text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は一度絶版になったにも関わらず、再度プラレールの新しい動力に更新して再登場した珍しい製品「西武ニューレッドアロー」について紹介します。実は新旧製品で細かい違いもあるようです。(編集部)
【写真】どこが違う!?新旧「NRA」プラレール 細かい差異を写真でもっと見る!
以前の連載にて、西武の限定品のプラレール「9000系」の新旧比較を取り上げました。こちらは製品動力の更新に合わせ、実車の改修工事を反映した内容となり、車体としては再販となりますが、新規バリエーションとしての発売となっていました。
西武では9000系以前にも、既存の製品を「新メカ化」の上で再び発売した車両があります。10000系「ニューレッドアロー」です。2003年に初めて発売され、2019年を動力更新して再販された10000系ですが、そっくりそのまま再販されたように見えて、実は違いが多く見られます。

▲2003年版と2019年版の「ニューレッドアロー」
「ニューレッドアロー」は西武鉄道2本目の事業者限定品として2003年10月17日に発売されました。「近郊電車」の塗り替え品だった「2000系」(2001年10月発売)から一転、独自に金型を起こした意欲作となり、大きな話題を呼びました。2003年当時、既に多くの会社で限定品のプラレールが発売されていましたが、どれも既存車体に新規の前面パーツを取り付けたものや、通常品で絶版となったものにディテールアップを施したものが主流で、車体全体が完全新規造型かつ事業者限定品のみでの流通となっていた製品は「江ノ電300形」「箱根登山鉄道」の2つしか存在せず、これらに続く3例目となったのも注目されるポイントです。
10000系は1993年にデビューしていますが、直後の製品化は叶っていませんでした。初代製品が発売された2003年、10000系はデビュー10周年を迎えており、製品化のタイミングとしては遅く感じられてしまいますが、池袋線の特急増発に合わせて、この時7年ぶりに1本が増備されています。この増備車「10112編成」は外観こそ既存の10000系と同一ですが、VVVFインバーターの採用など、一部仕様が異なっている異色の編成です。初代製品は当時最新のこの編成をプロトタイプとしており、1981年から91年にかけてプラレールのラインナップに載っていた5000系「レッドアロー号」の絶版以来12年ぶりとなる西武特急車のプラレールが誕生したのです。

▲2019年版は動力台車先端部に合わせ、側面にかけての曲面が緩く造型されている
特徴的な丸みを帯びた前面を客室部との一体成型で表現し、ライトは凹モールドで立体感を演出。乗務員室下のハシゴは凸モールド表現、屋根上のビードはもちろんのこと、クーラーキセとパンタグラフも忠実に再現した上で銀の色差しが入り引き締まった印象に。側面のロゴは印刷、行先表示器もシールで表現されているという、どの角度から見ても素晴らしい出来だと言える姿に仕上がっています。一つ前の事業者限定品が単なる塗り替えだったとは思えないほどの力の入れようです。
プロトタイプは先述の通り、最終増備車の10112編成。同編成のみが装備しているLED式の種別・行先表示器は、黒地に赤とオレンジの文字のシールで表現されています。列車名は当時主力として活躍していた「ちちぶ」で、側面の表示は「特急 池袋」となっています。中間車のパンタグラフ周りの造型も素晴らしく、ヒューズ箱を介して伸びる配管、避雷器、屋根の端にあるベンチレーターも忠実に再現されており、上から見る機会の多いプラレールとしてはこれでもかと言うほどのディテールが詰め込まれています。
こうして高精度なディテールで発売された「ニューレッドアロー」ですが、あくまでも限定品。長くは発売されず、絶版後は西武の看板特急列車ながら入手困難な期間が続きました。
西武のプラレールはしばらくは製品が全く出ず、3つ目の限定品は2010年9月発売の「30000系スマイルトレイン」まで7年ほど空くことになります。スマイルトレイン以降、徐々に自社車両を発売していくようになり、9000系とそのカラーバリエーション、40000系、そして30000系の再版版も登場するなど、ラインナップが拡大していきます。
2019年3月に10000系の後継車として001系が登場すると、西武としては旧レッドアロー以来28年ぶりとなる品番付きの全国流通品「S-19 西武鉄道001系Laview(ラビュー)」が4月に発売されました。1年をかけて池袋線の「ちちぶ」の運用が10000系から001系に置き換わる最中、2019年12月に再びプラレールの「ニューレッドアロー」に光が当たります。動力更新の上で16年ぶりに再販されたのです。旧来の動力、いわゆる「新動力」から「新メカ」に更新された車両は数多くありますが、一度絶版となった製品に対して行われるのは2026年現在でもあまり多くはありません。「ニューレッドアロー」は新動力時代に絶版後、新メカ更新の上再登場した車両のうちの一つとなります。
新動力時代に設計された動力車は、構造上そのまま新メカの台車を履くことができず、それなりの改良が必要となります。スイッチ穴の後退による開口部位置の移動や、台車がネジ留めとなったことによるネジ受けの設置、車体内側の強度確保レイアウトの変更などが行われます。
2019年版の「ニューレッドアロー」はこの改良に伴い、車体こそ2003年版の造型を維持しているものの、運転台部分は別パーツ化され少し細くなったような印象に変わりました。車体内部以外では、貫通路の造型が独自のものから他製品と共通の形状になったり、屋根上機器の塗り分け省略、前面ライトモールドの尾灯塗装の省略といった細かな変更点が挙げられます。また、2003年版では最終増備車の「特急ちちぶ」がモデルでしたが、2019年版では実車の運用が新宿線に一本化されつつあったことを反映してか、1993年から1996年にかけて製造されたタイプかつ「特急小江戸」の運用をモデルとしており、16年前の製品との差別化が図られています。翌2020年8月にカラーバリエーションとして当時運行されていた「レッドアロークラシック」も発売されました。これら2種の「ニューレッドアロー」は2023年頃に在庫が無くなり絶版。再び現役車種ながらラインナップに載らない車両となってしまいました。
そんな西武10000系は「ちちぶ」からの運用撤退後に数本が廃車となり、2026年現在では残存した編成が「小江戸」で活躍を続けていますが、これらも2027年にデビューするライナー型の新列車「トキイロ」に置き換えられることが先日発表されました。
同一車種のプラレールを再版する機会の多い西武鉄道、引退を前にもう一度「ニューレッドアロー」を発売して有終の美を飾ってほしいものです。


