text:RMM photo:羽田 洋(特記以外)
身近な情景でありながら、表現が難しいと言われるのが水の表現です。水自体は無色透明ですが、空の反射や水底の色、浮遊するプランクトンなど様々な有機物・無機物が合わさり複雑な色として見えています。一般的には青く塗って終わらせてしまう傾向にありますが、実は非常に表現しづらい色でもあるのです。今回は前回の「木とバラスト」の表現解説に引き続き、KATO製の情景素材を使ってどこまでリアルな水辺を作れるか検証していこうと思います!
前回の「樹木」の作り方と「バラスト」の固着方法を解説した記事はこちらで!
🔸お手軽にKATOの情景素材で「リアルな樹木」と「バラスト固定」に挑戦!
■様々な水表現素材
KATOでは、それぞれに合った水辺の様子を再現するため「ウォーターシステム」という製品群を用意。深い水辺を再現する「ディープウォーター」、川底・湖底の着色には「水底カラー」シリーズを、水面の波には「さざ波」「大波小波」シリーズ、さらに「波音カラー」シリーズ「白波カラー」と、きめ細やか製品を組み合わせることで、豊かな水辺の表現が可能なラインナップとなっています。以下では「水底カラー」シリーズと「大波小波」シリーズの使い方を紹介しましょう。
■「水底カラー」で深さを表現する!
- 水底カラー/ディープブルー 水底用の水性塗料。グリーン系の色や、ブルー系の色、ブラウン系の色など6種がラインナップされている。(写真:KATO)
- ベースには既に地面にグレーが、水辺には水色が塗られているが、これではリアルさは全くないと言っていい。
- 深くなっていく水底を再現するため、「水底カラー/ディープブルー」を塗る。ただしそのまま塗るのではなく、キッチンペーパーなどで水分を落とし、表面の凸面だけに擦り付けるように塗る「ドライブラシ」という技法を使う。
- 筆先に力を入れず、軽いタッチで塗面にぽんぽんと叩くように塗っていく。池の中心は色を濃く、端に行くにつれ薄くする。
- 水底カラーを塗り終わった池の底面。まだ色を塗っただけの感じが否めない。
- 水底カラーを塗った状態(手前)塗ってない状態(奥)を比較する。水面の表情は確かに出ている。ここから水底カラーが乾くまで周辺の情景作業を進める。
- ここでは水底カラーの応用として、水底カラー「ライトブラウン」を地面の下地塗りとして使う。ドライブラシで下地が透けて見える程度に塗る。
- これが水底カラー/ライトブラウン だ。本来水底用だが地面などにも使える。(写真:KATO)
■周りに「緑」を加える
水表現だけでもいいですが、今回取り扱っているベースが周りに岩肌や地面の表現があるものなので、草地の表現も同時で行ってみましょう。今回はKATOの「日本の草はら・ブレンド」と「繁茂・深雪ボトル」を使って草地を作っていきます。このボトルに専用パウダーを入れることで静電気が帯び、草を立てて植えることができます。
- 次に草地とする部分に、「草はら糊」を塗っていく。この接着剤は乾燥後ツヤが出ないので草地全体に塗ってもOK。ただし水面には塗らないように!
- 「日本の草はら・ブレンド」を「繁茂・深雪ボトル」に入れて、口を指で蓋をして上下に振る。こうすることで静電気が発生する。
- 「草はら」パウダーをボトルから撒くときは、ボトル内の空気が押し出るようにボトル中央部を押し込むようにする。
- ある程度ベースに撒かれたら、撒き残しが無いか様子を見て、ボトルを上下に振りながら、少しずつ撒いて調節する。
- さらに「日本の草はら・萌黄」をボトルに詰め替え撒くと、草時に色の厚みが出てくる。
- 「草はら」のパウダーを撒き終えたら、余分なパウダーを
- 特に水辺の部分はパウダーの染料が、後に塗る「大波小波」の塗料に溶け出してしまい変色させるので、丹念に刷毛で掃いておく。
- 繁茂・深雪ボトル 「日本の草はら」「深雪」のパウダー散布ボトル。中に専用パウダーを入れることで静電気を帯びて草を立てた状態で植えられる。(写真:KATO)
- 日本の草はら・ブレンド 「繁茂・深雪ボトル」を使うことで草を立てて植えることができる。
- 草などのパウダー固定用接着剤。乾くと接着面がツヤ消しになる。
■いよいよ水表現の本番へ!
- 大波小波 波の立体感を再現するジェル状の透明素材。このほか緩めの「さざなみ」がある。(写真:KATO)
- 透明ジェル状の大波小波は筆に取った時点ですくい取った形が残るくらいには硬めの素材だ。
- ベース状の水辺に大波小波の素材をまんべんなく広げてゆく。
- 筆の痕が残ってしまうと波らしくないので今度は筆先でポンポンと水面を叩くようにして波頭を立て、筆痕を消す。
- 水面の波が描けたら、今度は岩の上から流れ落ちる滝を表現するため、岩場の上にも大波小波を持っていく。
- 大波小波の応用例。クリアフォルダーなどツルっとしたものに帯状に塗り、半日ほど乾かす。
- 帯状に塗った「大波小波」が乾いたらクリアホルダーからゆっくりと剥がし取る。これによって透明な波の帯ができる。
- 透明な波の帯を先ほどの滝の上流と滝壺を結ぶように貼り付ける。元の大波小波の透明素材に馴染ませるように押し付ける。
- 透明な波の帯を先ほどの滝の上流と滝壺を結ぶように貼り付ける。元の大波小波の透明素材に馴染ませるように押し付ける。
- 周辺に人形や動物のフィギュア、柵などを配置する。地表部分と樹木との中間の高さとなるものを配置すると、空間に奥行きや立体感が増す。
- 完成した水辺の情景。波頭にさらにハイライトの白色を追加するとより良くなるが、これだけでも大波小波に光が反射し、滝の表面もリアルだ。池の底に塗ったディープブルーも実際に深くなっているように見える。
■水表現ジオラマに付着した埃を一掃!メンテナンスアイテム
水面の表現は性質上、わずかながら粘性を持つことが多いです。そのため保管していると徐々に埃が付いてしまい、これらを綺麗にするのは少し手間がかかるかと思いますが、専用の水面クリーナーを使うことで細かいところの埃もスッキリ取ることができます。
- 水面クリーナー スライム状のクリーナー。
- 「水面クリーナー」をケースから取り出す様子はまさに「スライム」。
- わずかに粘性を残す水面は、埃をかぶると簡単には取れない。クリーナーをペトペトすると込み入った箇所の埃もすっきり取れる。
- クリーナーは水面だけでなく、砂地や草地もクリーニングできる。もちろん砂や草の粉も多少は巻き込むが、数回であれば使用可能だ。
今回はKATO製品で様々な表現を一通り試してみました。皆さんもぜひ自分の好みに合った素材を使って、ステキなジオラマを完成させてみてくださいね!