185系

特集・コラム

電気釜スタイルを確立した「L特急」の申し子… 50年前の房総特急 183系0番代を鉄道模型で楽しむ!

2022.10.13

modeling & text:鈴木重幸
photo:羽田 洋

 1960年代、首都圏への人口流入とそれに伴う通勤通学輸送の逼迫を解消すべく、当時の国鉄は国電各線の線増を中心とした「通勤五方面作戦」なる一大プロジェクト(五大プロジェクトと言うべきか)を展開する。その一つとして、 鉄道開業百年の節目の年、1972(昭和47)年7月に総武本線錦糸町〜津田沼間の複々線化と東京〜錦糸町間の地下新線、そして丸ノ内の地下深くに位置する2面4線、有効長300mの東京地下駅が堂々完成。

 この総武線地下ホームに颯爽と乗入れを開始した新型特急電車こそ、本稿の主役である183系0番代。全線電化が完成した内房線経由の「さざなみ」(東京〜館山・千倉間)、外房線経由の「わかしお」(東京〜安房鴨川間)でデビューを果たした。3年後の1975(昭和50)年3月改正から は総武本線・成田線・鹿島線の電化開業に伴い東京〜銚子間の「しおさい」、東京〜鹿島神宮間 の「あやめ」も加わり房総特急四姉妹が揃い踏み。同僚の近郊型113系1000’番代とともに、 新時代を迎えた房総の鉄道の立役者となった。

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■衝撃だった「183系」のデビュー

 当時183系登場のインパクトは 相当なものがあった。何よりもそれまでのボンネットスタイルから、583系の構造を踏襲した「電気釜」スタイルにモデルチェンジされた前 面は、当時の某実物誌の紹介記事が「赤とクリー ム色の583系登場か?」という一文で始まっていることからして、如何に驚きをもって迎えられたかが窺い知れようというもの。

 そもそも終点まで150kmに満たない運行距離の短さも当時の特急列車としては異例で、そ れまで当たり前のように連結されていた食堂車の設定は見送られ、グリーン車1両を含む9両編成というのは12輌が当たり前の時代にあっ ては短編成の部類であった(今では信じられな いような話だが)。また乗降扉は末端区間でのローカル運用を考慮して片側2ヶ所となる(実際に、当初から「わかしお」の間合いで内房線安 房鴨川〜館山間を1往復する普通列車が設定さ れていた)など、従来の国鉄特急のセオリーからはかなり外れた存在なのであった。途中停車駅も多く設定され、線路条件とも相まって表定速度も急行とほとんど変わらぬ60km/h台という鈍足ぶりは、利用者からも「椅子がちょっと良くなっただけで倍の料金を取られる」と言われ決して評判は良くなかったようだ。

 今にして思えば、良くも悪くも「特急列車の 大衆化」を象徴する存在である183系だが、当時の国鉄当局には「将来的には急行列車を特急に格上げまたは快速列車に格下げして、列車体系を特急と普通の二本立てとする」という構想 があり、そのテストケースとして房総地区が選 ばれたという背景があった(諸般の事情により房総地区の急行列車は1982年まで残存するこ とになるが)。就役間もない1972年10月ダイヤ改正では等間隔運転による毎時同分発車や自由席の設定など利用しやすさをアピールした 「エル特急」の呼称が登場、「さざなみ」「わかしお」もその戦列に加わることとなる。183系は、 大衆化という観点からは現在のJR特急の重要なルーツのひとつと言えるだろう。

■TOMIX製183系0番代を小加工

 183系のNゲージ製品は、派生系列の189系も含めて各メーカーから様々なバリエーショ ンが発売されているのはご周知のとおり。しか し0番代のしかも登場時となると、長らく 2003年に発売されたKATO製品があるのみ (何故か一度も再生産されず)という状態が続いていた。が、2017年にTOMIXから初の183系0番代がリリースされた際に、限定品として登場時のセットがラインナップされ、久しぶりに初期の房総特急を再現できる製品の登場となった。今回はこの9両セットをベースに小加工を試してみた。

 TOMIXの183系は近年の同社国鉄特急型モデルの造りで、基本的に安定した塗装やディテール表現を楽しめるものだが、カバー表現のない前面ヘッド・テールライトとガラス表現のない愛称幕が若干気になるところ。そこで今回は前者に模型工房パーミルの「TOMIX485系 ライトカバーパーツ」を、後者には同社 「TOMIX485系用ヘッドマークガラスパーツ」 を使用してみた。

 ライトカバーパーツはライトリムと極力面一となるよう美・透明接着剤で、ヘッドマークガラスパーツは説明書の指示通りヘッドマークプリズムの裏側を若干削った後、タミヤのクラフトボンドでそれぞれ接着。これらのパーツは繊細なもので取付に多少のコツが必要だが、前面 の表情がグッとリアルになる。併せて前面廻りでは貫通路の継ぎ目にタミヤのスミ入れ塗料 (グレイ)でスミ入れ、またスカートをクレオス明灰白色 三菱系で、スノープラウを同Mr.フィニッシングサーフェイサー1500(ブラック)で塗装してみた。

 その他、屋根板との境目に露出するクリーム色が気になる雨樋上面はタミヤエナメル XF-66ライトグレイを烏口で塗装。屋根板と屋上機器はタミヤのスミ入れ塗料(ブラック)でウォッシングまたはスミ入れ、パンタグラフはプライマー処理のうえシルバーで塗装→スミ入れ塗料でウォッシング。乗務員扉脇の手 スリは赤帯部分をクリームで塗装、ではなく てカッターナイフの背で塗装を削ってクリー ムの成型色を露出させて周囲をエナメルのラ イトグレイでスミ入れ。また側面方向幕は鳳車輛製造のステッカー#507「183系方向幕房総篇 側面用」を貼付。

 といったところだが、可能であれば下廻りの塗装、特に循環式汚物処理装置は本形式が初採用でもあり、是非とも塗り分けてアクセントとしたいところであり、少々心残りでもある。

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