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特集・コラム

「駅」を訪ねて…何のためにどこに行くのか…「ひたちなか海浜鉄道 延伸予定区間」

2022.09.25

取材日:’21.11.2
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル 取材協力:ひたちなか海浜鉄道

 隔月刊行時代のレイル・マガジンで連載した「シーナリー散歩」。WEB編は「『駅』を訪ねて…」に再構成してお届けしています。2022年1月号では、茨城県の第三セクター鉄道・ひたちなか海浜鉄道を取り上げました。今回のWEB編では、前回で到着した終点「阿字ヶ浦駅」のその先、2駅分の延伸予定区間を見ていきたいと思います。

前回記事(阿字ヶ浦駅その2)はコチラ

レイル・マガジン2022年1月号(452号)書誌情報

いったいどこへ向けての延伸なのか?
 ひたちなか海浜鉄道湊線、開通当時は湊鉄道、その後茨城交通だった時代が長く続きましたが、当初の数年を除いて終点はずっと阿字ヶ浦駅で、そこから先へ延びる計画などは、聞いたことがありませんでした。

 しかしこのエリアにはこの30年くらいの間に急成長した観光施設があります。阿字ヶ浦駅の北西方向にある国営ひたち海浜公園です。

イラスト:遠藤イヅル(部分アップの上で再掲)

 1991年に開業し、広大な敷地では一年中、何らかの花が咲いているのを楽しめることで、近年年間を通じて大変な人気施設となっており、週末になると周辺道路の混雑が尋常ではないのだとか。駐車場待ちの自家用車による渋滞と、それに起因するバスの慢性的な遅延が発生していることから、湊線を延伸して観光客の動線を分散させようというのが狙いとなります。 

▲国営ひたち海浜公園の正面ゲート。取材日は休園日だったので閑散としていましたが、週末になると様相が一変するようです。

 延伸距離は3.1km、阿字ヶ浦駅からS字を描いて北西に延び、途中駅(「新駅1」)と新たな終点(「新駅2」)の2駅が新設される計画です。

▲上掲写真の右手前にある空き地が、新駅2の建設予定地。

▲上写真からさらに右手を向くと、大型ショッピングセンターもあります。

▲ひたち海浜公園から阿字ヶ浦方向へ戻る位置にある安全運転中央研修所。

▲延伸区間は、研修所敷地と道路の間の緑地帯の上を、恐らく高架で走らせると思われます。

▲安全運転中央研修所から海岸方向へまっすぐ下りてきて、振り返ったところ。左手の丘陵の方向に阿字ヶ浦駅があり、カーブを描いて道路に寄り添う線形になると思われます。新駅1ができるのも、この丘の上あたり(実際には見えていないもっと奥の方)ではないかと思います。

▲まったくの想像図ではありますが、片側2車線の近代的な道路の脇に、真新しい、しかし単線非電化の高架橋が設置され、貴重な国鉄型キハ20形が走る日が来るのかも…しれません。イラスト:遠藤イヅル

 この延伸計画は国土交通省に2021年1月に承認されています。当初の報道では2022年度中に着工し、2024年度に開通予定とされていましたが、コロナ禍により用地買収が滞ってしまったとのことで、現時点で既に工程には遅れが生じていることが明らかになっています。とはいえ、完成の暁にはローカル線がおよそ100年ぶりに延伸されるという、極めて希少な事例になることでしょう。ファンとしては期待して見守りたいと思っています。

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