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校内に車両はあたりまえ⁉ 鉄道について学べる岩倉高校の内部に潜入!

2023.01.11

 少子化が顕著になりつつある昨今、学校にはより強い個性が求められ、「〇〇に強い学校」というイメージは、受験者数に大きな影響を及ぼすといいます。スポーツや進学率など、各学校が特色を追及する中で、「鉄道ビジネスを専門的に学び、幅広い教養も身につける」という教育理念を掲げている高校があります。

 「岩倉高等学校」。 鉄道好きの方なら、日本の鉄道設置に尽力した岩倉具視の名に冠したこの高校の名前を、一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか。

 上野駅の目の前にある岩倉高等学校には、「運輸科」という鉄道ビジネスを専門に学ぶコースがあり、毎年多くの卒業生が鉄道業界へと羽ばたいています。鉄道に特化した学校は全国でも珍しいため、地方からの志願者も多く、新幹線通学や寮生活をしながら高校生活を送っている生徒さんもいるそうです。今回は、校内を取材させていただく機会を得ましたので、ご紹介しましょう。

校内の様子はこちらで!

・座学と実習を両立できる校内施設 
 校内に足を踏み入れると、当然のことながら整然と教室が並んでいるわけですが、「岩倉らしさ」は、屋外通路を挟んで向かい合う「電車運転実習室」という建物にあります。ドアを開けて中に入ると、目に飛び込んでくるのはなんと鉄道車両。

 「鉄道の学校なのだから…」と自分に言い聞かせても、やはりそのインパクトになかなか頭がついてきません。建物いっぱいに211系の車体部分が鎮座しており、651系の運転台部分も背中合わせに置かれています。ここではシミュレーターを使った運転実習だけでなく、車掌などの常務実習や車両各部の構造を学ぶことができます。

 鉄道に限ったことではないでしょうが、頭だけでなく、身体で覚えた知識は記憶に残りやすいと聞きます。教室で車両の仕組みなどについて授業を受け、すぐそのあとに実際の車両や部品を自ら確認することで、より強固な記憶として頭に蓄積されていくのではないでしょうか。

211系の車体を使い、車両の仕組み学習や乗務実習が行われているが、本物なのでこれ以上の説得力はないだろう。

 

・より近くで見て、触れて学ぶ
 また、資料室に収められている展示物も、やはりこの学校ならでは。レールの上に置かれた台車、スイッチひとつで作動するパンタグラフ、運転台までが再現してあります。もちろんそれらの一つひとつが本物の部品で、中には内部構造が分かりやすいよう、改造されているものもあります。設定されたカリキュラムでも、上級生になるにつれて、授業の専門性が増していくそうです。

 

・鉄道関係だけで3つの部が活動
 放課後のクラブ活動も学校生活の大切な要素のひとつです。岩倉高校にも運動系で13、文科系で15の部活や同好会があるそうですが、やはり鉄道系の部活も活発で、3種類のクラブが存在しています。

 車両基地や保存車両の見学、臨時列車の企画・運転などの体験的といった、実車にまつわる活動を行う「鉄道研究部」。

 大型レイアウトの製作や車両製作を通して更なる模型製作技術向上を目指すと共に、国際鉄道模型コンベンションや外部鉄道イベントなどへの出展などを通して「体験を通して学ぶ活動」に取り組む「鉄道模型部」。

 そしてもうひとつが、主に鉄道の内部機関を研究し、実際に石炭を燃やして走る蒸気機関車の模型を製作し、各種イベントで走らせている「工作研究部」。

 “ソフトとハード”の両面から鉄道業界を支える人材を育成する学校らしく、クラブ活動も生徒さんの興味や目指す方向によって選ぶことができます。

 また、どのクラブ活動においても共通している特徴が、外部イベントへの出展や郊外活動が随所に盛り込まれている点ではないでしょうか。今回の取材では主に鉄道模型部の活動を取材させていただきましたが、顧問の大日方先生曰く、「知識や技術の習得ももちろんのこと、社会に出た際に活かせるコミュニケーション能力も養えれば」とのことで、生徒さんの自主性や企画力、対話能力の向上をも目的として活動している様子が印象的でした。

 

・女性も第一線で活躍する鉄道業界へ

 普段鉄道を利用していて、各分野で女性が活躍する姿を目にすることが増えています。岩倉高校でも、女生徒さんが勉学に励んでおり、この春も鉄道の各分野へと羽ばたいていくそうです。駅でのサービス業から車両製造に至るまでその幅も広がっており、かつては男性の職場というイメージが強かった鉄道業界に新しい風が吹き込んでいることがうかがえます。

 「鉄道開業150周年」を迎えた2022年、奇しくも日本の鉄道業界には新型コロナウイルスの影響で大きな転換期が訪れました。交通インフラとして絶対的な安定を保ってきた鉄道は、人口減少や利用の仕方に変化が生まれ、時代に合わせた変容を求められていると言えるでしょう。

今回取材をさせていただいた岩倉高校は、新しい時代の鉄道の担い手を育成する最前線として、今後も重要な役割を担っていくに違いありません。

なお、今回取材をした様子は鈴川絢子さんのYouTube動画でもお楽しみいただけますので、そちらもぜひ覗いてみてください。
動画はこちらより!


岩倉高校の大日方先生の著書が発売に!

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