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【可愛い目】プルバック式のプラレール!?幼児の「入門用」に作られた愛らしいシリーズとは?

2025.07.18

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回はプラレールの歴史の中でも少し変わり種な「はじめてプラレール」についてクローズアップ。対象年齢1.5歳からという、乳幼児向けに作られた可愛らしいシリーズで、これらのプラレールは実は電池駆動ではありませんでした。(編集部)


【写真】25年以上前に発売された「はじめてプラレール」 おでかけセットの全貌をもっと見る!

 プラレールは最初期のものを含めた一部の手転がし製品を除き、乾電池で動作するモーターを積んだ電動玩具として知られています。実車モデル以外の架空デザインの車両も、ほとんどは電動です。
 そんなプラレールのラインナップですが、中には少し変わった製品があります。今回はそんなプラレールをご紹介します。

▲プルバックの車両が2両入った「はじめてプラレール おでかけセット」

 プラレールは発売当初から、概ね3~6歳あたりを対象年齢として設定しています。ギミック鑑賞を重点に置いた対象年齢1歳からの「プラレールランド」というシリーズが1970年代に展開されていましたが、基本の対象年齢は変わらずです。
 カタログや説明書などにレイアウトプランが記載されていることがありますが、もちろん子供が自分で思い思いのレイアウトを組むことも可能です。このため知育玩具にも分類されることがありますが、1987年に動力車のスイッチをオフにすると手転がしも出来るようになった「新動力」が登場したことと、当時既にロングセラーであり、子供の頃にプラレールで遊んでいた親が子供に買い与える時代になったことも重なり、設定されている対象年齢よりも下の年齢の子供も遊ぶようになってきた背景もあったように思えます。
 こういった状況を踏まえてか、1999年に対象年齢を1.5歳からに設定した新シリーズが登場しました。それが「はじめてプラレール」です。

 「はじめてプラレール」はその名の通り入門用のプラレールで、電動ではなくプルバック方式を採用しています。車体と台車も専用のものとなり、プラレールであることを表すためかダミーの連結器がアクセントとして取り付けられています。前面には目がある擬人化タイプとされ、走行中はキョロキョロと辺りを見回すように動くギミックものでもあります。買ってすぐに遊べるセット品の他、車両単品も10種類発売されました。
 「はじめてプラレールセット」はカラフルなレールとデフォルメされた立木、青空をイメージした水色のトンネルが付いたシンプルな構成で、既存のプラレールとは差別化を図っていました。

▲車両は0系新幹線「こだま号」と当時最新のE3系新幹線「NEWつばさ号」

 「おでかけセット」は当時のプラレール・トミカラインナップにもあって同様の形態の製品を取り入れたもので、展開するとレール無しでも遊べるマップになるというものです。上面には取手が付いており、箱型にすると持ち運びも可能となっています。
 単品車両は「300系新幹線のぞみ号」「500系新幹線のぞみ号」「山形新幹線つばさ」「成田エクスプレス」と言ったプラレールでもお馴染みのものから、当時の最新型「700系新幹線のぞみ号」が1999年に、プラレールでは922形があるからなのか少し捻りを加えたと思われる925形「ドクターイエロー」、そして「D51」と山手線205系がモデルの「通勤電車」、絵本に登場するキャラクターとして自動車の「パトカー」「消防車」が2000年に発売されています。
 「おでかけセット」の車両は1.5歳児向けとは言えなかなかマニアックなものとなり、0系新幹線「こだま号」とE3系新幹線「NEWつばさ号」の2両となっています。それぞれ「山形新幹線つばさ」「ドクターイエロー」のカラーバリエーションではありますが、最新型と初代車両を揃えているところに企画者のこだわりが見えるようです。各車両にはパンタグラフも表現されていますが、キャラクター性を高めるためにそれぞれ鮮やかな色に塗られています。
 セットに付属している絵本は「はじめてプラレール」の車両が仲間たちと出かけるという内容で、セットを展開したマップに準じた内容です。製品化はされていないものの、キャラクターとして「WIN350」や「EF81レインボー色」「485系L特急」、自動車では「救急車」「はしご車」「クレーン車」など、製品化されているものを含めて計24車種が登場します。

 このように低年齢向けの新シリーズとして始まった「はじめてプラレール」ですが、本連載でもたびたび言及しているように、2001年に入ると製品の変革期が訪れます。新たな世界観のセット品や、ディテールが更に向上した製品が続々と発売されるその裏で「はじめてプラレール」は期間にしておよそ2年程度の展開を行った末、ひっそりと終わってしまいました。
 ただし、この低年齢向けプラレールというコンセプトはその後も断続的に引き継がれ、車両にガラガラを仕込んだ「はじめてのプラレール」や、プラスチックではなく布のレールに沿って走行する「かんたんはじめてプラレール」など、同じような名称ではあるものの別々の製品が開発されています。

 元来子供向けのおもちゃであるプラレール。更に下の年齢をターゲットとするのは難しいようで、「はじめてプラレール」以降の製品も定着しているとは言えませんが、この時に確立したコンセプト自体は将来のプラレールファン獲得のために一役買っているのかもしれません。

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