text:八密回避(Twitter ID:@DekaiMokei)
photo(特記以外):根本貫史(RMM)
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博物館に行くと構造や機構を解説するために、細部まで繊細に作り込まれた模型が展示されています。特に車両の内部構造を示す模型については、車体の一部をカットした状態となっており、車内の様子も確認できるようにしてあります。当然、それらは鉄道模型規格などに準拠しないハンドメイドで作られた一品物です。
ですがSNS上では近年、大型の車両カットモデル を製作して楽しむモデラーの作品が目につくようになりました。ここでは、その一例として国鉄型電車を多く手掛ける八密回避さんの作品をご紹介します。走行やゲージに捉われない、新たな鉄道模型工作ジャンルとして、今後成長する かもしれません。(編集部)
■実車のような迫力を求めて
私が常々模型製作で意識しているのは「実車のような迫力」です。なぜなら普段私が実際の鉄道車両を駅のホームで間近に見かける際、 真っ先に抱く印象であるからです。巨大な鉄の塊は、ともすれば私を圧倒し飲み込んでしまう のではないかと思わせるほどのオーラを放って おり、そこにこまごまとした精密さを感じることはあまりありません。したがって、1:15という非常に大きいスケールで製作し、可能な限り迫力を感じ取れるようにしています。
また、スケールの大きさを活かして内装を再現することもあります。特に座席は乗客にとっ て大切な要素であり、模型でもこだわりたくなります。例えば、東京メトロ05系B修車ではバケットシートを採用しているので座面や背もたれにくぼみをつけて座り心地のよさそうな見た目に仕上げました。201系では昭和の電車特有のスプリングの効いたフカフカそうな座席形状に仕上げたほか、背もたれのモケットが長年の使用により擦れて色あせているかのように表現を工夫しています。
■100%手作り故の苦労
100%手作りゆえの苦労もあります。それは、鉄道模型(車両本体)をフルスクラッチ製作 する方法をネットで調べてもそのほとんどはNゲージ・16番などで、1:15などの巨大スケールに関する情報が後述のブログ以外あまり得られなかったことです。
▲大型の手スリ兼ヘッドマーク掛けも201系量産車の特徴の一つだが、これもプラ材で立体的に再現している。
特に201系の額縁部分や113系の曲面部分の表現は手探りで模索せざるを得ず、非常に大変でした。また、ほとんどの作業は地味で達成感を感じにくくモチベーションが上がらないこともあります。こうなると早く終わらせたいという思いが芽生えてしまうのですが、焦ってもいいことはありません。完成した姿を強く思い浮かべて、山登りのごとく一歩ずつ着実に歩みを進めていきました。
▲天井の茶色いラインデリアや交換直後から汚れや擦れが目立っていたシートモケット…。ここまで車内の特徴を作り込めるのも、ビッグスケールならではといえる。
ところで、このようなカットモデル風鉄道模型のアイディアは私が考え出したものではありません。キッカケは中学生の時に出会った「ハンペンクラブ(http://minido103.livedoor. blog/)」という個人ブログでした。一見すると実車かのような雰囲気や、迫力を醸し出す見事な出来栄えの鉄道模型を、ハンドメイドで製作されており、当時の私は本当にハンマーで頭を殴られたかのような強い衝撃を受け、それ以来あの迫力を自分も再現したいという思いを原動力に模型製作を続けています。
■今月のRM MODELSは「ビッグスケール」特集!
今やプラスティック製のNゲージ(1:150~160スケール)がメジャーとなった日本の鉄道模型。その歴史を遡ると、かつては金属製の16番(1:80スケール)やOゲージ(1:45スケール)が主流でした。縮尺が大きくなればなるほど、実車に迫る質感や重量感という新たな魅力が生まれます。また、車内の装飾や足廻りといったディテールもより追求することも可能なので、1両からでも工作やじっくりと鑑賞を楽しむことができるのもビッグスケールならではの魅力の一つです。
本特集では、1:87スケール以上のビッグスケールモデルにスポットを当て、特に現代のNゲージ世代に向けて、ビッグスケールモデルの魅力を余すところなく紹介していきます。自身のホビーライフの次なるステップアップや、視力の低下でサイズアップをしたいとお考えの方は特に必見です!