185系

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481系、483系、111系、113系…複雑な国鉄電車系式、結局何が違うの?

2023.01.31

text:鉄道ホビダス編集部

 数を減らしながらも最後の活躍を続けている国鉄型車両。ですが、国鉄型は基本的に全国での使用が考えられた汎用性の高い系式が多く存在しました。そんな中で基本設計は共通しながらも、主電動機や対応周波数などマイナーチェンジを繰り返しながら系式が多岐に亘った車両がいくつか存在します。今回はその中でも5つの例を見ていくことにしましょう。

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■111系・113系

▲「関西線快速色」と呼ばれた塗装を纏う111系。

’85.10 大阪環状線 桜ノ宮 P:清水祥史
(消えた車両写真館より)

 80系や153系といった片側2ドアの電車で運行されていた昭和30年代の湘南電車の輸送力改善を目的に、3ドアセミクロスシートという所謂「近郊型」という形態で1962年に登場したのが111系です。この111系は主電動機出力が100kWのMT46を搭載していましたが、1963年からは出力120kWのMT54を搭載した113系へマイナーチェンジをします。この変更で電動車はモハ111・モハ110からモハ113・モハ112に番号が移行しましたが、電動機を積まない付随車は引き続き111系時代の形式を引き継いで製造されました。

■581系・583系

▲直流および60Hz交流対応だった581系につづき、この時に登場した583系は50Hz交流にも対応可能となり、初めて東日本地区に投入された。

下十条電車区 P:新井晃司
(お立ち台通信より)

 581系は1967年に登場した昼夜兼用ができる寝台電車として、京阪神〜九州間の特急を中心に運用された車両です。昼夜問わず活躍できる上に、客車ではない電車の寝台車という当時は画期的な車両でしたが、他にもそれまではボンネット形だった特急型電車で初めて貫通形とし、通称「電気釜」スタイルを確立した車両でもあります。
 そして1968年、東北方面の電化と山陽本線の列車増発などで増備されたグループが、マイナーチェンジ版の583系となります。主な変更点としては、581系では直流の他に西日本の交流60Hzのみ対応だったのが、583系では直流と交流60Hzに加え、東日本の交流50Hzにも対応し、東北地域で活躍した車両は耐寒耐雪構造とした点が挙げられます。

■481系・483系・485系・489系

▲写真のクハ481-5は1964年川車製第1次投入車。向日町区新製配置後、1975年鹿児島区、1985年勝田区と変遷。1990年2月に廃車となった。

’86.3.20 常磐線 上野 P:梶村 昭仁
(消えた車両写真館より)

 

 481系は1964年に特急「雷鳥」「しらさぎ」用として製造された交直流特急型電車で、交流の対応周波数は西日本の60Hzとなります。その後1965年に、この481系の東日本版として登場したのが483系です。東日本仕様ということで交流の対応周波数は50Hzです。そして1968年には直流+交流50Hzと60Hzの3電源対応とした485系が登場、さらに1971年にはこの3電源対応の485系をベースに、信越本線横川〜軽井沢間(通称:横軽)の碓氷峠区間での補機EF63形電気機関車との協調運転や横軽対策が施された系式として489系が登場します。

■401系・421系・403系・423系・415系

▲昨年運行を終えたJR九州の415系鋼製車。

‘21.12.9 鹿児島本線 長洲~大野下 P:堀江 亮
(今日の一枚より)

 この辺りから系式分類は複雑になっていきます。というのも、ここまで読み進めた方はなんとなく気がついているかもしれませんが、マイナーチェンジでも基本的に主電動機の変更、もしくは交流に対応した車両の場合は周波数が変わることで系式が変わることが多いです。このいわゆる「415系列」は周波数の違いと主電動機の違いで系式が多岐に亘ります。

 401系と421系は1961年に登場した交直両用の電車で、その後に続く近郊型車両の始祖とも言えます。それぞれ直流の他に対応する交流周波数は、401系は常磐線に投入されたことから東日本の50Hz、421系が九州・福岡地区に投入されたことから西日本の60Hzとなります。
 そして1965年に登場した403系と423系は、111系が113系と発展した理由と同じく、主電動機が出力100kWのMT46から120kWのMT54とパワーアップしたことによって生まれた系式で、それぞれ403系が50Hz、423系が60Hzとなります。
 415系は1971年から製造された系式で、直流の他に交流50Hz・60Hz対応とした区分です。途中211系と同じステンレスボディーとした1500番台など、415系の中でもマイナーチェンジを繰り返しながら長きに亘って製造されました。ちなみにこの415系が3電源に対応していたことで、JR東日本で廃車となった415系のJR九州譲渡が実現しており、国鉄時代の広域転配のような全国規模の大移動を見ることができました。

■451系・471系・453系・473系・455系・475系・457系

▲2013年に運行されたリバイバル急行「立山」。写真の車両は475系として製造されたグループに当たる。

‘13.10.14 北陸本線 生地―黒部 P:斉藤順一
(鉄道投稿情報局より)

 そして周波数の違いと主電動機の違いによる系式変更に加えて、勾配区間の走行を考慮した抑速ブレーキの有無によって系式がさらに別れたのが、この国鉄交直流急行型の各系式です。複雑ですが順を追って紹介しましょう。
 最初期に登場したのはこの451系と471系。これは1962年に登場した系列で451系が直流+50Hzの東北本線と常磐線向け、471系が直流+60Hzの北陸本線向けとして製造されました。その後主電動機を100kWのMT46から120kWのMT54とした直流+50Hzの453系と直流+60Hzの473系が登場します。ですが、473系については製造が遅れ、作られた直後に後述の455系・475系の製造へ移行し、473系については1ユニットのみの製造となりました。
 そして主電動機出力の増強のみに留まった453系・473系に対して、さらなる勾配対策を施した抑速ブレーキ装備車として製造されたのが455系と475系で、455系が交流50Hz対応、475系が交流60Hz対応となります。

 これら系式を踏まえ、455系・475系をベースとしつつ直流+50Hz・60Hz両用の3電源対応としたのが457系で、ここで一区切りがつくことになります。

 国鉄が分割民営化された現代においても、増備する過程で数多くのマイナーチェンジを繰り返す系式は数多くあります。ですが、その大半が系式の変更ではなく番台区分などでの区別に留まっているかと思います。さらに全国的な転属などが基本的に考えられなくなったJRでは、よほどの理由がない限り交流・交直流電車の対応周波数は50Hzか60Hzのどちらかに統一され、増備の過程で両電源対応になる…ということもまずありません。
 技術の発展途上に加え、全国でも使える汎用的な電車にマイナーチェンジを繰り返し、その度に増える複雑な系式というのは、趣味的な観点からすればある種の国鉄型らしい要素の一つに思えます。

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ザ・ラストモーメント 115系と国鉄近郊型電車

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