modeling & text:根本貫史(RMM)
photo(特記以外):青柳 明(RMM)
今回ご紹介するのがこちら「井の頭線風ミニレイアウト」です。こちらは600×1100mmのスペースに小判型エンドレスという単純な配置ですが、「エンドレス感を出さない」というのが基本コンセプトとなっています。そこで採り入れたのは、大胆にもエンドレスのカーブを隠すという方法。こうすることで、風景の連続性を意図的にカットして同じ車両が単調にぐるぐる回る印象をなくしました。また、隠すばかりではなく、逆にカーブの魅力を引き立てる「魅せるカーブ」も設けました。
■花や緑が豊かな井の頭線沿線をイメージに取り入れる
京王井の頭線は吉祥寺から渋谷までを結ぶ12.8kmの短い路線です。住宅街が多く目に付きますが、沿線緑化などが盛んでサクラやアジサイ、ツツジといった様々な草花で彩られており、四季折々鮮やかな風景をカラフルな電車が行き交います。また、トンネルと一体となった神泉駅、駅間距離の短い新代田〜下北沢間、虹色に染まる富士見ヶ丘検車区、京王線の接続が計画されたものの実現しなかった東京山手急行の線路スペースが残る明大前など、カラフルな中に垣間見える歴史も井の頭線の魅力と言えるでしょう。
そんな沿線のイメージを取捨選択し、限られたスペース内にできるだけ盛り込みました。のんびり走行シーンを楽しむことを第一に考えたので、基本は単純な複線エンドレスとなっています。エンドレスレイアウトで問題になる風景の連続性は、前記の通りカーブ区間の一部を隠すことで解消。また、レイアウトの中央付近に団地を2棟配置し、視覚的にも風景を分断しています。
■「隠すカーブ」と「魅せるカーブ」
井の頭線は住宅街を縫うようなカーブが多いですが、エンドレスのカーブ区間は隠してしまったためストレート区間の一部に緩やかなカーブ区間を設けて「魅せるカーブ」としました。イメージしたのは三鷹台周辺の神田川に沿って緩やかにカーブする区間。実際は遊歩道がありますが、スペースの都合から線路側まで川を寄せる形となりました。
また、エンドレス両端の「隠すカーブ」は、全周を隠さずに、トンネル入口付近を切り通しとし、さらに法面には格子状のコンクリート法枠を、園芸用品コーナーにあった樹脂製メッシュを貼って再現しました。
■神田川の静かな流れを再現
先程の通り、三鷹台付近のカーブをモデルに、レイアウトベースから20mm程度掘削して川を作りました。実際のこの付近を観察すると、スペースの関係か、波状の鉄板による垂直の護岸となっていたので、画材店で見つけた段ボール紙を使用して再現しました。水面の表現には、ウッドランドシーニックスのリアリスティックウォーターを流し込みました。水面には特に波を立てず、静かな流れを表現しました。
■駅はカーブホームで1両分!?
さて、ここまで色々な情景を盛り込みましたが、このレイアウトに残された唯一の駅設置スペースは「隠すカーブ」の入口1箇所のみ!本来なら最悪の立地ですが、実際にカーブホームがある井の頭線を再現するには最適な場所と言えます。しかもホームはトンネル入り口のみに設置し、神泉駅のようにあとはトンネルの中という設定にすれば、最低限のホーム表現で済むという一石二鳥な方式を採用しました(手抜きとも言いますが…)
そんな都合よく合致するカーブホームの製品はないので、自作となります。ホーム自体はスチレンボートから切り出し、側壁や屋根といったパーツはGM製の対向式ホームを使用しました。C280-45とC243-45と、結構キツいカーブを使用したため、車両が停車するとホームとの隙間がかなり開いてしまい不自然さは否めないですが、こればかりは解消のしようがありませんでした…。
■虹色電車が走る街を楽しむ
こうして完成した姿がこちら。わずか600×1100mmのスペースではありますが、見る方向や目線の高さで様々なシーンを楽しむことができるレイアウトになったかと思います。エンドレス内に広がる車庫は、スペースの関係からダミーとなってしまいましたが、カラフルな電車が並ぶ姿は実際に車窓から眺める富士見ヶ丘検車区の姿を彷彿とさせます。
今日はどの色を走らせようか…。そんな楽しみ方ができる虹色のレイアウトです。
※こちらの記事は『RM MODELS 139 2007年3月号』の記事から抜粋しており、情報は当時のものとなります。あらかじめご了承ください。