modeling & photo & text:根本貫史(RMM)
今や細部まで着色された完成品または塗装済キット状態のストラクチャー製品が定番となりましたが、かつては成型色+部分的な着色のみで構成された「完成品ストラクチャー」が主流でした。
中でもNスケールで代表的な製品に、TOMIXの「木造駅舎」があります。この製品が初めて登場したのは、TOMIXブランドのNゲージ鉄道模型システムが誕生した1976年です。2022年現在はリニューアルで色が変わりながらも、基本的な形態は買えずに販売が続いています。
製品は日本の典型的な木造駅舎をモデルにしているので、懐古的なシーンから、地方路線や3セク路線で現存する近代的なローカルシーンでも幅広く活用できます。時代が変われど、日本のローカルシーンを再現する上で誰もが手軽に使えるという点が、ロングセラーであり続ける所以と言えるでしょう。
また、この駅舎の魅力は「完成品」という製品形態ながら、加工や塗装、ディテールアップをする余地を十分に残していることにあり、工作初心者の習作用としても適した製品と言えるからです。
ここでは、この「木造駅舎」から学べる模型工作の基礎知識を項目別に紹介していきます。この製品には「分解」「切り継ぎ」「塗装」「組み立て」といった車両工作にも通じる模型工作の基本要素が盛り込まれています。車両工作未経験の方は、まずは手軽に扱えるストラクチャーから、模型工作の基礎を身につけ、そこから本番(車両工作)に挑んでみてください。なお本記事では、木造駅舎の関連製品である「木造跨線橋」も併せて解説していきます。
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■分解
塗装や各種加工をする場合、製品を分解する必要があります。とはいえ製品は「完成品」なので、説明書には分解方法は記載されていません。なので分解をする前に、まずは製品をよく観察し、構造や部品構成を理解して、自分なりに分解する手順を考えましょう。これは車両製品も同じことで、何も考えずに分解を始めてしまうと、思わぬ部品の破損や復元方法が判らなくなってしまう恐れがあります。
●木造跨線橋の場合
同様に木造跨線橋も分解します。この製品の場合は、通路部分の裏側に2ヶ所のビス穴があり、その中に精密プラスドライバーを差し込み、ビスを緩めてから屋根を取り外します。完成品ストラクチャーをはじめ、車両製品でもビス留めは多く用いられている方式なので、精密プラスドライバーは工作机に常備しておきましょう。
■切り継ぎ
続いて「切り継ぎ」の技法を解説します。切り継ぎは、元の製品の全長を伸縮させたり、別の製品と接合する際に使う基本技法の一つです。 今回は、木造跨線橋の通路部分を切り継ぎ、全長を短く縮めてみましょう。切り継ぎにはおもに「レザーソー」というノコギリ状の工具を使用します。その他模型用のニッパー、カッターナイフ、あとは接合面を整えるために平ヤスリ(金属製の棒ヤスリの一種)を用意しておきましょう。
●さらに拡張も可能に!
木造跨線橋を複数使うことで、駅の規模に合わせた拡張も可能になります。右の作例では、片側の階段部分を撤去したものを追加しています。
■塗装
つぎはいよいよ塗装です。塗装は模型工作の基本中の基本。今回のように切り継ぎ加工をしなくても、塗装だけで製品の雰囲気を変えたい場合は、製品を分解後、すぐにこの作業に入ります。塗装には、基本となる筆塗りや缶スプレー、そしてエアブラシという手法がありますが、今回は筆塗りによる塗装方法を解説します。
■スミ入れ
スミ入れはよりディテールを強調し、質感や立体感を表現するための技法です。これは好みが分かれるので強要はしませんが、ジオラマやレイアウトに組み込む場合は、スミ入れをした方がより実感的に仕上がります。ここでは、手軽にスミ入れができるタミヤのスミ入れ塗料(ダークブラウン)を使った手法を紹介します。
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■完成!
最後に今回の作例を使ってジオラマを製作しました。参考にしたのは木造駅舎が残る東日本エリアの地方都市駅です。実例から駅のエントランス部分にタクシー乗場と直結した屋根を設けてみました。木造駅舎もこのように塗装変更と近代化改造をすることで、「今」の風景にも十分マッチするストラクチャーになります。模型工作初心者の方は、最初は手頃な完成品ストラクチャーを使って工作の基本技法を体感してみましょう。
※こちらの記事は『RM MODELS 237 2015年5月号』の記事から抜粋しており、情報は当時のものとなります。あらかじめご了承ください。