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特集・コラム

9月の鉄道のデキゴト「貨物鉄道博物館開館(2003年)」

2021.09.24

text:RM

ボランティア運営による高密度の鉄道博物館!

 「○月の鉄道のデキゴト」は、当月にあった過去の鉄道の「デキゴト」(路線の開通や車両の新製・廃車、そのほかの事件など)を振り返るコーナーです! ティーブレイクにでも気軽にお楽しみください。

▲左を行く線路は三岐鉄道三岐線。この場所はかつて丹生川駅の貨物側線があった場所で、上屋をそのまま博物館の建物として利用している。
‘18.11.4 三重県いなべ市 貨物鉄道博物館 P:鉄道ホビダス

 今回は、18年前となる2003年9月15日のデキゴトから振り返ってみましょう。今も価値ある活動を継続している、三重県いなべ市の貨物鉄道博物館がこの日に開館したのです。

▲同館のシンボル的存在である39号蒸機は、イギリス・シャープスチュアート製で、現役最後を東武鉄道で迎えた後、長年東京の昭和鉄道高校で保存されていたもの。
‘18.11.4 三重県いなべ市 貨物鉄道博物館 P:鉄道ホビダス

 実はこの日に開館、というのはちゃんと意味があることで、というのも日本初の貨物輸送が1873年9月15日に開始されたと言われており、それから130周年という節目の日をターゲットに準備を進めてきたのでした。

▲貨車移動機に希少な2軸タンク車が4形式連なった、鉄道模型のような編成状態での展示。
‘18.11.4 三重県いなべ市 貨物鉄道博物館 P:鉄道ホビダス

 この博物館は三岐鉄道三岐線丹生川駅に隣接しており、実際同鉄道の多大なる協力・援助によって成り立ってはいますが、運営自体はボランティアの皆さんが担い、運営費用は一般の方からの寄付によって成り立っています。

▲巨大なシキ160を、ちっぽけなアント機が入れ換えている。本職顔負けのボランティアの方がこうした作業も行っている。
‘19.12.1 三重県いなべ市 貨物鉄道博物館 P:上野 徹(今日の一枚より)

 鉄道車両の保存車は各地に多数ありますが、どうしても貨車のそれは事例が少なく、あったとしても保存されていたというよりは放置されていただけ…いつ廃棄されても不思議ではない…といったものが多かったと思います。しかし鉄道史に占める意義としては貨車とて決して他に劣るものではなく、そういう状況に心を痛めていた有志が立ち上がったのがこの博物館プロジェクトであったと言えましょう。

▲開館15周年の時は、三岐鉄道の貨物列車に記念ヘッドマークも取り付けられた。
‘18.9.18 三岐鉄道三岐線 伊勢治田~丹生川 P:宮下幸市(鉄道投稿情報局より)

 開館時にはシンボル的存在である蒸気機関車39号のほか、8両の貨車が続々現地に集結。それが18年を経た現在では15両にまで(同館WEBサイトによる)増え、また会員の手によるたゆまぬレストア作業により、より完全な状態へ近づけた上での展示が行われています。

▲開館15周年に合わせて名古屋鉄道ト15が修復完了お披露目された時の記念写真。
‘18.11.4 三重県いなべ市 貨物鉄道博物館 P:鉄道ホビダス

 ボランティアによる運営ということから、開館は基本的に月に一度のみ。ここ最近はコロナ禍のためやむなく休館となる月も多かったようです。しかし貨物列車がお好きな方なら、この手作りの博物館に感ずるところきっと大なはず。世界にも稀であろう、貨物に的を絞った鉄道博物館は日本のレイル・ファンの誇りと言っても過言ではないでしょう。

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