実演・本文:瀧口宜慎
photo:佐々木龍
近年は、スマートフォンによる運転操作やサウンドシステムなど、デジタル機器の普及と発展により鉄道模型の世界でも今までにない楽しみ方が広がってきてきます。そんな中、KATOからユニトラック用の興味深いスイッチが発売されました。今回はこの「逆転・給電スイッチ」の活用法を掘り下げてみたいと思います。
■今までのフロアレイアウトにプラス!広がりあるNゲージ運転
このKATOユニトラック用 逆転・給電スイッチは同社のターンテーブルに合わせて登場しました。この2種類のスイッチはターンテーブルに使う以外にも、工夫次第でフロアレイアウトにも応用ができ、入換やループ線といった電気的に複雑となりがちな運転が比較的簡単に可能になりました。
外観はベーシックですが、昔ながらの固定式レイアウトで配電盤を通して操作していたような複雑なキャブ・コントロールを手軽に楽しめるようになるスグレモノです。
■ユニトラック 逆転スイッチでループ運転を楽しむ!
実物ではヨーロッパの路面電車の終点などが似合うループ線ですが、写真は単純化した線路配置としました。以下、ギャラリー画像にて順を追って解説します。
- まずは、逆転スイッチの用意とともに忘れてはいけないのが絶縁ジョイナー。ポイント線路のループ線側を黒い絶縁ジョイナーに交換して、ループ内を電気的に独立させます。
- 逆転スイッチをFORWARD(前進)に入れ、パワーパックの逆転レバーも前進に。スロットルを回してループ線に列車を進入させます。
- ループ線を列車が通過中にパワーパックは操作せず、逆転スイッチをREVERSE(後進)へ切り替え、同時にポイントスイッチも操作します。
- 列車は止まることなくループ線から本線に進入。これでループ線内の一連の運転は完了します。
- このループ線の配線概念図。単純な配線でループ線を楽しむことができます。
■ユニトラック 給電スイッチで機関車の重連を楽しむ!
次に、側線に停車させた貨物列車に対し、引上線に待機していた補機を前方に連結する(上写真の状態)までの運転を給電スイッチと絶縁ジョイナーで再現します。写真の紫の矢印の位置(2か所)が絶縁ジョイナーの箇所です。
- まず、本線からの貨物列車が到着。絶縁ジョイナー手前ギリギリに停車(黒いジョイナーの位置)させます。
- 給電スイッチをOFFにします。これにより本線内の給電が閉じられ、側線の一部と引上線部分のみ通電されます。補機の待機する引上線のポイントのみを開きます。
- 停車中の貨物列車に向けて、補機を引上線から発車させます。
- 補機を貨物列車に連結。列車は重連状態となります。ここで逆転スイッチを再びONにして、ポイントを本線側に開きます。
- 重連となった貨物列車が本線に向けて出発し、一連の機関車の操作は終了です。
- 重連運転引上線レイアウトの配線概念図。絶縁ジョイナーを適宜組み込むことで複雑な運転を可能にしています。
■ユニトラック 給電スイッチでダブルクロスポイントを渡って引上線を楽しむ!
最後に、ダブルクロスポイントを組み込んだ引上線で折り返し運転をしてみようと思います。KATOのダブルクロスポイントは、ポイント中央部を境に全方向が絶縁されています。そのため複数の給電スイッチを使い、引上線にも給電しダブルクロスポイントを有効活用します。今回はJR金沢駅や小田原駅、私鉄では阪神尼崎駅、東急中目黒駅など多くの駅構内で見られる線路配置をプロトタイプとしています。
- まず、対象とする引上線の給電スイッチをONにし、到着ホームの回送列車を引上線へ向けて発車させます。
- 引上線に入れた列車(683系)。ここで給電スイッチはすべてOFFに、そして逆方向の本線用のパワーパックにメインのコントロールを変え、そのパワーパック付帯の給電スイッチをONにします。
- 引上線から出発ホームへ向け回送列車が出発。ダブルクロスポイントを渡っていきます。
- 出発ホームへ回送列車が到着。引上線への給電スイッチをOFFにし、ここからはメインの出力で本線列車として出発して行きます。
- 引上線の全景。複線エンドレスの途中駅に組み込む前提としています。ダブルクロスポイントは絶縁されているので、絶縁ジョイナーを組み込む必要はありません。ダブルクロスポイントに給電スイッチを組み合わせると、いろいろ広がる運転が楽しめます。
- これらの発展形となるダブルクロスポイント引上線の配線概念図。これまでのとは違いかなり複雑な配線となってしまいましたが、その分線路を切り換えて車両を操作する楽しみは今まで以上に味わうことができるでしょう。