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特集・コラム

車両の端にナゾの文字列 水カツ?八ミツ?近モリ? これら車両標記は何を指しているの?

2022.12.26

text & photo(特記以外):鉄道ホビダス編集部

 普段JRの電車に乗る時、ふと車両の端に目を向けてみると「宮サイ」や「八ミツ」、「近モリ」「近ホシ」といった暗号のようなナゾの文字が書かれていることに気がついた人も多いのではないでしょうか? 語呂や文字列がちょっと面白い組み合わせだったりするものもありますが、もちろん何の意味もなくこれらの文字が書かれているわけではありません。今回はこの標記について迫っていこうと思います。

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■いわば車両の「家」がどこかを表す標記。

 これは「所属標記」と呼ばれるもので、1文字の漢字と2文字のカタカナで標記されます。意味としてはその車両が所属している車両基地の略称となっており、例えば写真の「八ミツ」の場合、JR東日本八王子支社の管轄である三鷹車両センターに所属している車両、という意味になります。「八ミツ」の「八」が八王子支社を、「ミツ」のカタカナ2文字は三鷹を表しています。ちなみにこのカタカナ2文字は「電報略号(電略)」といい、かつて電報で通信を行なっていた時代、英字・数字およびカタカナしか送信できなかったことから、誤読防止と可読性を考慮し、駅名をカタカナ1〜3文字程度で略して表記していたものになります。この2つを組み合わせることで何支社のどこ車両基地所属の車両かを、短く一目でわかるようになっています。

■古から続く標記方法

‘11.5.1 富士急行大月線 下吉田 P:増永祐一
鉄道投稿情報局より)

 この標記方法は国鉄の頃、客車時代から長年踏襲され続けているものであり、伝統的な様式とも言えるでしょう。国鉄は全国を取りまとめる組織でしたが、各地域ごとに「鉄道管理局」という、現在のJRで言うところの「支社」に当たるものは存在していました。国鉄時代はこの鉄道管理局の漢字1文字を取って標記しており、先程の三鷹車両センター(国鉄時代は三鷹電車区)を例に出すと国鉄時代は東京「西」鉄道管理局の管轄だったため「西ミツ」の標記でした。

 ちなみに機関車だけはこういった標記ではなく、所属する機関区を「区名札」と言われる札で漢字1文字ないし2文字で標記します。こちらも蒸気機関車の時代から続く伝統的なもの。「札」というモノとして存在する標記方法であったことや、様々な名門機関区を象徴するものとして、レイル・ファンの間では一種のアイコンとして今もなお愛されています。

■略称が故に…面白い文字列の所属標記

 基本的に略称である所属標記ですが、それが故に略した結果が面白い語呂になっていることもしばしば。先程の「八ミツ」も中央・総武線の黄色帯の電車も相まって「ハチミツ」をなんだか連想してしまいます。また大阪環状線の車両が所属する森ノ宮電車区は、国鉄大阪鉄道管理局時代と、JR化後の大阪支社管轄時代の標記は「大モリ」と、なんだか盛りの良さそうな名前に。逆に勝田車両センターを表す「水カツ」はなんだかあまり美味しくなさそうな響きが却って面白いです。

 さらに人物名みたいなものも。現在では高崎車両センターと改称された旧新前橋電車区は「高(本来は『はしごだか』)シマ」、松本車両センターの「長モト」、浦和電車区(現さいたま車両センター)の「宮ウラ」など様々。語呂という視点から所属標記を見るのも結構楽しいですね。

■今後見慣れた標記が変わるかも?

▲所属標記が変わるとステッカーで上貼り式で修正されることも(宮ウラから宮サイに変更になったE233系1000番代)。

 この所属標記、車両が所属する組織を表す標記であるが故に、改編などが行なわれると標記も当然変化します。三鷹車両センターも国鉄からJRへ民営化した当時は東京支社の管轄でしたので「東ミツ」だったものが、1998(平成10)年にJR東日本八王子支社が発足したことに伴い「八ミツ」と標記を改めています。また、変わるのは支社標記だけではありません。浦和電車区は2015(平成27)年に「さいたま車両センター」と組織改編が行なわれ、それまで大宮支社を意味する「宮」と浦和を意味する「ウラ」で「宮ウラ」と標記されていたものが、浦和がさいたまになったことに伴い「宮サイ」に変更されました。

 また、JR東日本では2022年に「首都圏」「東北」「新潟」の3エリアで大きく分け、そのエリアごとに本部を設置するものに改組。その中で仙台支社は「東北本部」、東京支社は「首都圏本部」と名前と管轄エリアを改めました。まだ2022年12月現在では走っている車両の表記に変化は見られませんが、今後このような大規模改編が行なわれたことから、何らかの動きはありそうです。見慣れた標記たちは今後どう変わっていくのか、これからも目が離せません。

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