modeling & text:瀧口宜慎(RMM)
このジオラマ作品の詳しい製作工程はこちら!
さて、今回は駅の風景にトライしてみます。モジュールはプラットホームの風景を基本に、複線区間とつなげられるように、駅構内に進入する分岐部分も同時に製作してみました。更にカラーボックスでの展示用にプラットホームには照明と、鏡を使って狭い空間を広く見せる工夫をしてみました。
■ベースはKATOの「近郊形島式ホームセット」
使ったプラットホームはKATO「近郊形島式ホームセット」。大きな屋根が特徴ですが、使用するレールはTOMIX製で、それとはレイアウトの規格が違うKATO製のホームを使います。なぜかといえばKATO製「近郊形島式ホームセット」は、屋根が深くこの隙間に室内灯が組み込めるというウワサがあり、この際それを検証してみたかったというのがあります。
▲TOMIXとKATOのレイアウト規格の違いを、車輌を置いて検証。ホーム床面より車体裾が少し低く見える。ホームを1~2㎜下げてやる必要がありそうだ。
▲ホームの置かれるスペースはt3.0のスチレンボードを貼る。これで上で検証した2㎜下げた位置になる。
■室内灯、駅に組み込めるの…?
屋根の横梁パーツに照明ユニットとして、KATO「HOゲージ用室内灯セット」を使用してみましたが、なんとコレが失敗。電球の太さが狭いスペースの中に納まらず、輝度も低いため、これは泣く泣くやめにしました。
そして代わりとして用意したのが、同じKATO製の「HOゲージ用白色室内灯セット」です。値段はなんと電球の倍するものの、白色LEDで小さく輝度も高いためこれを試してみました。
簡単に取り付けられる…などと高を括っていたら、まったく製品として対応は考慮されていませんでした(それもそうか…)。「近郊形島式ホーム」に照明が取り付けられる!というウワサは、あくまでスペースに入るという噂で、簡単に取り付けられるというわけではありませんでした。しかし、ここまで来てしまってはもう引き返すわけにはいかないもの。加工進行!
■限られたスペースを広く見せるキーアイテム「鏡」!
今回のもう一つのギミックとしては、カラーボックスの内側への鏡の取付を考えました。ホームセンターで320×550mmのt2.0のアクリルミラーを2枚購入し、Pカッターで慎重にスジ入れをしてカットします。鏡とはいえアクリル製のため、平面性は今ひとつでしたが、加工性の良さで考えれば十分な効果が得られたかと思います。
完成した駅のジオラマと分岐部分のジオラマを繋げてみた様子。規格上、間に5mm程度の隙間が開きますが、気になる方はスチレンボードやコルクマットなどで隙間を詰めるのも良いでしょう。
2つのジオラマをカラーボックスの同じ高さの棚に入れると、ひとつのつながった情景に見えるのが面白いですね。もちろん横に長い棚を用意できるなら、こんな方法で展示する必要はありませんが、安価で手軽に手に入れられるカラーボックスを使い、車両を動かすことのない展示だけならこれでも十分かと思います。また、鏡の効果で一見奥行きnある棚のように見えます。
「どうしても広く見せたい!」という場合にはこのような手法で情景の空間を広げる、という手もあるのです。
■完成!
昼間の主役と夜の主役が入れ替わる夕暮れのターミナル駅。場所は上野か、大阪かはたまた博多か。国鉄時代の名車がプラットホームに並ぶ…。実は撮影時に実際の模型車両はたったの2両しか使っていません。奥に止まって見える車両は実は手前2両が鏡に映っているもの。部屋を暗くして、こんなプラットホームの風景を眺められたら至福のひと時かもしれません。
同じ棚で、車両を変えて目線を上げてみると、これまた違った雰囲気に。快速線と各駅停車線の間に貨物側線があり、ゆっくりと機関車が通過してゆく…。そんな近郊の大型駅の雰囲気が、鏡の効果でB4サイズでも再現できました。奥のEF81と209系500番代(京浜東北線)が鏡に映る車両で、よく見るとJRマークが反転しているのが分かるかと思います。この鏡をもっとうまく使えば、まさに無限の空間を再現できるかもしれませんね。
※記事は『RM MODELS170号 2009年10月号』掲載時点での情報になります。ご了承ください。