modeling:山岡影光・守山鉄道同好会
photo:上石知足(鉄道ホビダス)
兵庫県の淡路島と本州を結ぶ巨大な吊り橋である「明石海峡大橋」。道路専用橋として開通したこの橋ですが、実は計画段階では四国新幹線も通す計画があったといいます。そんな計画がもし実現していたら…という模型を、Nスケールで再現したYouTube動画が話題となっています。その明石海峡大橋の模型を作ったのが山岡影光さん、製作に全面協力をしたのが守山鉄道同好会の皆さんです。
一見するとNスケールとは思えないほどのサイズ感ですが、実物をほぼそのままNスケールに縮尺しており、全長は26mにも及びます。また、ただの「見た目だけの橋の模型」では終わらずに、構造自体も実際の明石海峡大橋の吊り橋機構を再現。外観から機能まで名実ともに「吊り橋」の模型であることに驚かされるばかりです。ここでは、現地取材によりその迫力の造形に触れ、本気の架橋技術によって作られたこの明石海峡大橋の苦労話などを伺ってきました。(編集部)
↓気になるこの橋の全容はこちら!↓
上石:山岡さんの鉄道模型や橋の模型との馴れ初めはどのようなものでしたか?
山岡:小さい頃から鉄道が好きで、プラレールも当然好きでしたがその当時はおもちゃを買ってもらえず、プラレールがある友達の家に遊びに行って遊ばせてもらっていたのを記憶しております。またその頃、橋も好きでLEGOブロックでよく作って遊んでいました。
大人になって、とあるおもちゃ屋さんにふと立ち寄ったところ、たまたま売ってあった「k’nex(ケネックス)」というブロックに目を惹かれて衝動買いしました。それ以来、そのブロックの魅力にのめり込み、昔好きで作っていた橋をまた作るようになりました。それがきっかけといったところでしょうか。特に吊り橋が好きで、それをメインに製作していました。
そのうちこの吊り橋にレールを並べて好きだった電車を走らせればもっと面白いんじゃないかと思い、まずはプラレールを一式購入して走らせてみました。するとその吊り橋を走る列車の光景に思わず感激してしまい、この場面をいつでも見られるようにとYouTubeへ記録・保存的な用途でアップし始めました。
●山岡さんの動画はこちら↓
▲Nスケールで再現された明石海峡大橋の全容。なお、写真では見切れている両端にはアプローチ部が存在し、それらを含めた全長はなんと45mにもなるという。
その後橋は22mもの大きさになりました。すると記録・保存が目的だったYouTube動画に予想以上の反響が出始め、再生回数も100万回を超えて本人が一番驚いてしまいました。そうしているうちに、コメント欄に「Nゲージでやってほしい」という意見があり、それをきっかけに仕事を通じて出会った守山鉄道同好会の岡田さんなどの協力も得て、Nスケールの吊り橋を作り始めました。
上石:今回の明石海峡大橋の製作で苦労したポイントはどこでしょうか?
山岡:苦労した点はいくつかあるのですが、一つにブロック集めが大変だったのはあります。Amazonなどで売られる新品では高価なため、大量のブロックを購入するとなると相当な費用となります。ですので、なるべく安価にする為にネットオークションなどでコツコツ揃えました。また明石海峡大橋の設計図など手に入らず、全て自分で考えながら作ったため、相当時間がかかりました。
さらにプラレールでは問題のなかった簡単な構造でも、Nゲージではとても走行することができず、調整に苦労しました。26mもの吊り橋全体を組み立てる場所がなかったので、自宅である神社の本堂廊下に20mの部分的な橋を作り走行実験を行なったところ、さまざまな問題点が見つかりました。この詳しい解決策はYouTubeの「新幹線 『2°』の壁?!!」で詳しく説明していますのでぜひご覧いただければと思います。
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◆山岡さんのYouTubeチャンネル
そして一番苦労したのがこの模型を組み立てる場所の確保です。吊り橋の全長が26m、アプローチ含め45mにもなる橋は屋内での組立は不可能と判断し、近くの公園で組み立てました。しかし、あまりの大きさから一日で組み立てから片付けまでを行なうのは不可能なことが判明しました。そんな中、守山鉄道同好会のメンバーが以前から借りていた建物の2階がちょうど空いており、その場所を借りてようやく全体を組み立てる事ができました。
▲︎そびえ立つ主塔。思わず見入ってしまう迫力がある。高さは2.5mにもなる。
上石:この明石海峡大橋の寸法、幅、長さ、高さはどのくらいなのでしょうか?
山岡:この明石海峡大橋の模型の大きさですが、橋本体の全長:26m、レイアウト全体:45m、最大幅…約1m、高さ:主塔2.5mとなっています。
上石:この橋の設置場所はかなり広いですが、この現在置いてある部屋の広さはおおよそ、何畳くらいですか?
山岡:この場所はおよそ50m×50mぐらいの広さがあると思います。
上石:YouTube動画を見ていると、撮影から編集まで見る者を画面に引き寄せる編集効果などに目が行きますが、元々動画編集の経験があったりするのでしょうか?
山岡:実は動画編集は全くの素人で全て自己流です。動画の撮影はスマホカメラとアクションカメラだけで行なっており、編集は全てスマホ(iPhone)です。また、動画をアップする度に、コメントなどで色々とアドバイスをもらいまして、次回の編集に活かすことで上達に繋げています。
10分の動画を作るのに1ヶ月以上かかるので、動画編集に一番時間がかかります。また、サムネイルを一枚作るのにも最低3日はかかっています。
▲守山鉄道同好会の皆さん。左から会長の津田さん、橋を作った山岡さん、岡田さん、戸田さん。
最後になりますが、この広い場所を貸していただけたことを大変感謝いたします。そして、このプロジェクトを絶対に成功させたいという同好会メンバーの熱い想いに敬意を表したいと思います。
■今月のRM MODELSは「旧型国電」! この明石海峡大橋の詳しい記事も掲載!
鉄道模型の人気ジャンルの一つである「旧型国電」は、電車による本格的な鉄道輸送が全国的に普及した昭和時代初期に登場し、第二次世界大戦という激動の時代を乗り越え、昭和50年代頃まで活躍しました。そんな時代背景もあり、同一形式でも同じ仕様は存在しないと言われるほど個性が溢れ、それが趣味的観点としても魅力となっています。特に2022年は鉄道開業150周年ということもあり、鉄道模型界でも各社から旧型国電の製品が続々と登場しています。
本特集では、今まさに人気再燃中の旧型国電にスポットを当て、最新の各社旧型国電製品と珠玉の車両作品の数々、そして貴重な資料を交えつつ、まさに百花繚乱な旧型国電の世界を紹介していきます。