text & photo:上石知足(鉄道ホビダス)
モデラーにとってインレタ劣化との戦いというのは避けては通れない道…。買ってからすぐに使うのが一番ですが、全てがそううまくいくこともないのも事実。しばらく時間が経ってから作業に取り掛かるということも少なくありません。今回はそんな切っても切れないインレタの劣化を防ぐ方法の提案と、すでに劣化してしまったものを蘇らせる術はあるのかを実験してみました。
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■今更聞けない!インレタの適切な保管方法
インレタというものは年数が経つと徐々に糊が固着し、転写ができなくなってきます。といことで、まずはこのインレタの適切な保管方法から。
インレタの劣化の原因としては空気に触れることで糊が固まり、年数と共に転写ができなくなるというもの。それを防ぐためには空気が出入りしないチャック袋等に入れて、冷暗所で保管するのがベストです。こうすることにより、色彩豊かなインレタの日光などによる変色・退色も防げることでしょう。
■それでも劣化してしまったインレタって復活するの?
ですが、適切な保管をしていても劣化を完全に阻止できなかったり、また中古品で手に入れた模型のインレタだったりと、「時すでに遅し」なものにでくわすことも多くあります。ということでRM MODELS編集部の保管庫奥から糊が固まり、転写が難しくなっていたインレタを2種類用意しました。この2枚を使って、「熱湯の温度で復活させる」という方法と、「シンナーのガスを利用して復活させる」という方法の2つを試してみました。
●熱湯の温度でインレタは復活するか!?
▲タッパーの中に沸騰したお湯を入れ、袋に入れたままのインレタを30分ほど放置してみた。
まずは熱湯の熱を利用してインレタを温めて、固着してしまった糊が復活するのか試してみました。インレタは購入時に入っていた袋に入れたまま、お湯の入ったタッパーの蓋の上で30分ほど温めてみました。
▲30分後、熱により若干柔らかくなり転写できそうな予感もしたが…?
30分放置したのち、転写を試みてみましたが…? 結果は写真の綿棒の他、爪楊枝やバーニッシャーでもいくらか擦ってみましたが転写されませんでした。やはり30分程度温めただけでは経年劣化したインレタはびくともしないのか…?ということで続いての実験に移ります。
●シンナーのガスを利用すれば転写できるのでは…?
ということで続いてはタミヤのX-20シンナーを使用してガスによる糊の復活を試みてみます。使用するインレタはすでにお湯で温められたものではなく、もう1枚の凝り固まった別のインレタを使用しました。
手順としてまずはタッパーに水深1cmほどシンナーを注ぎ入れます。インレタは必要な箇所をカッターで切り取り、糊面がシンナーを浸している方を向くように蓋にセロハンテープで貼り付けます。その状態で蓋をして1時間ほど放置してみます。
▲そして1時間後、転写を試みる。果たして復活しているのか!?
▲なんと1時間前まではいくら擦っても転写されなかったインレタが、綿棒で擦る程度で転写されるほどに復活していた(実験なのでキハ26のものが付いていますがご了承のほど)。
1時間後、蓋を外し、インレタをテープから剥がしていざ転写をしてみると、なんと!綿棒で軽く擦っただけで1時間前まで微動だにしなかったインレタが復活しました!1回目のインレタとは別のものになるので、単純な比較…とは言いにくいですが、カピカピの固まってしまったインレタでも、この方法であれば希望が持てそうです。
さて、今回はシンナーのガスを利用してインレタを復活させることに成功しましたが、これはあくまで一例。インレタの保存状態や劣化具合により、復活するかどうかは左右されます。特に、一般的な製品に付属していることが多い糊がシート全体に塗布されているものは、基本的には効きにくい傾向にあるそうです。また、今回は失敗したお湯で温める方法でも、場合によっては復活することもあるかもしれませんので、転写されずに悩んでいる方はこちらを参考にぜひ試してみるのもいいかもしれませんね。