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特集・コラム

元プロ野球選手 屋鋪 要と鉄道写真家 広田尚敬がゆく!秩父鉄道を走るSLの楽しみ方!

2022.08.05

記録写真:羽田 洋
インタビュー:瀧口宜慎(RMM)

 蒸気機関車をこよなく愛し、動態保存機の撮影にも熱心な元プロ野球選手の屋鋪要さん。最近では鉄道写真家の広田尚敬さんとも親交が深く、共に各地へ鉄道撮影に出かけているといいます。今回、蒸機列車「SLパレオエクスプレス」 の走る秩父鉄道沿線に広田さんと屋鋪さんを招待し、その様子の一部をこちらの記事でお伝えします。

■築堤をゆくSLを撮る!

広田:あー、ここいいじゃないですか。ちょっと様 子を見てみましょう。ちょうど青空も出ていますし ね。少し見上げるような築堤なので、やや屈んで撮ると背景の住宅が隠れていいですね。屋鋪さん、 この道路と築堤の隙間のスペースはどうですか? ワイド向きですね。ちょっと道路標識が入っちゃうけど、画角を考えればいけるんじゃないですかね。

屋鋪:ここからファインダーをのぞくと、道路標識と信号機器箱がちょっと入っちゃうな。もう少し前にしようかな? 築堤の上に咲く花、あれをうまく入れられないかな…。長めのレンズにしたほうがいいかな。

編集部:広田さんは写真の画角に入ってしまう看板や標識なども、無理に排除するのではなく、むしろ積極的に取り入れられるんですね。

広田:そうそう、邪魔な標識があるからダメ!ではなくて、そういう線路の周りに元々あるものや、沿線の人々も全部、その鉄道を支える事象ですから。そのすべてが被写体なんです。「全部いただいちゃおう!」という感じですね。…あ、列車が来た!

▲撮影ポイントを探し、アングルを決めた屋鋪さん。

▲撮影後、通過する客車に手を振る屋鋪さん。ささ やかな乗客とのコミュニケーションだ。

編集部:どうでしたか?良い写真が撮れましたか?

屋鋪:うーん、まぁまぁですかね。

▲左手の黄色い花と蒸機をワイドで狙った作品。 ふかや花園~小前田 撮影:屋鋪 要

広田:まぁ、場所もまだまだ奥地じゃないですしね。

▲作品名「秩父連山近し夏雲湧きて」。 ふかや花園~小前田 撮影:広田尚敬

屋鋪:貨物列車が駅に停まっていますね。セメントの原料を運ぶ貨車ですね。

▲長瀞を発車する下り貨物列車を狙う屋鋪さん。

広田:この駅は小前田ですね。ここもいい雰囲気の駅ですねぇ。秩父鉄道は駅舎にも表情があって素晴らしい。ちょっと行ったところに火の見櫓があって、あれもまたいいですね。 

■有名撮影地の荒川鉄橋でSLを狙う!

広田:「SL パレオエクスプレス」は何分後に通ります?

編集部:今は12時40分くらいですから、まだ 20分ほどありますね。

屋鋪:広田さん、やっぱり川下りのボートを入れますか?

広田:僕はね、タープを張って河原遊びをしている家族を入れて撮ろうと考えています。今日は青空も綺麗なんで、青空を入れて夏らしい季節感のある画を撮るか、ファミリーを入れて家族の団らんを横目に走り抜ける蒸気機関車を撮るか、 どちらかにしようかなと。

屋鋪:僕はオーソドックスに鉄橋を真横から狙おうかな。

編集部:ところで広田さん、人物を入れて撮影する場合、事前に声をかけて了解を得るのがベス トだと思いますが、そういう時のコツとかってあ りますか?

▲アングルを探しながら、おもむろに家族連れのタープテントに向かう広田さん

広田:人を撮らせてもらうとき、「こういう目的で、 こういう写真を…」と説明から入ってしまうのはよくないですね。みなさん途端に硬い表情になったり、動きがなくなってしまう。なんとなく近くに行って、世間話をしたりして、自然に入っていくのがいいでしょうね。

屋鋪:うーん、ここ、確か橋の手前に電線が通ってしまってますよね。

広田:お昼で日差しが進行方向の真正面からな んで、シルエットのように撮れば目立たないかなと思いますよ。

屋鋪:なるほど、ではそうしてみようかな。

▲鉄橋を渡る「SLパレオエクスプレス」。列車を迎えるようにトンビがその上を舞う。 上長瀞~親鼻 撮影:屋鋪 要

屋鋪:ここみたいに観光客の方たちがいる河原だと、いろんな人と交流ができて楽しいですね。

編集部:でもお二人とも、初対面でも自然に会話が広がっていって、さすがですね。

広田:いきなり行くとみなさんびっくりされちゃ うので、ゆっくりと徐々に話を広げていくことが大切ですね。それに、今回はとても良いご家族に恵まれました。

▲作品名「SL日和1」。タープ越しに捉えた、橋梁を行く「SLパレオエクスプレス」。汽笛が渓谷にこだまする。 上長瀞~親鼻 撮影:広田尚敬

編集部:いま、なかなか人の姿を撮ること、撮られることに神経質な時代ですから、写真のモデルになってくれた方々が喜んでくれる姿はホッと しますよね。

屋鋪:それも、広田さんの人柄があってのことですよ。

■広田さんとっておきの「秘蔵書籍」が…!?

広田:実は今日ね、屋鋪さんが生まれる前の本を持ってきたんですよ。先ほど言った『鉄道模型趣味』誌の昭和27年3月号。

▲広田さんが取り出した『鉄道模型趣味』誌は約70年前の昭和28年10 月号と昭和27年3月号の2冊。現在も続く鉄道趣味界きっての長寿誌だ。

屋鋪:西暦でいうと1952年だから、今から70年も前ですね。私が生まれるずっと前ですよ。いや、凄いですね。

広田:この本にね、田部井康修さんが撮られた 秩父鉄道デハ100形電車の形式写真が載っているんです。田部井さんは鉄道趣味人として非常に幅広くご活躍されていて、私とそれほど歳も変わらないけど、当時からしっかりした写真とレポート記事を投稿されていたんですね。

編集部:当時はこんな立派な電車を秩父鉄道で 自社発注して走らせていたんですね。

広田:2扉の美しい電車でね。いつか作ってみようと思っていたんだけど…。もうひとつ持って きたのが私の写真が初めて載った本で、同じ『鉄道模型趣味』誌の昭和28年の10月号。上田駅 で撮影した日通の小型入替機で、ボンベ式の機関車なんです。無蓋貨車よりずっと小さくて、連結器が台枠より上にあるでしょ。変わった機関車ですよね。当時、鉄道写真のコンテストは鉄道模型誌の『鉄道模型趣味』だけが誌面で募集 していて。

屋鋪:これは入賞したので掲載されたんですか?

広田:入賞はしなかったんだけど、こうして掲載 してくれたんですよ。当時編集者で、後に編集長 になった赤井哲郎(石橋春生)さんが車両の解説記事を添えてくれて。

▲初めて広田さんの写真が雑誌に掲載された上田駅の日通入換機(左の本の右頁、上から3番目) の記事と、田部井康修さんによる秩父鉄道デハ100形のレポート(右の本)。

屋鋪:広田さんが高校3年生のころだ。このあと入賞もされたんですよね。

広田:入賞した時の号もあるはずなんだけど、残念ながら書棚から見つけられなくて…あ、汽笛 が聞こえました。蒸気機関車が来ますね。じゃ あ撮影体制に入りましょう。

▲熊谷に向かう上り「SLパレオエクスプレス」を撮影する広田さん

■撮影を振り返って

編集部:では、名残惜しいですがそろそろ熊谷駅へ戻りましょう。お二人とも、今日はいかがでしたか?

広田:今日は久しぶりに少年時代を振り返っ て、模型少年の心に戻った一日でしたね。

屋鋪:70年前、私が生まれる前の『鉄道模型趣味』誌を拝見して、この趣味の連綿とした流れに感じ入りました。


■詳しい模様はこちらで!

屋鋪 要の鉄道模型 縦横無尽

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巻頭では交友関係にある鉄道写真の巨匠、広田尚敬さんと訪ねる秩父鉄道沿線の旅に出て、広田さんとの出会いから、広田さん自身の鉄道写真、鉄道模型との関わりを語ってもらいつつ、各所で出会う列車を撮影しながらの旅を楽しみます。

本編では、Nゲージによる屋鋪さんの思い出深い各地のジオラマを製作披露するほか、戦前の特急「燕」から、20系ブルートレインまでをNゲージで編成中の一部の工作をし編成を再現。
また、各地の鉄道模型レイアウトを求めて訪ね歩きレポート。そのほか1:80スケール(16番モデル)の戦前型ダブルルーフ客車のキットを使い、「燕」編成の製作では、手スリの一本から、扉の取っ手まで再現するなど、一か所一か所丁寧な製作を紹介。プラキット入門者に向けた格好の指南書ともなるでしょう。

詳しくはこちら

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