを消去。その後スケッチツールを使って前面のうち半分の意匠を描き、その後ミラーツールを使って反転・複製して顔のベースを描きます。その後押し出しツールを使って、前面窓とヘッドライトの貫通およびディテール表現をしていきます。これでひとまず車体の側面・屋根・妻面・前面の作図が終了しました。

■中間車をベースに車両の種類を増やそう!

 鉄道車両の車体は基本的に運転台がある先頭車と、無い中間車に大きく分けられます。今回はまず中間車を作図した上で、それをベースに先頭車とする場合必要な運転台を付け加える作業を行なっています。乗務員室扉背後の客窓を仕立てた後に、扉が来る箇所にある車端部窓は消去。そこへ新たに乗務員室扉のディテールを作り込んでいくことで先頭車としました。
 また、今回は3扉で製作しましたが、分割ツールを駆使することで2ドアの車両へ作り替えることも可能です。このように、基本設計を同一とするのであれば、各車体のパーツの継ぎ接ぎで色々な種類の車両を複製することができるのも、3D-CAD・プリンタの魅力の一つです。

■これは「模型」 忘れちゃいけないパーツ接合用の構造物。

 今作図をしているのは実物の鉄道車両のイメージ図ではなく、あくまで鉄道模型。となると気にしなければいけないのが作るときにちゃんと組み合わせられるかというところ。ここではパーツ同士を接合させる構造物を作成します。今回の例題では妻面及び前面は別パーツとなるため、ここに接合部が必要になります。

▲上2枚の図はパンタ廻りのディテール。下図が接合用の構造物の製作風景。

 とはいえ、このような模型的に必要となる構造物の場合、ディテールなどとは異なり製作する車両の仕様や、設計者自身の感性や実体験でその寸法や構造が変わってくるので、ここで紹介しているのはあくまで一例となります。

■応用編!ディテールをもっと作り込もう!

 ここまでは車体の基本となるデータ作りをしました。ここからはお好みで各部のディテールを作り込みます。車体のディテールといえど、車体各部につく手スリや妻面の配管など作りたい車両の題材によって異なりますが、ここでは表例としてパンタ廻りのディテール表現をしてみました。

 パンタ廻りは母船や避雷器、ビューズボックスといった屋上機器類を結ぶ配管をはじめ、パンタフラフの取り付け台座(取付穴)やランボードなど、車両によってそのディテールは多岐にわたります。

↓3D-CADによる設計風景はこちら↓

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