text & photo:RM
取材日:’22.3.19 取材協力:九州旅客鉄道
2022年9月23日に開業が予定されているJR九州の西九州新幹線(武雄温泉~長崎)。専用車両となるN700Sが搬入されたというニュースも記憶に新しいですが、その車両基地となる「大村車両基地」が完成し、報道陣にお披露目されました。
▲仕交検庫から顔を出す第一編成の1号車。建屋外壁が赤茶色で、「かもめ」の車体色とコーディネートされているようだ。
設置された場所は長崎県大村市北方、新規に設置される新大村駅の上り方で、在来線の大村線の竹松~松原間とも並走している区間です。西九州新幹線は当面は他の新幹線路線と接続が無いことから、この車両基地では台車検査・全般検査を除くほぼすべての車両保守が完結できることになっています。
▲右手が台振庫、左手が仕交検庫。
▲記念式典には多くの来賓が列席。
設備としては、留置線=2線、仕交検線=2線、全検整備線=1線、転削線=1線、臨修線=1線、台振線=1線、解体線=1線、引上線=1線、車体検査線=1線が設けられます。留置線が2本とコンパクトさが際立ちますが、当面準備される車両は4編成のみなので当然でしょう。編成を収容する大規模な建屋は2つあり、一つが今回N700Sが顔を出している状態で公開された仕交検庫、もうひとつが台振庫と呼ばれるものです。
▲仕交検庫では線路が地面から高い位置にあるため、車体が一見浮いているようにも見える。
▲地面、ホーム高さ、屋上点検台という3つの高さで車両の点検ができる。
仕交検庫は正しくは「仕業・交番・全般検査庫」で、庫内に全検整備線1線と仕交検線2線を備えます。レールは床面から一段高い位置に敷設されており、下回りの点検を作業員が立った姿勢で行うことが可能。さらにホーム高さの通路のほか、屋上点検台も設置されています。
▲台振庫では車体を持ち上げるジャッキや台車を転線させるためのミニターンテーブルが特徴的。
▲奥に見えるのが転削機。
台振庫は正しくは「台車振替・臨時修繕・車輪転削庫」で、レールは地面レベルに敷設されており、多数のジャッキがあります。車体を持ち上げて台車を外し、ターンテーブルで横の線路に移動させて検査や車輪転削をすることが可能になっています。
▲東海道・山陽新幹線で見慣れたブルー系ではなく、イエロー系となる自由席。写真は4号車。
▲自由席車の大型荷物置き場。シートを転回した時のテーブルが壁面に設置されているのもわかる(指定席車の場合はインアームテーブルとなるため、設置されていない)。
今回の報道公開では、以前の日立製作所笠戸事業所では公開されなかった自由席車の車内も公開されました。西九州新幹線用N700Sは6両編成で、うち1~3号車が2+2列配置の指定席、4~6号車が2+3列配置の自由席となります(グリーン車はありません)。自由席車のシートは、基本的には東海道・山陽新幹線のN700Sのそれと同様で全席にコンセントを装備。生地色が黄色というのが鮮やかで九州らしさを感じさせます。
▲指定席の3号車の車いすスペースを見る。
▲身障者用トイレの室内の様子。
▲多目的室の室内。
▲筆文字・縦書きの「かもめ」と、最新様式のフルカラーLED表示器とのミスマッチもユニーク。
大型荷物置き場や身障者用トイレなども充実しており、楽しい旅を予感させる室内設備ということができるでしょう。また、指定席3号車の車端寄りには車いすスペースを4席分確保している状況も分かります。また、フルカラーLED式の行先表示器では「かもめ」の列車愛称表示が黄色ベースであることも判明。「のぞみ」と同じ色というのも面白いところでした。
N700Sの「かもめ」表示をご覧下さい。 pic.twitter.com/sc7WBFuJWu
— Rail Magazine(レイル・マガジン)【公式】 (@RM_nekopub) March 19, 2022
ちなみに明日3月20日は、一般の方から参加を募った公開イベントが開催されます。定員2600名に対して応募はなんと27000名だったとか。開業に寄せる人々の期待の高さが感じられます。なお、この車両基地の開業の暁には、隣接する大村線に珍しい「大村車両基地駅」も併せて開業する予定になっています。新たな鉄道ビュースポットにもなりそうで、今から楽しみですね。