特集・コラム

JCIIフォトサロン 薗部 澄 作品展「鉄路と郷愁」

2020.12.10

取材日:’20.12.1
text & photo:羽山 健(RM)

 東京・半蔵門のJCIIフォトサロンにて、2020年12月1日~24日、写真家・薗部 澄さんの作品展「鉄路と郷愁」が開催中です。

▲全作品モノクロ、会場中央部には使用機材や著書の展示コーナーも。

 薗部 澄さん(そのべ・きよし、1921~1996)は別に鉄道専門ではなく、岩波写真文庫などでの活躍で知られる一般分野のプロカメラマンです。日本各地の生活文化や人々の日常を撮影し続けることをモットーとし、「旅の写真家」の異名でも呼ばれました。来年2021年が生誕100周年となることを記念しての写真展となります。

▲地下鉄半蔵門駅から徒歩1分以内、JCIIビル1Fにフォトサロンがある。

 今回の作品展では、薗部さんが各地へ取材紀行する中でおそらくはスナップ的に撮影されたのであろう鉄道の情景が一堂に集められています。どのカットも人々の暮らしと共にある鉄道というのが大前提のようで、レイル・ファンが排除しがちな通行人の姿や邪魔な電柱など、逆にそれらが意識的に写し込まれているようです。これによって、今見るとひときわ濃厚に当時の情景が蘇ってくる作風であると感じました。

▲各写真のキャプションは、フォトサロン専属スタッフでレイル・ファンの方が執筆されているとのこと。

 撮影年代は1950年代初頭~1990年代初頭、撮影エリアは北海道から九州までと幅広いですがすべてモノクロ作品。工事用トロッコや森林鉄道、今は廃止されてしまったローカル私鉄など、レイル・ファンには見逃せない史料価値の高い写真も多数含まれますし、上野駅や渋谷駅、日本橋の今とはまったく異なる風景を再認識することもできます。行商の人々や夜行列車から降りてホーム洗面台で顔を洗う人…といった、かつての駅で当たり前に見られた光景も見逃さないあたり、さすがに着眼点の違いを痛感するところです。

▲数ある作品から1点…大分交通別大線の別府市海岸通りの情景。そのまま模型にしたくなるような魅力的情景。

「写真って、時代の証言になるんだよね。もちろん、俺たちは、後世に資料を伝えるなんて気はさらさらなくって、その時どきの風景や表情を撮ってきただけなんだよな」
(同展図録に掲載されている薗部さんの言葉。出展は『薗部 澄の撮影行』)

▲会場に展示された使用機材。作品群と共に、JCIIに寄贈されたものとのこと。

 そんな言葉をしみじみと噛みしめながらじっくり鑑賞したい作品群であり、しばし郷愁に浸るのも、慌ただしい年の瀬にあって味わい深いかと思います。展示全作品が収録された図録(1,000円・税込)も発売中。また会期中、過去の薗部さん作品展の図録9種類(今回のものは含まれません)をセットとして特別価格1,000円(税込)でも販売中です。過去の図録は鉄道だけの作品集ではありませんが、当時の風俗が一流のカメラアイで記録されており、特に同時代を体験された方にとっては見逃せない機会であると感じました。

🔶同展について詳しくはこちら
🔶JCIIウェブサイト

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