text & modeling:永井健太
photo:根本貫史(RMM)
大井川鐵道には数多くの旧型国鉄客車が在籍していますが、その中に元西武の通勤型電車を改造した客車が今なお現役で活躍しています。今回はそれら3形式を、家庭用3Dプリンタで製作した作例をご紹介します。なおプリンタは「Phrozen Sonic」、レジンはSK本舗の「SK高精細レジン」となっております。
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■ナロ80形(ナロ80 1)
本形式は西武501系(2代目)の半鋼製中間車 (サハ1516)が種車で、元々のノンシル・ノンヘッダーでスッキリとした車体が特徴です。妻面の貫通路は元々広幅でしたが、他の客車と合わせるため狭幅に改められ、妻面窓の間隔にその面影が認められます。パーツ構成は筆者の技法として定着した「ボディー+屋根板+妻面」というパーツ構成です。側面窓がこれだけ連続すると強度が心配になるため、出力時に縦方向の補強を適宜追加しました。
床板・床下機器も3D出力によるもので、枕ばねがオイルダンパーに変更されたKS33台車は既製品が存在しないため、こちらも3Dモデリングで自作しました。
■ナロ80形(ナロ80 2)
種車は西武351系サハ1426ですが、大井川鐵道312系の中間車として譲渡された車両を自社で改造しているため、ナロ80 1とは出所 や仕様が異なります。基本的な見付は同じですが、こちらはシル・ヘッダーが付き、ベンチレーターはグローブ式を搭載するなど、種車の仕様 がそのまま反映されています。
▲ナロ80 1(写真右)と比較すると、ウィンドウシル・ヘッダーの有無や、搭載するベンチレーターの仕様が異なっていることがわかる。
過去に製作していた西武351系のサハ車のデータをデジタルで「切り継ぎ」して作図しています。雛形となる基本設計データを蓄積していると、画面上で如何様にも派生形式を作ることができます。これこそ3Dモデリングの醍醐味の一つと言えるでしょう。
■スイテ82形(スイテ82 1)
ナロ80 1と同様、西武501系(2代目)半鋼製中間車(サハ1515)を種車とした展望客車です。車両記号に「イ」が付与され、窓下には白帯と「I」の標記が入るなど、国鉄の「一等車」然とした外観が特徴で、ナロと共に団体・貸切列車で活躍します。
▲沿線の名産「川根茶」の茶畑を行くE31形電気機関車牽引による元西武車率の高い臨時客車列車。ナロ80・スイテ82形両車の定期運用はなく、おもに臨時列車や団体貸切列車で使用される。
基本構成はナロ80形と同様ですが、特徴的な展望室は緻密な手スリを表現するため、先端部のみ別ユニットで出力し、組立時に車体と接合するようにしました。3Dモデリングでは、 金属エッチングでは表現が難しい円筒状の手スリなども容易に表現できるため、今回のような展望室の製作には適していると言えます。 なお、車体の標記類はオリジナルのインレタを発注し、全車それを転写しています。
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近年産業分野で幅広く活用されている「3Dプリンタ」による立体造形技術。普及と進化が進むにつれて、いわゆる「家庭用」と呼ばれる手頃なデスクトップサイズの製品が続々と登場。個人レベルでも3Dモデリングが容易に楽しめるようになり、各種模型ジャンルでも新たな造形ツールとして幅広く活用されています。
2015 年に刊行した「鉄道模型3D プリンタガイド」では、元となる3D-CADの作図方法を中心に解説し、鉄道模型分野はもちろん、他の模型ジャンルでも幅広く活用されました。
今回の本書では、前回より7 年経過したことによる環境の変化に対応。この間に普及した3D-CAD ソフト「AUTODESK Fusion 360※」による、Nゲージ車両の作図方法を主軸に、出力編ではオンライン出力サービスの最大手、「DMM.make」の3Dプリント造形サービスの活用や、手頃になった家庭用3Dプリンタの基本的な出力テクニックや素材となるレジンの種類や扱い方について詳しく紹介していきます。
※Autodesk、Fusion 360 は、米国および/またはその他の国々における、Autodesk, Inc.、その子会社、関連会社の登録商標または商標です。