text:鉄道ホビダス編集部
photo(特記以外):RM

JR東海・西日本の新幹線の検測車には「ドクターイエロー」がいるように、JR東日本の新幹線検測車には「East-i(イーストアイ)」という車両がいます。外装は白地に赤いアクセントと、ドクターイエローとは全く異なるカラーリングながら、多様な特徴を持つ新幹線路線網の検測をカバーできる優れた車両です。
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■実はJR東日本にもいた「ドクターイエロー」
現在のE926形「East-i」より以前は、東海道・山陽新幹線と同じ黄色い車体の車両で検測を行っていました。形式は925形といい、0番代の「S1編成」と、10番代の「S2編成」が在籍していました。0番代は当初より925形として1979年に落成した車両で、10番代は200系の試作車に当たる962形の改造により1983年に登場しました。
東北・上越新幹線の開業後は黄色い車体の検測車となり、「ドクターイエロー」ではありつつも帯色が200系に準じたモスグリーン(緑14号)とされ、車体もボディーマウント構造やスカート部分のスノープロウなど、200系に近い形を持っていることから、東海道・山陽新幹線用922形とは似て非なるものになりました。
また北陸新幹線(長野新幹線)は、途中で交流電気の周波数が変わるため、1997年の開業を前にいずれの編成も60・50Hz両対応に改造されました。ただし、フル規格新幹線の車体を持つ925形はミニ新幹線である山形・秋田新幹線には入線できない問題を抱えていました。それを解決したのが後継のE926形「East-i」でした。
■神出鬼没な白衣の「お医者さん」
2001年、JR東日本の新しい新幹線電気軌道総合試験車として登場したE926形「East-i」。このE926形が登場したことでそれまでの925形は2002年までに定期運用を終え引退しました。
このE926形はミニ新幹線規格のE3系をベースとして、東北・上越新幹線はもとより、60・50Hzの周波数が混在する北陸新幹線に加え、先代の「ドクターイエロー」925形では入線不可能だったミニ新幹線の山形・秋田新幹線の検測もできるという、まさしくオールマイティな活躍ができる車両として開発されました。またE3系をベースとしたことで速度も向上し、275km/h走行での検測が可能となったことも特筆されます。
■新型車両の導入発表 残された時間はあと4年ほどか

撮影当時当時開業前だった長野〜金沢間の北陸新幹線を走行試験するE926形「East-i」。現在でも北陸新幹線全線の検測を担当している。
‘14.8.2 北陸新幹線 金沢〜新高岡(高台の公園より撮影) P:宮島昌之
(鉄道投稿情報局より)
そんなE926形のベースとなったE3系も後継車両の登場で次々に引退し、同系式はすでにGTO素子VVVFインバーターを搭載する初期の車両は全車引退しています。そんな中、現在JR東日本の新幹線の中で唯一、GTO素子のVVVFインバーターを搭載し残ったのがE926形ということで、独特なサウンドを発するJR東日本最後の車両という点からも注目を集めています。また2001年のデビューからすでに20年以上が経過し、おおよそ15〜20年のサイクルで更新される新幹線車両の中では長寿の部類になってきました。
そうした中、先日ついに新型検測車「E927形」の開発が発表されました。ここには同時にE6系の後継車をベースとすることも明記されており、JR東日本の新幹線車両は再び変革期を迎えることとなりそうです。
E927形の登場は2029年度で、置き換えられるとすると、2025年現在から猶予はあと3〜4年ほどと考えられます。非営業車なので滅多なことがない限り基本乗ることはできないどころか、ダイヤも非公開であることから見ることすらなかなか叶わない車両ではありますが、今後見かけた際には珍しいという一点だけではなく、現役であるうちに記録をしておきたいところです。




