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■空前絶後、オリエント急行が日本を走った!
「○月の鉄道のデキゴト」は、当月にあった過去の鉄道の「デキゴト」(路線の開通や車両の新製・廃車、そのほかの事件など)を振り返るコーナーです! ティーブレイクにでも気軽にお楽しみください。
▲雪の上越線を、EF58 61に牽かれて行く「オリエント・エクスプレス’88」。
‘88.12.25 上越線 上牧~後閑 P:山口貴巧(ムック『鉄道名車モデル&プロフィール EF58』より)
本日は、33年前となる1988年10月7日のデキゴトからの紹介です。世界的に知られる豪華寝台列車「オリエント急行」が、長駆パリからの旅を経て、この日、山口県下松港にて陸揚げされ日本の地を踏んだのでした。
▲エンブレムひとつとっても、伝統と格式に彩られた貫禄を感じる。
‘88.12.19 東北本線 上野 P:菅原智之(今日の一枚 Memoriesより)
この企画はフジテレビの開局30周年を記念し、日立製作所のスポンサードによって実行に至ったもの。インター・フルッグ社の保有する「NIOE(ノスタルジー・イスタンブール・オリエント・エクスプレス)」の車両が使用され、パリ~東京を、フランス、ベルギー、西ドイツ、東ドイツ、ポーランド、ソビエト連邦、中国、香港を経由するルートでツアーとして運行。まさにユーラシア大陸の東西横断、香港までの走行距離は14,700kmという遠大なものとなりました。途中ソ連では1,435→1,524mmへと台車を履き替え、中国入国前にまた1,435mmへと台車交換。そして日本到着後は1,067mm軌間のTR47台車へ履き替えるなどの工事が、スポンサーである日立製作所笠戸工場にて行われました。
▲国内では1,067mm軌間の台車であるTR47形(廃車となった旧型客車から取り外されて保管されていたもの)を履いた。
‘88.10.19 品川運転所 P:RM(台車近影より)
工事は10月16日までには完了し、翌10月17日広島発の便にてツアーを再開。翌日お昼前に東京に到着して、長い長いパリからのツアーはフィナーレとなりました。そしてこの後のオリエント客車は12月下旬まで国内のツアー列車として活躍、主要駅では公開イベントも催され、乗車できないまでも雰囲気を味わうことができた方も多かったのではないでしょうか。
▲編成の両端には、連結器の違いを解決するための控え車としてオニ23形(写真での機関車次位)、マニ50形(編成後端)という日本の在来型車両が連結されていた。
‘88.11.22 高崎線 本庄~岡部 P:采女 誠(今日の一枚 Memoriesより)
12月25日上野駅到着で日本での営業運転を終えたオリエント客車は、再度日立製作所笠戸工場にて復元工事が行われ、年明け早々にヨーロッパ直行の貨物船で帰って行ったとのことです。
世はバブル景気の時代、破天荒な企画を実行した関係者の熱量に、改めて驚きと敬意を表したいと思います。この時日本を走った車両のうち、No.4158DEのプルマン車は引退後、今は箱根のラリック美術館にて静かに余生を送っています。