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特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:1-5 御殿場線 松田駅

2021.01.02

取材日:’20.10.27
text & photo(特記以外):羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジン2021年1月号から新連載となった「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介して参ります。連載第1回でお送りしているのは、JR東海の御殿場線。そのWEB編5回目では、前回の山北駅から2駅上り方向へ進んだ松田駅を見ていきましょう。

▲松田駅1番線に停車中の上り「ふじさん」。当駅で運転士も小田急社員に交代する。

 この駅も、同線開業時(1889年)に、当初から開設された歴史ある7駅のうちの一つ(本連載で既に取り上げた御殿場・駿河小山・山北も同)。酒匂川とその支流・川音川の合流点に近い、古い宿場町です。この駅は御殿場線の中間駅の中で唯一他の路線との接続がある駅でもあります。駅の国府津寄りで小田急小田原線と立体交差しており、その新松田駅とは至近距離で乗り換えが可能なのです。歴史は無論松田駅の方が古く、新松田駅の開業は松田駅に遅れること38年。ちなみに地形の都合からか、後からできた小田急線の方が立体交差で下側になっているのがちょっと不思議な構造ではあります。そして当駅から東京方面へは圧倒的に小田急利用の方が便利ということもあり、駅の規模としては新松田駅の方がはるかに大きく、乗降客数で言うと1日平均で松田駅が3,000人強なのに対し、新松田駅は22,000人強となっています。

▲イラスト:遠藤イヅル

▲当駅2・3番線と1番線はずれた位置関係にある。この写真は2番線から見たもので、実際にはこのホームは背後方向にまだ長くつづいている。

 当駅の見せ場は、特急「ふじさん」が通る小田急線~御殿場線との連絡線の模様。これは戦後1955年に完成したもので、上り列車の場合、松田駅1番線から左急カーブ&急勾配を下りて小田急線の上り線に合流するもの。松田駅ホーム2・3番線からはその模様をよく観察することが可能です。古くは気動車準急「銀嶺」「芙蓉」、電化後はSSE(3000形)やRSE(20000形)による「あさぎり」、現在はMSE(60000形)による「ふじさん」が日常的に運転されており、全国的にも貴重な事例と言えましょう。

▲連絡線に入っていく「ふじさん」を見送る。かなり急カーブであることもわかる。

 駅の構造としては、2面3線のホームを持ち、うち北側の本屋に面した1番線が前述の通り特急「ふじさん」専用(上り・下り共)のホーム。そこから跨線橋で渡った2・3番線が御殿場線普通列車用の島式ホームで、1番線よりも国府津寄りにずれた位置にあるのも特徴。そして例によって非常に長いホームの国府津方先端に下り階段があり、小規模な南口駅舎につながります。つまり北口の本屋と南口では高低差があるわけです。この南口駅舎は道路を挟んで小田急線新松田駅と至近距離となっています(逆に北口から出てしまうと相当大回りをしないと新松田駅には辿り着けない)。

▲北口の本屋は建て替えられたばかりで、印象的なデザインとなっている。

▲小ぢんまりとした南口駅舎。振り返った位置に小田急線新松田駅がある。

▲小田急線新松田駅は乗降人数も多い中規模駅である。

 北口本屋は長年クラシックな木造駅舎でしたが、2015年にデザイン性の高い現駅舎に建て替えられました。松田山をイメージした三角屋根と樹木の色をイメージしたのであろうブラウン系の彩色で明るい雰囲気を持っています。

▲松田駅の国府津寄り、川音川鉄橋を渡る313系。よく見ると複線用の橋脚に単線のガーダーが1本だけ載っている構造。

▲橋の反対側から見る。「二の字」状の補強はD52形を通す際に取り付けられたもののようだ。

▲橋脚上部が半分空いている様子を、至近距離で観察できる場所となっている。

 さて前述の通り、この駅の国府津寄りすぐ近くに川音川が通っており、鉄橋がありますので寄ってみましょう。この鉄橋は複線時代の幅広の橋脚が残されており、それを間近で観察できるのです。元の下り線が維持され、上り線であった部分はぽっかり空いています。このガーダー橋は1929年製とされており、東海道本線としての末期に設置されたことになります。

🔶レイル・マガジン2021年1月号(446号)新刊情報

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