185系

特集・コラム

シーナリー散歩 Scene:1-2 御殿場線 足柄駅

2020.12.05

 取材日:’20.10.27
text & photo:羽山 健(RM)
同行取材:遠藤イヅル

 レイル・マガジン2021年1月号から新連載となった「シーナリー散歩」。全国の鉄道路線を訪ね、思わず模型にしてみたくなるような魅力的なシーナリーを見つけてご紹介して参ります。連載第1回でお送りしているのは、JR東海の御殿場線。東海道本線の旧線にあたるというその類稀な出自により、一ローカル線とは異なる風情がそこここに見られるようです。このWEB版2回目では、前回の御殿場駅から一駅上り方向へ進んだ足柄駅を見ていきましょう。

▲完成したばかりの足柄駅駅舎。左手のガラス張り部分は展望室を兼ねた休憩スペース。

 足柄駅と御殿場駅との駅間距離は6.6km。これは御殿場線の各駅間距離では最長となります。また標高も、御殿場駅が線中で最高となる455mであるのに対し、足柄駅は330m。標高差は実に125m。この間、御殿場線は鮎沢川と絡み合うように走っています。ところでこの駅の開設は戦後の、つまり御殿場線になってから。それまでは当駅から1.2km御殿場寄りのところに足柄信号所→信号場があり、今もそこには引き上げ線の跡が残っています。この足柄駅は周辺住民の熱心な要望と積極的な建設協力によって完成したという歴史を持っています。(’20.12.15 加筆修正)

▲御殿場線路線図 作図:遠藤イヅル

 さてこの駅、まずは真新しく個性的な駅舎が目を引きます。なんと2020年6月に完成したばかりで、地域の交流センターを兼ね、小山町足柄支所やトイレ、休憩スペースが設置されています。設計は隈研吾建築都市設計事務所で、お得意の木の風合いを活かしたデザインは一見の価値があるでしょう。もっとも、もともと無人駅であったため、駅員は配置されておらず券売機なども設置されていません。旧駅舎は木造で、オレンジ色の屋根が特徴の可愛らしい建物だったそうです。

▲ホーム側から見た駅舎。見切れているが右手に構内踏切がある。

 この駅舎からは構内踏切を経由して島式の1面2線のホームへつながっています。ホームの上り寄り=国府津方の一番端に構内踏切があり、スロープからホームへ上ります。列車長に対してホーム長がものすごく長い…というのがこの駅に限らずどうも御殿場線の特徴なのですが、当駅では駅舎がホーム端にあるため、当然ながら列車はそちらに片寄って停車する設定。ホーム屋根もそちら側にだけ、最低限の2両分ほどの長さしかありません。この屋根、国府津方の0.5両分ほどは浅いY字状のスレート屋根を持つタイプで、比較的最近設置されたものです。残りの1.5両分はなかなかの年代もので、古レールを用いた1本足の傘状屋根が落ち着いた風情を醸し出しています。

▲駅前ロータリーからやや見上げたホーム。左手0.5両分は新しい様式の屋根となっている。

▲鉄骨スレート作りの、ホーム屋根増設部。

▲昔からあるホーム屋根は古レールの支柱に傘状断面の屋根を持つタイプ。支柱は落ち着いたダークブラウンで塗られている。

 御殿場駅で気づいた、ホーム高さの嵩上げについても観察してみました。どうもこの駅では駅建設時の高さ(電車ではなく、ステップ付きデッキを持つ客車に合わせたもの)のまま維持されているようで、電車のドア開口部に対しては段差があります。これこそ115系の時代に見慣れた段差…というように、同行の遠藤イヅルさんともお話しました。

▲前回記事の御殿場駅と比べると、ホーム高さが低く、電車の扉開口部とは段差があることがわかる。

▲恐らく駅開業時から変わっていないホームの側壁。石を斜めに積んだ上に平板が載せられている。

 普段列車が止まらないホームの逆先端の方へ行ってみました。途中で点字ブロックもなくなり、ホームの中央部は玉砂利敷きとなりますが、きちんと手入れがされているのはむしろ意外の感。ホーム長の情報は得られませんでしたが、衛星写真で見ると200m、つまり10両分はありそうな規模です。ちなみに現在のダイヤでは当駅に停車する最長列車は5両編成となっています。かつてD52が貨客両方に活躍していた頃、朝のラッシュ時などには10両近い客車を牽いてこの駅に停車していたかも…と想像できました。

▲普段は列車が止まらない、沼津方のホーム先端から、国府津方を見通す。使われていない割にきちんと手入れされている。

🔶レイル・マガジン2021年1月号(446号)新刊情報

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