185系

特集・コラム

【完全引退から今年で9年】運命に翻弄され、宿命に助けられた特急電車 昼も夜も働いた581・583系

2026.03.26NEW

text:瀧口宜慎(RML)
photo:RM・RMM

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●581・583系という特急電車

 国鉄の特急電車の中で、これほど特異な車両は他にないでしょう。581・583系の枕詞に「世界初の寝台電車」という言葉がありますが、寝台電車であると同時に、固定式・向かい合わせ座席ながら昼行座席特急車としても運行できる世界初の昼夜両用特急電車でした。

 この昼夜両用の寝台電車が登場した経緯は、当時の国鉄の事情を反映し実現したものです。というのは、拡大する当時の長距離旅客に対し、運転本数が増えれば、必然的に車両を置く基地が必要になります。地方であれば土地の確保もまだ容易でしょうが、それが都会ともなれば車両基地の確保は難しく、新車の導入と同時について回る事柄でした。そんなかで「コロンブスの卵」的発想として考え出されたのが「車両の清掃整備を済ませ、次の運行に出してしまえば、車庫の容量は少なく出来る」というもの。結果581・583系は登場から過酷な仕業運命を背負わされ、九州方面への速達列車と、北海道連絡列車としての東北特急として活躍するのでした。

●新幹線接続列車の儚い運命

 1967年に登場した581系は、東海道新幹線から乗換え、九州方面への在来線特急として、当時の鉄道による九州への最短ルートとなり、好評を受けました。ところが山陽新幹線の岡山開業、博多開業と年を追うごとに延伸開業する新幹線によって数年で運行区間は狭められ、また、昼間の座席がリクライニングしない固定席ということも災いし、九州方面への列車から導入18年にして撤退せざるおえなくなりました。「世界初の寝台電車」は多くの車両が失職し、大阪周辺の余裕のある車庫や、使われなくなった貨物ヤードに留置かれ、次なる出番を待ち望むのでありました。

●地方に残る客車列車を多頻度運転に

中間車を先頭車化した改造車のクモハ419。その前面スタイルから「食パン」とあだ名されたことは有名。比較的後年まで活躍し、定期運用がなくなったのは2011年3月改正でのことだった。

 1980年代になっても国鉄地方路線の普通列車は蒸気機関車の時代から続く、客車による運行でした。これには、乗客流動は朝と夕に集中するため、この時間帯に長い編成の列車で乗客を運び、日中は本数を少なくというダイヤ編成でした。しかし利用客の生活の多様化や自動車交通の発達で鉄道離れが起こり、これに対し国鉄は、都市部と同様に待たなくても乗れるくらいに電車がやってくる国電ダイヤへの転換を進めようと施策を打ち出しました。しかし国鉄の累積する赤字の問題を前に新車投入の承認はおりません。そこで特急として失職した581・583系を使って地方線区の電車へと改造するこことになり、ここで715・419系が登場したのです。
 徹底的な改造コストの削減と工期短縮を前提とした車両で、種車の面影を多分に残しつつ、先頭車の形状が流線形と切妻前面という車両での登場となりました。

●長寿だった東北特急と団臨用に代えがたい存在に

上野〜青森間を常磐線経由で結んだ「ゆうづる」。1993年に臨時化、翌年臨時列車も「はくつる」に譲る形で消滅するが、「はつかり」「はくつる」自体は2002年12月の東北新幹線八戸延伸開業まで残ることとなる。

 九州からの撤退した一方で、東北での活躍は比較的長く続きました。1982年に東北新幹線が開業しましたが、盛岡までの開業だったこともあり、寝台特急も1994年まで定期運行されました。さらに特急列車の運行が終わった後も残り、各地で運行される学校をはじめとする各種団体による臨時列車のために残り、更に24年にもなる間、団体列車のために活躍が続きます。

 これには、直流・交流60Hz・50Hzと三電源の電化区間に走行でき、耐寒耐雪装備を持ち、座席車・寝台車としても接客が可能で国鉄時代に登場していたことから、全国のJR線で運転経験のある運転士が在籍していたこともありました。特急列車から引退した後、四半世紀にもなる時間を団体臨時用ながら過ごすことが出来たのは、581・583系の開発段階で、あらゆる線区を走れるように沢山の機能を装備していたこと、何より特急から引退を早めた、固定向かい合わせ座席が団体列車にはむしろ向いていたことなどがあげられます。

●運命に翻弄され、宿命に助けられる

 581・583系は新幹線連絡用として登場し、その新幹線の延伸で、不遇な境遇に至らしめられ、特急車として烙印を押された固定向かい合わせ座席に、逆に命脈を保たされたという、何とも皮肉な運命を背負わされた特急型電車なのでした。そして活動期間は50年にも及び、鉄道車両として長寿を全うしたのです。

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