愛媛県・西条市・新居浜市がいま本格的に進めているのが、「新幹線の父」十河信二を主人公とするNHK連続テレビ小説(朝ドラ)の誘致だ。東海道新幹線を実現へと導いたその男は、実は愛媛県新居浜市中萩の出身である。
東海道新幹線は1964年10月1日、東京オリンピック開会式の9日前に開業。最高速度210km/hで東京〜新大阪間を結び、日本の鉄道史を塗り替えた。その舞台裏で指揮を執ったのが、第4代国鉄総裁・十河信二だ。
十河信二と妻キク 画像:西条市所蔵
十河は1884年生まれ。1909年に鉄道院へ入り、当時の総裁 後藤新平に師事し広軌の優位性を認識するなど先見性に長けた人物であった。西条市長などを経たのちの1955年、71歳で国鉄総裁に就任。当時は「これからは飛行機とクルマの時代」と新幹線構想に冷ややかな声も多かったが、「有法子(なせば成る)」を胸に計画を前進させ、1957年に建設を動かした。1964年10月1日、東海道新幹線は開業したが、開業のテープカットに彼の姿はない。巨額となった建設費の責任を取り再選されなかったからだ。そんな状況にありながらも、のちに元秘書に語ったとされる「なに、無事走ってくれさえすれば、それでいいんだよ」の一言からその度量の大きさがうかがえる。
新幹線から手を振る十河信二 画像:西条市所蔵
愛媛県・西条市・新居浜市が朝ドラ化を目指すのは、この“原点の物語”を全国に届けるためだ。東海道新幹線は日本の高度経済成長を象徴する存在であり、その成功は世界の高速鉄道の礎ともなった 。だが、その中心にいた人物が愛媛出身であることは、必ずしも広く知られていない。
県は関係自治体や経済団体、鉄道関係団体などと連携し、要望活動やPRを通じて機運を高めている。新居浜や西条といったゆかりの地を舞台に、少年時代から国鉄総裁時代までを描けば、郷土の風景とともに、日本の鉄道史そのものを映し出す作品になるはずだ。
リニア中央新幹線の時代を迎えようとするいま、改めて振り返るべきは東海道新幹線誕生の舞台裏である。図面の向こうに未来を見た一人の鉄道人。その物語を朝の連続ドラマで描くことは、愛媛の誇りを全国へ発信すると同時に、日本の鉄道史を再評価する契機となる。
十河信二という転轍機を動かした男を、いまこそ全国放送で――。
愛媛県・西条市・新居浜市の挑戦は、静かに、しかし確実に動き始めている。







