text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回はかつて発売された銀座線のダブルセットをご紹介します。プラレールでいくつか製品化されている銀座線車両ですが、その中でも少しマニアックな仕様が選ばれているのが特徴でした。(編集部)
【写真】マニアックなダブルセット!銀座線へのコダワリが見える仕様を写真でもっと見る!
東京メトロ銀座線のプラレールは過去にいくつか発売されています。2007年に「01系」が製品化されて以来、旧型車の2000形、現行車両の1000系と、3世代の形式が世に送り出されています。
2012年にデビューした1000系は、銀座線の前身となる路線を開業させた東京地下鉄道の1000形をモチーフにしたレモンイエローの車体が特徴的な電車です。プラレールでも実車デビュー直後に製品化されましたが、01系のように車両単品ではなく、ダブルセットの一車種として製品化されています。このダブルセットがなかなかマニアックな内容となっており、発売当時は話題になりました。今回はそのセットをご紹介します。

▲2012年発売の「東京メトロ銀座線新1000系&01系ダブルセット」。01系は既に通常仕様が2パターン発売されているため、80周年記念ラッピング仕様が選ばれた。
2012年4月に東京メトロ1000系がデビューし、5年をかけて01系を置き換えましたが、当然ながらプラレール発売当初の頃はまだ少数派。置き換えが始まった01系はまだまだ主力でした。製品化するにあたり、単品とするかセットとするか、メーカー社内で検討が行われたものかと思いますが、01系は既に単品とセットで製品化済み。見た目的に分かりやすいバリエーションとなる、行き先表示器の幕式・LED表示器式の違いも既に行われていました。
結果的にダブルセットでに発売となりましたが、単に「新旧」として新製品の1000系と既存の01系を抱き合わせるのもいかがなものか… とメーカーが考えたのかは分かりませんが、01系は通常仕様ではなく、2007年に第17編成に施されていたレモンイエロー色の「地下鉄開通80周年記念」ラッピング仕様での登場となりました。これにより「新旧」のセットながらも1000系のレモンイエローのカラーリングともマッチして統一感があり、鮮やかなものに仕上がりました。これは非常に良い判断だったと言えるのではないでしょうか。
さて、それぞれの車両を詳しく見ていきましょう。1000系は2012年にデビューした第1編成がモデルとなっています。先頭車は渋谷方制御車の1101、後尾車は浅草方の1601です。実車では6号車となる後尾車は他の営団・メトロ車の付番法則に則り、百の位で号車を表していることから「1600形」として製造されていましたが、2015年半ばに「1000形」に改番されています。このため、プラレールで製品化された姿は、現役の車両ながら既に過去の姿ということになります。このセット以降に発売された車両単品「ライト付 東京メトロ銀座線1000系」「SC-09 東京メトロ銀座線『くまモンラッピング電車』」では車番の表記が省略されたため、2025年現在では改番後の「1000形」を番号付きで製品化されたものは存在しません。また、行先表示器はデビュー時から2017年までの仕様となるナンバリング表示無しの駅名単体表示の姿が再現されています。1600形と同じく、こちらも現在では過去の姿です。
成型色はレモンイエロー。屋根、冷房装置、アンチクライマー、帯、客室窓がそれぞれ塗装されています。先頭車後部の車椅子スペースの窓は機械室がある関係で小窓となっていますが、これも忠実に再現され中間車との差別化が上手く図られています。しかし、実車では優先席スペース向かいの優先席側は通常サイズの窓が設置されているのに対し、プラレールでは金型の都合上か両側面とも小窓となってしまっています。ドア部を除き他の窓はいわゆる「塗り窓」ですが、この小窓だけはドアと同様に開口で表現されています。
▲1000系と01系ラッピング車の並び。自然採光による尾灯の点灯が見られる後尾車だ。
続いて、01系を見ていきます。2007年に通常仕様が製品化されているため、こちらはそのカラーバリエーションという扱いになります。
01系も1000系もアルミ合金の車体ですが、フルラッピングを前提としたフラットな車体の1000系に対し、無塗装の01系では客室窓の枠が出っ張っています。実車ではこういった車両にラッピングを施す際、凸部分を避けて施す例が多く、「地下鉄開通80周年記念」ラッピングも例外ではありませんでした。このためフルラッピングとは言えど窓枠にはアルミの地色が見えていましたが、なんとプラレールではこの箇所を忠実に塗装で再現してあります。同じくラッピングされていない前面のアンチクライマーも車体色の銀色で塗装されています。外見上の特徴は押さえておきたいという拘りの現れと言えそうです。
前面の記念ロゴはステッカーで表現され、側面は「八十周年記念號」マークを除き記念ロゴと東京地下鉄道の車紋、窓下のウィンドウ・シルを表現した箇所が印刷表現となっています。実車のラッピングにはこの他に、ウィンドウ・ヘッダーやリベットまでも表現され、東京地下鉄道1000形を上手く表現していましたが、プラレールで製品化するにあたりこのような細かいところはデフォルメされ、ウィンドウ・シルのみの表現に落ち着いています。また、実車のラッピングにおけるウィンドウ・シルは銀色のラインにて表現されていましたが、プラレールでは車体色や全体のサイズとのバランスを考慮してか、赤い帯としてデフォルメされました。側面の車番表記は省略されています。通常仕様では塗り分けられていたクーラーの塗装も省略されています。
このように細かく見ていくとこだわりが見えてくるこのセット。一回生産のダブルセットであるため、発売後は比較的早いうちに店頭から姿を消しました。
そして残念ながら一時期旺盛だったプラレールの地下鉄シリーズも今では鳴りを潜め、銀座線や他の東京メトロの路線に限らず、地下鉄のラインナップ自体が少なくなってきています。直近製品化されたOsaka Metro 400系をはじめ、各地に新型の地下鉄車両が登場している昨今、今一度「現在の地下鉄」を製品化にも期待したいところです。





