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セメント貨物の「残照」ローカル私鉄線から人知れず分岐する魅惑の廃線跡をたどってみた!

2025.02.20NEW

text & photo(特記以外):福島鷺栖
取材日:2021年5月18日

 先日、TOMIXよりタキ1900(セメントターミナル)が発売となりました。我々貨物ファンにとっては待ちに待ったリニューアル発売となります。淡い緑色のセメントタンク車は中京圏のほか南東北まで見られ、さまざまな機関車が牽引しており、その組み合わせも様々ありました。

【写真】今なお残る貨物線の廃線跡!情緒あるその写真をもっと見る!

 ただ、その中でも貨物ファンにとって今なお語り草となっているのは、TOMIXからは3月発売予定となる樽見鉄道のDE10タイプのTDE10形でしょう。このTDE10の重連がセメントターミナルのタキ1900を連ねて行き交い、その一方で早朝の通勤列車を客車で運行するなど、比較的近年まで国鉄時代のような光景が見られたことは、今でも多くのレイル・ファンの中で印象的なシーンの一つでしょう。
 現役時代を見ることは私にはかないませんでしたが、今も残された廃線跡をたどって、当時に思いを馳せていきたいと思います。

▲TOMIXから発売されたタキ1900のセメントターミナル所有車。実車は2007年頃まで活躍し、淡緑色の塗装が非常に目立つ存在だった。 写真:羽田 洋

■広大なヤードが広がる「本巣駅」

 樽見鉄道の起点駅である大垣駅から9駅。樽見鉄道本社と車両基地を備える樽見鉄道の本巣駅が今回のスタート地点となります。ホームは島式ホームが1面で交換設備を備えている他、当駅止まり・発の列車も設定されています。
 かつては機関区も備えており、5機のTDE10が配備されて大垣から当駅までセメント列車を牽引していました。今回はこの本巣駅から大阪住友セメントの工場への専用線を訪ねます。


▲本巣駅の周辺地図。赤線部分が専用線跡。(出典:地理院地図)

▲本巣駅構内の様子。シンプルな配線ではあるが、社名が入った車庫が隣接し、小規模なヤードも備える。当駅を終着・起点とする列車も運行される。

 本巣駅はホームは1面ではあるものの、車庫やヤードも備える樽見鉄道の本拠地です。ヤードの有効長は長めに取られており、これはかつて長大な貨物列車が行き交っていた何よりの証拠と言えるでしょう。

 ヤードから専用線へ分岐する箇所にある「進路確認」の標識はおそらく当時のもの。分岐してからもしばらく線路は残っていますが、その後小屋の中で途切れていました。果たして中には何があるのでしょうか…。
 その後、しばらくはカーブした草むした土地が続くだけでしたが、小さな用水路にコンクリートの橋台が残っていました。


▲片側一車線の道路に差しかかかる前に小さなコンクリート橋が!バラストも残っており現役時代を感じることの出来る貴重な遺構だ。


▲川を渡る部分。廃線跡部分だけ盛土が残っていることがわかる。

 川を渡ってから本巣駅方面へ廃線跡を望むと、家がこの廃線跡を避けて建っており、遺構を際立たせています。川を渡ってしばらくすると側道と並走していきます。廃線跡の土地はしっかり残っており、こちらにもバラストが残っていました。


▲廃線跡はセメント工場へ吸い込まれていく…。かつてはここを緑のセメントターミナルのタキ1900などが行き交っていた。

 この貨物線は2025年現在から20年近く前となる2006年3月に運行を終えていながら、このように数多くの名残りを今に伝える貴重な廃線跡となっています。

 今では、セメント貨物も三岐鉄道と関西本線の一部分でしか見ることができませんが、ぜひ模型で当時のセメント列車を再現してみるというのはいかがでしょうか。

2025年2月20日 15:25 加筆修正の上掲載

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