取材日:’21.2.25
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル
レイル・マガジンで好評連載中の「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介しております。3月19日に発売となった2021年5月号の連載第3回では銚子電気鉄道を取り上げました。このWEB編ではその補完記事を週刊でお届けします。今回は前回の外川から上り方向へ進み、犬吠、君ヶ浜の2駅を見ていきましょう。
▲犬吠駅に停車中の銚子行き3000系電車。
●犬吠駅(One Two Smile OTS 犬吠埼温泉)
「日本一早い初日の出」が見られるとして全国的に有名な犬吠埼灯台の最寄り駅。銚子遊覧鉄道としての最初の開業時の終点で、その時の駅名は「燈台前」でした。ネーミングライツは旅行会社の沖縄ツーリスト(株)が取得しており、その企業キャッチコピー「One Two Smile」を愛称として冠しています。「One=ワン」と、「犬吠、つまり犬の鳴き声=ワン」を掛けているのだそうです。
▲銚子電鉄随一の規模を誇る犬吠駅駅舎。写真右手前にあたる位置にかつて電車レストランがあった。
▲愛称名が記された駅名板(「OTS沖縄ツーリスト 犬吠埼温泉」と記載されている)。
当駅の駅舎は路線中最大規模の建物で、その意匠はポルトガルの宮殿風となっています。これは1990年代に、当時の親会社であった内野屋工務店が推進した「ユネスコ構想」と呼ばれる観光路線化政策によって新築されたもの。他に観音駅、君ヶ浜駅がこの時に同構想によって建て替えられています。この時期、電車も塗装変更され(外川駅保存車のデハ801はこの時の塗装)、ゴリラのマスコットキャラクターが描かれていました。
▲ホーム背面の壁に開けられたゲート部には洒落たフォントの駅名表示がある。
駅舎は2階建てで、土産類の物販が充実。また、かつて観音駅の名物であったたい焼きは現在は当駅で販売されています(取材時は既に営業終了していました…)。中井精也さんの鉄道写真も展示されておりました。
▲駅舎内も凝った意匠が施され、見どころが多い。
この駅が今の建物になった時は駅前広場に電車の車体を使ったレストランがありましたが、既に撤去されて久しいのは残念です。とはいえ、その撤去の後に老朽化が進んでいた駅舎はリフォームされ、再度観光地の玄関としてふさわしい姿を取り戻しています。
▲駅舎から見たホーム背面の壁。壁画が描かれリゾート気分を演出している。
ホームにも駅舎と意匠を合わせた壁があり、鄙びた他の駅とは明らかに雰囲気が異なるのが楽しいところです。
●君ヶ浜駅(ロズウェル 君ヶ浜)
▲ローマ帝国の遺跡…という感を抱かせる君ヶ浜駅。
2018年度の1日平均乗車人員13人という小駅。ネーミングライツはIT企業の(株)MIST solution(ミストソリューション)が取得。「ロズウェル」とは「UFOが墜落した?」ということで有名な米国の地名から取られています。銚子市も実はUFOの目撃証言が多く、UFOでの町おこしを図っているところからの命名です。
▲愛称名が記された駅名板。
▲シュロの木が植えられ、南国ムードが漂う。
前述の通り、内野屋工務店傘下の時代に、3連アーチを持つイタリア風の白亜のゲートが建てられ面目を一新していましたが、現在は老朽化のため柱を残して撤去済。その4本の角柱と駅の規模に比して立派なタイル張りの階段が異彩を放っています。周囲は木々が生い茂っており、トワイライトな時間帯に宇宙人が現れるような想像にも浸れる雰囲気です。
さて、銚子の観光名所のひとつ、「地球の丸く見える丘展望館」(犬吠駅から徒歩15分)からは、君ヶ浜~犬吠間を行く電車を俯瞰できます。200mm以上の望遠レンズで覗くと、太平洋をバックに走る小さな電車が撮影できるでしょう。銚子電鉄と海を絡めて撮影できる貴重なポイントです。
▲銚子電鉄の電車とキャベツ畑、バックに太平洋。
▲視線を転じると犬吠埼灯台が。