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古いプラレールの世界観は「赤と緑と白」にあり!?80年代情景部品に見られる配色の特徴とは?

2022.11.18

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は80年代に発売された情景部品たちにクローズアップ。様々な製品が発売されていましたが、いずれも統一感のある世界観を感じることができます。ここではなぜそう見えるのかについて詳しく解説していきます!(編集部)


 21世紀に入った頃、プラレールの車両はもちろん、情景部品も大きな転換期を迎えました。既存の情景部品は実在の施設を元にしたリアルな塗装となり、新製品は細かな造型に、ギミック系も格段に増え、鉄道玩具の世界に更なる彩りを加えました。
 それ以前の情景部品は正におもちゃと言った配色で、水色・赤色・黄色・オレンジなどが使われていました。これらカラフルな配色は1960年代から90年代まで継続して採用され続けましたが、1970年代初頭に登場したとある情景部品から、ある程度統一された配色の情景部品が発売されるようになります。今回はその統一された配色である、赤・緑・白が採用された情景部品と、その派生と思われる配色を使った情景部品を見ていきます。まずは「駅」から紹介しましょう。

↓懐かしの80年代プラレールの情景部品たちの画像はこちらから!↓

■駅と踏切に見られる共通性

●駅の情景部品たち

 一番初めに赤と緑の組み合わせで発売された情景部品が、上のトップ画像にもある「ふくせんステーション」です。元は1969年にセット品の情景として登場し、白いホームとクリアレッドの屋根という組み合わせが初出でした。1970年頃に単品でも発売され、その際に緑のホームと赤い屋根に改められました。2色だけでは少し見栄えが悪いからか、レール上のストッパーやホーム上のベンチといった小物も色を変えてバランスを取っています。「ふくせんステーション」を境に、駅や踏切などのベース+屋根(小屋)で構成される情景部品に緑と赤が使われていくようになります。

▲山岳地帯にありそうな風貌の「高原の駅」も、緑のホームに赤い屋根だ。

 少し時代が下り、1975年。正面から見て左右対称で、三角屋根が特徴的な「高原の駅」が発売されました。「ふくせんステーション」と同じく緑のホームに赤い屋根で、駅舎のある本格的な駅となっています。この駅舎はホームと屋根のどちらの色にも馴染むためか、白く成型されました。これ以降、情景部品の建物は基本的に白成型で統一されるようになります。
 1977年に発売されたギミック系の駅「笛コントロール駅」は、小さい駅舎を持つ駅というバランスを考慮した上でしょうか、屋根だけは茶色に成型されたものの、それ以外は「高原の駅」ど同様の配色です。ストッパーが黄色いのは「ふくせんステーション」と同様なため、屋根の色以外は他の駅と共通性が高いと言えます。小ぶりな駅舎の屋根が茶色いというのは「田舎の駅」と共通し、デザイン面である程度の決まりがあったとも伺えますね。
 ちなみにこの駅はその名の通り、笛かベローズで空気を送り込むと空気圧でストッパーが上下し停車・発車が楽しめるという、プラレールでは珍しい物理遠隔操作系の情景部品です。

▲1980年発売の「ライト付えき」も赤・白・緑の組み合わせだ。

 1980年に発売された電球が光る素敵な情景である「ライト付えき」も、赤い屋根に緑のホーム、そして白い駅舎という「高原の駅」と同じような配色で登場しました。こちらは「ふくせんステーション」「高原の駅」と同じようにホームいっぱいの屋根がかかっている駅で、バランスがいいデザインです。ホーム端の線路内侵入防止柵は濃い青色です。

 この他、70年代前半の一時期のみ「田舎の駅」のホームだけが緑に成型されていたことがあります。元はオレンジ色のホームで登場した「田舎の駅」ですが、一時的にでも緑のホームになった事から、70年代のうちに駅=緑色ホームというように統一を試みた可能性があります。緑ホーム版の「田舎の駅」はほとんど出回っていない上、結局元のオレンジ色のホームに戻されていますが、当時の情景部品開発に対する考え方が伺える出来事と言えるでしょう。

●踏切の情景部品たち

▲1977年発売のセット品「チンチンふみきりセット」にのみ入っていた情景部品、その名も「警報機」。

 続いては「踏切」を見てきましょう。踏切の全自動化に伴い、現在ではほとんど見られなくなった「踏切小屋」ですが、今回紹介する2種類の踏切はベルの入れ物と電池ボックスとして小屋が表現されています。駅舎同様に建造物なので、踏切でも赤・緑・白の配色が見られるようになりました。

 赤・緑・白の配色で登場した初めての踏切がこちら、1977年発売の「チンチンふみきりセット」に含まれていた「警報機」という情景部品です。「音入り踏切」と「エレクトロ踏切」の祖先と言うべき情景部品です。

 レール上にある突起に直結したベルが踏切小屋に仕込まれ、車両が通過すると「チンチン」と電鈴式のような音を鳴らす情景部品「音入り踏切」も、緑ベースに白い建造物という駅同様の組み合わせです。ただし発売当初の屋根は赤色ではなく、ピンク色でした。後年になり赤い屋根に変更されており、上記の駅系や後述する「エレクトロ踏切」ど同様の配色に落ち着いています。2003年にリニューアルされてオレンジ色基調の姿に変わりましたが、2008年に絶版となりました。

 1980年の「ライト付えき」に続き、1981年に発売された光る系の情景部品「エレクトロ踏切」もこの配色。1988年以降はベースが屋根色よりも濃いめの赤い成型色に変更されており、当初の配色は失われています。

■建造物も例外ではなく…?

 駅と踏切以外にもこの配色を使った製品があります。「ファームハウス」と「信号所」です。どちらも1976年に発売された製品ですが、ファームハウスは1979年に、信号所は配色変更を経て2021年に絶版となりました。

 信号所もおもちゃらしい3色カラーリングですが、信号機が実物さながらの黒い成型色で付いてきたことで見た目に変化を加えています。司令室への階段と、建屋内に設置されているホイッスルを鳴らすボタンが同じ水色になっているのも他の同配色情景には見られないアクセントです。

 ここで紹介した製品の他にも、「全自動ふみきりセット」(1972年)、「ハイウェイぜんじどうふみきりセット」(1974年)の踏切や、「近郊型でんしゃふみきりえきセット」(1975年)、「ファミリーりょこう まちの駅セット」(1983年)の駅と言った、単品化されていないセット限定情景にも赤・緑・白の配色を持つ製品があります。これらの配色を持つ情景部品は70年代から80年代にかけて多数発売されていますが、絶版となったり、色変更が行われた製品もあるため長くは続かず、最後まで残ったのは2003年にリニューアルされるまで発売当初の色を維持していた「信号所」のみです。

▲ある日のイベントにて、同じ配色の情景部品を詰め込んだレイアウトを組んだ時の様子。写真右上に写るのが「ファームハウス」。その隣には「信号所」も見える。

 製造の都合で樹脂色の共通化を図ったとも考えられますが、結果的にレイアウトを彩る多彩な情景部品のカラーが揃うことで見栄えが良くなることも考慮したものとも考えられます。時代ごとの商品展開の方向性が色一つで分かるのもロングセラー玩具ならではです。

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