製作・本文:瀧口宜慎
photo(特記以外):羽田 洋
タンク車やホッパ車などとは切っても切れない関係の地上設備である貯蔵タンクは、長年製品に恵まれず、海外製のキットなどに頼るしかありませんでした。
そんな中、新進メーカーのPLUMから2020年、工業地帯シリーズ第1弾として貯蔵タンクが発売されました。今回はこの待ち望まれた製品を使って石油輸送の中継地点である油槽所と、セメントの中継所となるセメントサービスステーションを製作したのでご紹介します。
■油槽所を作る
冒頭でも触れましたが、油槽所とは船で輸入される石油を港のある臨海部から鉄道タンク車で運び出し、タンクローリーに積み替えて移動先である各地のガソリンスタンドや取引先へと分配するための中間貯蔵施設です。
貯蔵タンクは円筒型のタンクがほとんどで、取扱量に応じてその大きさは異なります。タンクの塗色は、近年では周辺環境に配慮したライトグリーンや薄水色、白色などが多いようですが、工場地帯などでは銀色のものも、さらには空港や航空機が近くを行きかう工場施設などでは紅白のチェック模様で注意を喚起する塗色もあります。
ここでは、過去に製作した油槽所の今ひとつ納得のいっていなかった塩ビパイプ製貯蔵タンクをPLUMの貯蔵タンクに交換してみました。
🔶ベースとなったジオラマの製作記事はこちらから!
フロアレイアウトにも組み込める!油槽所ミニジオラマ
タンク本体は若草色で屋根はグレー、手スリは銀色の塗装としました。付属品の配管類は道路などをオーバーパスするための櫓も入っているため、少々派手目に立体化してみました。このような上下にパイプが走るのは、化学プラントではよく見られるのですが、石油貯蔵タンクでは事故防止の上からアップダウンは最小限にしている場合が多く、足をカットして低い櫓とした方がそれらしいかもしれません。
- 油槽所には必需品の円筒型貯蔵タンク。配管類も相まって、石油施設らしさを醸し出している。
- PLUM工業地帯A(貯蔵タンク)。大小各1個のタンクと配管のキットで、鉄道模型以外でもミリタリーや特撮モノのジオラマにもおススメ。(写真:浅水浩二)
- 貯蔵タンクの裏側には石油の出し入れ用のパイプが組み込まれ、タンク周辺の密度感を増している。
- 貯蔵タンクにはトラス状の櫓も付属する。ここでは築堤状の防油堤を超える箇所に使用した。製品そのまま使うとパイプのアップダウンが激しくなるので、作例よりも低く加工するとよりリアルになるだろう。
- タンクへの配管取り回しを裏側から俯瞰で見る。
■セメントサービスステーション
ひと昔前にはセメント包装所などとも呼ばれていたもので、石油と同じく石灰石の採れる鉱山周辺のセメント工場からホッパ車で各地のサービスステーションまで運ばれ、ここで砂・砂利(骨材)と水を混ぜ生コンクリートを生成し、ミキサー車で各地の建設現場に運び込みます。この施設にはセメントサイロ、砂利、砂の骨材サイロ、そしてそれらを混ぜ合わせるミキサーと、ミキサー車へ流し込むホッパの施設が基本となります。ここでは、背の低いタンクを使いコンクリート製の骨材サイロとして見ました。
私は、このサイロがセメントサイロと思っていたのですがよく調べてみると、これは骨材を湿気から守り保存する場所で、セメント用はより一層湿度から守るために金属製の円筒タンクが使われているようです。塔のような建物のホッパや、貨車からの荷下ろしのための建屋は、2種類の波目板を使い自作しました。
- 塔のような生コンプラントのあるセメントサービスステーション。
- セメント需要の減少と自動車による輸送で、その数を急激に減らしている鉄道沿線のセメントサービスステーション。鉄道輸送こそ行われていないが、今なお現役の実物もあるので観察しておくのも良いだろう。
- 中心的存在といえる生コンプラント塔は南洋物産の「A4サイズ・ピッチ0.5の筋目板」を素材に自作したもの。
- 奥に設置した細い円筒型のタンクがセメントサイロ。本体はプラスティックボトルを流用し配管は「貯蔵タンク」付属のものを使用している。
- ホッパ車からの荷下ろし用の建屋は南洋物産の筋目板を使用した。線路は荷役用と機回し用の2線を用意。
- セメントプラントの真俯瞰。中央のグレーの円形部が骨材サイロ、黄緑の小さな円形のストラクチャーがセメントサイロとなる。
- 骨材サイロと生コンプラント塔を結んでいるのがベルトコンベアで、黄緑色の波板に囲まれているのを再現。こちらはエバーグリーンの「ボード・バテン・ピッチ1.8」を素材に自作している。
- 骨材置き場。ダンプカーで運ばれた砂利・砂を一時的に置いておく場所。骨材はホイールローダーによって、ベルトコンベヤで骨材サイロに送り込まれる。
- セメントサービスステーションに佇む専用線のスイッチャーとセメントホッパ車。徐々に整備と整理が進む全国の鉄道貨物施設だが、模型だからこそ、こんな風景を手許に残せる楽しみがあるといえるどだろう。