text & photo:上石知足(鉄道ホビダス)
東京の東の端、小岩駅から金町駅を結ぶ貨物線である新金(しんきん)貨物線。この路線自体はJR東日本が所有するものの、旅客定期列車の運行はなく、一日に数往復貨物列車が通るのみのであり、その姿は「都会のローカル貨物線」といった雰囲気があります。今回はこの黙々と貨物輸送を行なう新金貨物線沿線を散歩。その魅力に迫ろうと思います。
■「新金線」の歴史
▲新金貨物線の路線図。書類上の起点は小岩駅からとなっており、新小岩信号場駅をスイッチバックするような形で経由し、金町方面へと向かうようになる。
開業は1926(大正15)年と、その路線の歴史は古く、その昔、総武本線で隅田川を渡る橋がなかった時代は、当時の終点である両国橋駅(現在の両国駅)で積み替えを行なったり、東武亀戸線経由で常磐線へ向かっていました。それらを解消すべく、総武本線からの貨物列車を、常磐線経由で都心部へ直通させるバイパス路線としてこの新金貨物線は建設されました。近年まで総武本線と常磐線を連絡するメインルートとして機能していましたが、2000年より武蔵野線と京葉線にその座を譲り、以降は貨物列車の運行も一日に数本のみとなってしまいました。
現在、総武本線と常磐線の間を直接連絡できる貴重な路線として度々旅客化の話は持ち上がるものの、全区間に亘って単線であることや、交通量の多い幹線道路を渡る踏切など課題も多く、いまだ実現 には至っていません。 そんな経緯を持つ新金貨物線ですが、今回はモデラー視点、レイル・ファン視点で沿線の情景を具に観察してみようと思います。
■新金線をレイル・ファン視点から散歩してみる
「貨物線」と聞くと地味な印象を抱くかもしれ ませんが、住宅地を行く新金貨物線ですが、その中でもいくつかロケーションのいいスポットがあります。まず、ここを行く列車のビューポイントとして名高いのは「中川放水路橋梁」でしょう。ここは総武本線各駅停車の小岩駅より徒歩15分ほどで行けるアクセスの良さと、綺麗に列車が収まる橋の構造、そして新金貨物線の中で唯一河川を渡る橋梁という場所になります。橋を背にして金町方面へカメラを向けても綺麗に編成が収まるので、珍しい列車や機関車が来る場合には多くの撮影者で賑わうスポットでもあります。
途中、複線化を計画していた名残が随所に見られるのも沿線の見どころです。先述の中川放水路橋梁にも橋桁が乗っていない橋脚があったり、線路脇に明らかにもう一本レールを通せそうな「空き地」があるなど、複線化の準備をしていた形跡が今も残っています。こういう小ネタをジオラマに組み込むことで、より情景にストーリー性が生まれて魅力的なものに仕上がるように思えます。
なお、一部の複線化用地であったと思われる空き地は、駐車場に転用されたりしているので、 今から複線にするというのは課題が多そうです。 また、取材当時一部で線路の切替工事を行なっており、雰囲気だけではありますが、複線のように見える箇所も見受けられます。工事中の風景はいわば「期間限定」。このような姿の記録も意外と大事だったりするものです。
↓今回の記事の詳しい画像はこちら!↓