取材日:‘25.10.14
text & photo:福島鷺栖
暑かった夏も終わり、ついに行楽シーズンがやってきました。関西で行楽スポットというと、定番としてはやはり京都や奈良を思い浮かべる方も多いかと思いますが、どこも人が多く落ち着けないのが悩みどころ…。そこで今回はレイル・ファンらしく廃線跡巡りをしながら穏やかに自然も味わうこともできる一石二鳥なスポットをご紹介したいと思います。
【写真】大阪駅からたった30分の秘境!福知山線旧線跡を辿る写真をもっと詳しく見る!
■大阪駅から30分で廃線跡ハイキング!
大阪駅から宝塚線(福知山線)で30分ほど。宝塚の一つ先の駅「生瀬駅」が今回の廃線跡探索のスタート地点です。今回訪問する廃線跡はこの福知山線の旧線跡になります。廃線跡は生瀬駅から道場駅までの武庫川沿って走る区間で、同区間は1986(昭和61)年の新線電化開業時に廃止となりました。廃止後はしばらく未整備となっていましたが、2016(平成28)年にハイキングコースとして途中の武田尾駅手前までの区間が整備され、一般に解放されています。

生瀬駅の駅舎。ちなみに新線切り替え時に生瀬駅の場所も移動している
駅に着いたので早速出発!といきたいところですが、整備されたとはいえ廃線跡は山の中で自販機やお手洗い等はありません。そのため、出発前に生瀬駅で準備を整えておくことをおすすめします。
■武庫川の峡谷に沿って枕木は続く
生瀬駅から徒歩20分ほど幹線道路沿いに歩くと、廃線跡への入り口に到着します。今回訪問時は道路工事中のため工事案内板と併せて廃線跡への案内板も設けられていましたので、それに従って進むと到着します。

廃線跡のスタート地点。早速枕木が廃線跡であることを主張するように並んでいた。

スタート地点に設けられた案内板。
廃線跡は幹線道路から降りたところから始まります。一見すると農道のように見えますが、枕木が平行にズラリと並んでおり、ここが廃線跡であることが窺えます。

鉄橋は当時のものが土台に使用されており、その様子を見ることもできる。
■トンネルに速度標識、キロポスト!当時の設備が今も残る!
遊歩道など整備された廃線跡でよく見られるのが、現役時代の設備がきれいさっぱり撤去されてしまい、当時の面影がなくなってしまう事例です。歩きやすく、探索しやすくなる反面、レイル・ファンとしては少し物足りなさを感じてしまいます。しかし、ここは当時の面影を色濃く残しており、廃線跡ウォッチングにもおすすめのコースとなっています。実際、トンネルには煤が残り、速度標識やキロポスト、退避所までも一部残っており、ハイキングコースでありながら現役当時の面影が多く残されており、レイル・ファンも十分満足できるでしょう。

入り口からしばらく渓谷の景色を眺めながら歩いていると北山第一トンネルに差し掛かる。
■廃線跡のクライマックスは巨大トラス橋!
廃線跡が終盤に差し掛かるとトンネルが続きます。5つ目のトンネルを進んでいくと出口に真っ赤なトラス橋が見えます。この大きなトラス橋は「武庫川第2鉄橋」という名称です。ここを山陰方面行きの列車が轟音を立てて通過していたのだろうか…と当時に思いを馳せてしまうほどに貫禄を感じる鉄橋です。ちなみに、旧線時代は福知山線の中でも屈指の撮影地となっており、当時は多くのレイル・ファンが通ったそうです。

トンネルの出口からでもその鮮やかな赤色が存在感を放っている。
■ゴールの武田尾駅へ
トラス橋を越えてトンネルを3つ越えるとハイキングコースは終わり、一般道と合流します。生瀬~道場間に設けられていた武田尾駅は現在、半分がトンネル内という非常に個性的な駅ですが、かつて旧線時代は川べりの静かな交換駅でした。駅跡は駐車場に転用されています。

武田尾駅跡。駐車場に転用されているが、それにしては不自然に緩やかなカーブがいかにも廃線跡らしい。

旧線時代の武田尾駅。川べりののどかな交換駅だった。
‘86.07.27 福知山線 武田尾 P:小林 智
(今日の一枚Memoriesより)
大阪駅から30分というアクセスながら、武庫川の自然を穏やかに感じつつ、かつての名撮影地としても知られた福知山線旧線をたどることができる廃線跡。気軽に訪れることもできるため、家族や友人とのお出かけにもおすすめですよ。




