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特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:2-5 東武日光線・鬼怒川線 大桑駅

2021.02.27

取材日:’20.12.21
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジンで好評連載中の「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介しております。発売中の2021年3月号では東武鉄道日光線・鬼怒川線を掲載し、WEB編ではその補完をしていきます。前回で日光線の散歩を終わらせ、一度今市市街地へ戻り、今度は鬼怒川線へ。その大桑駅を見ていきましょう。

▲大桑駅の駅舎は小ぶりなプレハブ建築。

…と、その前に、方向は見当違いなのですが貴重な東武車両の保存車が近隣にあるとのことで寄り道。下今市駅の裏手を走るバイパス沿い、駅からは2kmほど離れていますが「日光のけっこう漬本舗 森友バイパス店」に、2両の機関車が静態保存されているのです。しかもその1両は東武の凸型電機、ED4011! 「東芝戦時型凸電」と呼ばれるグループで、東武には4両在籍したうちの1両です。もう1両の小さい方は、協三工業製の貨車移動機。2両とも現状での状態は比較的良好ですので、お土産購入がてらの見学もお勧めいたします。

▲バイパス沿いに忽然と現れる、腕木式信号機と黒い凸型電気機関車。

▲貨車移動機は店舗すぐ横に展示中。

 さて大桑駅です。鬼怒川線の起点・下今市から2駅目となる小駅で、島式の1面2線のホームを持つ交換駅。開業は1919(大正6)年と古く、軽便鉄道の下野軌道の駅としての開業でした。起点である下今市駅はその10年後の開業…というのは一見不思議ですが、下野軌道時代の起点は国鉄日光線に接する新今市駅でした。その後、東武日光線開業時に下今市駅も開設され、鬼怒川線も経路を変更して同駅に乗り入れた歴史があります。なお、762→1,067mmへの改軌は下今市駅へ乗り入れた1929(昭和4)年と同時で、大桑駅のホームはこの時に新設されたもののようです。

▲入線してきた6050系下り普通列車を、跨線橋から見下ろす。

▲踏切から、カーブしているホームを見る。ホーム側壁が玉石積みになっていることがわかる。

▲玉石積盛土式部分のアップ。

 この駅の最大の見どころは、国の登録有形文化財にもなっているホームそれ自体です。側壁が「玉石積盛土式」と呼ばれる様式で、丸みのある石を積み上げ、セメントで埋め固めたようになっています。下今市駅にも同じ様式のホームがあったように、鬼怒川線の各駅にはこの様式が多く残されており、地域の鉄道敷設の歴史を今に伝える建造物であると評価されているのです。

▲駅舎裏手の様子。「いかにも」な位置に、構内踏切の階段の痕跡(?)がある。

 当駅は無人駅ですが、駅舎の建物は存在します。簡素な昭和のプレハブ建築で、1973年までは駅員が配置されていました。この建物が建っている土地の嵩上げも玉石積盛土式にて行われ、かつての構内踏切跡ではないかと思われる階段の痕跡も見つかりました。

▲簡素ながら、実はかなり複雑な形状の跨線橋。島式ホームから線路のどちら側にも下りられるようになっている。

 ストラクチャーファンには跨線橋も見逃せません。こんな小駅にして、こんな複雑な跨線橋があるのですから「シーナリー散歩」はやめられないのです。複雑になる要因は下記の通り。

1 跨線橋は駅舎側だけでなく、その反対側にも通じている。つまり線路の両側に階段を有している(無人駅なので駅舎を通過する必要がない)。

2 駅すぐ横を斜めに横切る踏切があり、鉄道敷地の関係で跨線橋も一部斜めに角度がついている。

3 ホームに降りる中央階段の部分で、通路が折れ曲がっている。

 跨線橋自体は、密閉型ではなく「屋根のついた歩道橋」という感じの簡素な造りなのですが、もしも模型でこれを忠実に作るとしたら相当綿密な設計をしないとガタガタになってしまうでしょうね。

▲駅舎斜向かいに位置する雑貨店にて、切符の販売が行われている。

▲歴史を感じる、きっぷ発売所の看板。

 さて、この駅には切符の券売機などはなく、駅前の雑貨店に簡易業務委託がされています。「東武鉄道きっぷ発売所」の電照看板は見逃せませんね。残念ながら入場券の扱いは無いとのことでした。

🔶レイル・マガジン2021年3月号(447号)新刊情報

 

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