text & photo:高橋 隆(特記以外)
さて、レイアウト・ジオラマの情景をさらに実感的に深みを出すために、今回は土と木と水表現の方法を紹介します。特に、ジオラマ製作をする上で外せないのが水表現。これがあるとないとではジオラマの持つ雰囲気が格段に違ってきます。難しい表現と言われるこれらですが、意外にも初心者でも簡単にできる方法も存在します。ぜひこの機会にマスターしておきましょう!
🔶前回の記事
ゴールデンウイーク鉄道模型ジオラマ入門!鉄道模型の要!レールを敷く
■土を作る
レイアウトに下地を塗って道路を作り線路を敷設、バラストを撒いたら次に土の表現を作ります。土を作るには、情景模型向けの専用素材を使用します。ここで一例として紹介するモーリン製「リアルサンド」は粉末状になっているのが特徴です。
- モーリンの土表現素材「リアルサンド」。珪砂を0.03~0.6mmの粉末状にしたもの。
- 使い方その1。手ごろな容器にリアルサンドとスーパーフィックスを適量入れます。
- ヘラなどで混ぜ合わせてリアルサンドをペースト状にします。
- ペースト状になったリアルサンドを任意の箇所に塗り付けます。
- 一晩ほど置いておくと乾燥し、表面がカチカチに固まります。
- 本製品は白に近い色合いから濃い茶色までラインナップされており、目的の表現に合わせて選べます。
- 使い方その2。リアルサンドは粉末のままでも使えます。まず地面の撒きたい個所に木工用ボンド水溶液を塗ります。
- 指でリアルサンドをつまんで、ボンドの上にパラパラと少しずつ撒いていきます。
- 道路と線路を除くほぼ全体にリアルサンドを撒いてみたテストピースです。ペースト状にした時とはまた別の質感となるのが分かります。
- 使い方その3。リアルサンドを他の粉末系素材とブレンドして撒くのもOK。
- 左写真の素材でブレンドしたリアルサンドを地面に撒いて乾燥させた様子がこちら。
■草木を表現する!
土の表現に続いて、今度は草木の表現をしてみましょう。草木は大きさが千差万別ですので、小は粉末から、大は樹木の模型まで、各種が発売されています。
- 草木素材その1 ターフ:着色されたスポンジを粉末状にしたのがターフです。草木の表現素材では最小の部類に入ります。草地を作るのに便利です。
- 草木素材その2 コースターフ:ターフと同じくスポンジでできた素材で、こちらはサイズはやや大きめ。それほど背の高くない植え込みや草むらに適しています。
- 草木素材その3 フォーリッジ:細かく砕いたスポンジをネットに固着させたものがフォーリッジです。その特性を生かしてツタなどの表現をすることが可能です。
- 草木素材その4 フォーリッジクラスター:砕いたスポンジが一塊になっているのがフォーリッジクラスター。樹木よりも背の低い植物全般をカバーする素材になります。
- ターフとコースターフを地面に固定するには木工用ボンド水溶液を使います。
- ボンドを染み込ませた箇所にターフやコースターフを撒いていきます。コースターフは指で押して圧着させると地面との食いつきがよくなります。
- 今度はスーパーフィックスでコースターフを固定します。まず原液のスーパーフィックスを塗ります。
- 続いてコースターフを塗布面に押し付けるように置いていきます。
- 今度は水で薄めたスーパーフィックスを上から垂らし、コースターフに染み込ませます。
- フォーリッジは山の表面にスーパーフィックスを塗り、ちぎって貼ります。フォーリッジは広い面積を一気にカバーすることができる上に、繊維状の特性を生かしてツタの表現ともできます。
- フォーリッジクラスターも同様に、スーパーフィックスを塗った山肌に置いていきます。
- 付け終えたら、薄めたスーパーフィックスを垂らして固着させます。
- フォーリッジではカバーしきれない大きさの植物は、樹木の模型で再現します。樹木は各メーカーから多くの種類が発売されています。写真は「ポポンデッタの樹木」シリーズ。
■水面を表現する その1
レイアウト・ジオラマに盛り込むと断然楽しいのが、海や川、池といった水の表現です。本格的な水の表現はやや高度な技術が要求されますので、まずはシンプルな方法で水面を作っていきましょう。
- 水面を表現する板(トミーテック製)というものが模型店で販売されています。
- 板をカッターナイフでテストピースの大きさに切り出して、両面テープで貼り付けてみた例。光の当て方によっては相当リアルに見えます。
- ごく一般的なニス(黄色くないもの)を使っても再現が可能です。
- アクリル絵の具で適当にグラデーションを付けたテストピースに、ニスを普通に塗ります。
- 乾燥させて、できあがった状態です。澄み切ったコバルトブルーの海、とまではいきませんが、簡易的な表現と割り切ればニスでも十分な効果が得られると言えます。
■水面を表現する その2
さて、簡易的な方法をまずご紹介しましたが、少しジオラマ製作に慣れてきたら次は専用素材を用いてさらに本格的な水表現にチャレンジしてみましょう。
以下ギャラリー画像にてじっくりと順を追って解説していこうと思います。
P:羽田 洋・RMM
- 情景用素材「リアリスティックウォーター」、「ウォーターエフェクト」「グレインペイント」を使った川の作り方を見ていきましょう。
- ベースとなるのはプラスタークロスを貼った板。地面を眺めてどんな川にするのか考えます。
- 白い地面をアクリル絵の具の黄土色で塗っていきます。
- 水深の浅い川底は灰色っぽく見えることが多いため灰色で塗り、指でこすってアクセントを付けます。
- 薄い色を最初に塗って徐々に濃くしていきます。川底が深い部分は灰色を濃くします。
- 河底が塗れました。ただしこの段階ではまだ川には見えないですね。
- 水面の色となるアクリル絵の具の緑色を乗せていきます。ごく浅い部分は灰色を残しておきます。
- 川の輪郭を始めに塗って、段々と塗りつぶします。
- 深い部分にもう少し濃い緑を乗せてみました。左側の岸付近では水流が早く比較的水深が深くなると想定して、濃い部分を左に寄せています。
- アクセントに石膏で作られた大きな岩をひとつ、中洲の先端に配置します。
- 浅瀬の部分はさらにスポンジを使って輪郭をボカシていきます。
- 薄い緑色を川の輪郭に乗せて、浅瀬の感じを出してみました。
- 水面を描き終わったら、今度は地面に河原の砂利を乗せていきます。時間短縮のため、今回はスプレーのりを砂利に乗せる部分に吹きます。
- 砂利は細かいものと比較的大きいものがあり、最初に細かい砂利をスプーンで慎重に乗せていきます。
- 中洲に位置決めしておいた岩はゴム系接着剤で固定します。
- スプーンで大まかに砂利を撒いた後は、筆で均していき、のりに砂利が粘着するようにします。
- 岩に灰色を混ぜた黄土色を薄く塗って、指で絵の具を拭います。
- 絵の具を拭うことで、隙間や凹みだけに絵の具が残り、岩が立体的に見えるようになりました。
- 水面との境にある岩は濡れているはずです。そこで、薄い灰色の絵の具で岩の上を塗ってみました。
- スプレーのりをまた吹き、両岸にターフなどを撒いて草木を表現します。
- 水の流れを凹凸で表現するための専用塗料「グレインペイント」を塗っていきます。
- これは水面の光沢を出す「リアリスティックウォーター」を塗ったサンプルです。右から左へ行くほど塗り重ねが多くなっています。4度塗り程度が丁度いいようです。
- グレインペイントは最初は白く濁っていますが、しばらくすると透明感のある色になります。
- 「リアリスティックウォーター」を塗っていきます。時間をかけて4度塗りしました。
- 「ウォーターエフェクト」を塗ります。岩の部分は波を高く粗く、水深の浅い部分は静かに波打つように塗りました。
- ウォーターエフェクトは乾燥すると透明になるため、波が白くなるような部分には少しタミヤの「情景テクスチャーペイント 粉雪」で色を付けます。
- 各所に人形を置いて作業完了。流れのある川の情景ができあがりました。
さて、レイアウト・ジオラマ製作の基礎は以上になります。今回はあくまで一例として様々な技法を紹介しましたが、まずはこれら基本に則って、自分が無理なくできそうでかつ、やってみたいという題材から考えて作品製作に着手してみてはいかがでしょうか?