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■土石流が一瞬で列車を飲み込んだ…!
「○月の鉄道のデキゴト」は、当月にあった過去の鉄道の「デキゴト」(路線の開通や車両の新製・廃車、そのほかの事件など)を振り返るコーナーです! 本日は史上の惨事にまつわる記事。お気軽に…とは申しません、教訓にしていただければと思います。
▲現在の根府川駅は2面3線。中線は試運転列車の折り返しなどで重宝される。
‘19.6.21 東海道本線 根府川 P:辻森章浩(今日の一枚より)
98年前となる1923年9月1日、あの関東大震災が発生しました。鉄道も各地で被災しましたが、その中でも最も大規模となってしまったのが、現・東海道本線根府川駅。進入中の列車が駅もろとも土石流の直撃を受け、海中まで転落。乗客や駅にいた人など、112名が亡くなったとされています。
根府川駅と言えば、小田原駅から2駅目。隣の早川駅あたりから車窓は海沿いのローカル風景になり、東京からの下り列車では「旅に出た実感」が感じられる駅でしょう。撮影派の方にとっても、名撮影地が近くおなじみの駅になると思います。しかし被災した時点ではまだ開業1年目という新しい駅でした。
▲「TRAIN SUITE 四季島」が早朝、出発を待つシーン。相模湾の朝焼けが美しい。
‘20.12.20 東海道本線 根府川 P:烏田倫宏(今日の一枚より)
そう、この時点での東海道本線は今の御殿場線回りであり、根府川駅は熱海線として延伸している途中、具体的には真鶴駅までの盲腸線にある一駅、という存在でした。しかし9月1日11:58頃、折悪しく駅に入線してきてしまった下り109列車はまず震災により脱線転覆。その後すぐに発生した地滑りによる土石流によって、駅舎やホームごと、あっという間に転落し、列車の大部分は海中に没したのでした。
▲根府川駅付近はサルの生息地でもあり、駅にもこうして出現することがある。
‘19.10.19 東海道本線 根府川 P:三田村 裕(今日の一枚より)
現在の根府川駅は、ホームから海を見下ろすとそれは素晴らしい景色です。しかし切り立つ崖から海岸線まで、遮るものがない急傾斜になっていることもよくわかります。天災の恐ろしさを継承し、正しく備えることが、先人の犠牲に報いることなのかもしれません。