特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:3-4 銚子電鉄 笠上黒生駅(髪毛黒生)

2021.04.11

取材日:’21.2.25
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジンで好評連載中の「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介しております。発売中の2021年5月号の連載第3回では銚子電気鉄道を取り上げました。このWEB編ではその補完記事を週刊でお届けします。今回は路線のほぼ中央に位置し、唯一の上下列車交換駅でもある笠上黒生(かさがみくろはえ)駅を見ていきましょう。

▲路地を抜けたところにひっそり建っている、笠上黒生駅の駅舎。

 まずはネーミングライツによるユーモラスな愛称に触れないわけにはいきません。それは…「髪毛黒生(かみのけくろはえ)」。元の駅名の「黒生」の部分に引っ掛けた、薄毛に悩むすべての方の願い(筆者も例外ではなく…)を託したものとなっています。ネーミングライツはスカルプケア&ヘアケアアイテムの製造販売を行う(株)メソケアプラスが取得しており、やはり直接的なCM効果を狙うのではなく、こうした本業にも絡む話題性を提供することで鉄道を支援していきたいという狙いがあるとのこと。

▲「髪毛黒生」の愛称が記された駅名板と、ネーミングライツ取得者の広告看板。

 さて、運行上の要衝であり終日駅員配置もあるこの駅、ちょっとした駅前広場くらいあるのかな?と思いきや、むしろぼんやりしていると「どこに駅があるのかさっぱり分からない」立地にあります。幹線道路から外れた生活道路の電柱に駅入り口の看板が設置されていますが、それが示す道は未舗装の細い路地。しかもまだ駅や線路が見えるわけでもなく、不安に駆られます。奥まで入ると、見えていた小ぶりな建物が駅のトイレであることがわかり、突き当りで右を向けば、古風な木造の駅舎が建っているのです。

▲住宅地とキャベツ畑の中、唐突に「路地に入れ」と指示を出す駅入り口看板。

▲その路地は細く未舗装で、まだ線路や駅舎は見えない…。

▲終日駅員配置があり、待合室も掲示物などで盛沢山。

 この駅舎は妻入りの切妻様式であることや規模感から、外川駅のそれにやや似ています。駅舎の建造年代は不明ですが、もし駅開設当時のものとすれば1925(大正14)年築ということになり(路線開通時ではなく、12年ほど遅れての開業)、もうすぐ100年を迎えることになります。コンクリート製で角にRがついた階段を4段上った位置に駅舎とホームがあり、ホームに立てば意外に開けた印象になるのは少し不思議です。

▲ホーム側から駅舎を見る。飲料自販機や鉢植えで賑やかな印象。差し掛け屋根は外川駅のそれよりは小ぶりだ。

▲木製のラッチ。このほぼ灰色の塩梅は、模型でも木造建築物を作る際に意識しておきたい。

▲駅舎本屋に接している転轍機小屋。

 駅舎は外川駅と同様、下見板が維持されて大き目の差し掛け屋根を持ちます。木製のラッチが残されていて、その周囲に鉢植えの花や植木類が多数並べられているのも和みポイント。駅舎の入り口と反対側に接して転轍機小屋がありますが、実際にはポイント類はスプリングポイント化されているため、既にレバーは用をなしておらず、事実上物置になっているようです。

▲駅の銚子方にある構内踏切(昔からある方)。奥側に見えるホームは、スロープを廃してホーム延長した形跡がある。

▲銚子行きホームの裏手。構内踏切からのスロープは、車椅子の方の便宜を図って傾斜が緩いものとなっている。

▲外川方に比較的近年設置された構内踏切は、スロープの角度が急だ。

 ホームは対面式の2面2線で、駅舎が接しているのは外川行きのホーム。少々意外ながらホームの両側(銚子方と外川方)に構内踏切を持ちます。以前は銚子方だけでしたが、2010年に2000系導入のためホームを延長する必要が生じ、それに付随して銚子方はホームの背後に緩いスロープを設置(車いすでも上り下りが容易なように)。外川方の構内踏切は、少しスロープの角度がきつく、健常者がより短距離で移動できるようになっています。

▲外川行き電車の入線シーン。駅員さんがその都度立ち会っている。

▲外川行き電車の発車シーン。

 取材時はコロナ禍のため終日1運用の減便ダイヤとなっており、当駅での列車交換を見ることができなかったのが残念ですが、交換を行う場合は当駅にてタブレットの交換が行われます。また交換の有無に関わらず、駅員によるホームでの立ち合いも行われており、当駅ではやや長めの停車時間が取られています。

▲銚子行きホーム上にある待合室。外壁も最近リニューアルされたようだが…。

▲室内はビックリ! 昔の客車風の内装になっている。

 銚子行きのホーム上にはリフォームしたばかりの待合室があり、中を見て少々びっくり。大正時代の客車をイメージしたのであろう、室内調度とモケット張りの座席があり、ご丁寧に天井が丸屋根風に仕上げられています。外観とのギャップが面白いので、行かれた際はぜひ見てみてください。

▲銚子行きホームの裏手の側線に留置されている、ユ101。

▲土に還りつつある…という感を抱く。

 レイル・ファンにとって、当駅のたまらない魅力のひとつが、銚子行きホーム裏手の側線。廃車が放置気味に置かれていることで有名で、現在はトロッコ客車ユ101「澪つくし号」がだいぶ荒廃しながらも原形を留めております。

🔶レイル・マガジン2021年5月号(448号)新刊情報

 

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