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湖西線のために作りました。113系の「特別仕様車」700番代・2700番代って何?

2024.07.12

text:MSかぼちゃ(X:@MS3167)

 111系・113系・115系といった直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさんの連載!「徹底研究!国鉄近郊型電車113系115系」。今回は湖西線をメインに活躍を続けた113系700番代・2700番代についてご紹介します。湖西線での運用を想定して製造された特別な113系は、スタンダードな同系列とどう違うのか、詳しく見ていきましょう。(編集部)


 2024年7月で開業50周年を迎える湖西線。現在も特急「サンダーバード」が走り、関西と北陸を短絡する役目を持っていますが、かつてこの地にも113系が走っていました。2023年3月までその姿を見ることができたので、記憶に残っている方も多いかもしれませんが、これらの車両は113系としては特殊な区分に位置していたのです。今回の連載では、そんな湖西線用として製造された113系である、113系700/2700番代について紹介します。

【写真】113系なのに耐寒耐雪構造!700番代・2700番代の形式写真はこちら!

▲湖西線用に設計・製造された113系700番代。写真は後年にドアボタンが設置された姿だ。

クハ111-5706 ‘10.8.9 京都 P:おれんじらいん(日本かぼちゃ電車学会)

 113系700番代は、1974年の湖西線開業に合わせて登場しました。
 豪雪地帯を沿線に持つ湖西線での運用を念頭に設計されたいわば「特別仕様車」で、113系列としては異例のシャッター付きタイフォンや半自動対応ドアなどの耐寒耐雪装備を持つことが特徴です。その他、細かい点ですが登場時から側面方向幕を使用していたため、側面の行先サボ受けが省略されて製造されているのも特筆すべき点です。

 湖西線開業から6年が経過した1980年、湖西線と同じく滋賀県に位置する草津線が電化開業することになりました。こちらは湖西線沿線ほど雪の降る環境にはないものの、湖西線と共通で運用が行われることとなり、増備が決まりました。しかし6年の月日が経ったことで、当時113系の製造区分は700番代の属する中期型から、シートピッチを拡大した後期型へと移行していました。そのため、後期型の113系2000番代をベースに、113系700番代同様の耐寒耐雪装備を加えた113系2700番代が登場します。
 当連載第1回で紹介したように、中期型と後期型ではシートピッチや窓配置に差異があるほか、700番代では省略されていた側面行先サボ受けが2700番代では設置されているなど、細かい差も存在します。

▲草津線電化に際して製造された113系2700番代のトップナンバー。写真は体質改善30Nが施工された後の姿である。

クハ111-7701 ‘10.8.9 京都 P:おれんじらいん(日本かぼちゃ電車学会)

 2700番代の登場からさらに3年が経過した1983年頃から、6両編成で運転されていた湖西線・草津線の列車の一部が4両・8両編成化されました。
 このため、湖西線用113系のうち、一部の6連を4連へと短縮し、その代わり本数を増やす組替を行うことになったのですが、先頭車を用意するにしても700番代・2700番代以外の113系は湖西線での運用には適しません。
 そこで、既存の113系2000番代クハ8両に耐寒耐雪装備を追加する改造を行い、2700番代へ編入することとしたのです。
 これらの車両は基本的に新製された2700番代に仕様を合わせていますが、細かい点で差異が発生しており、特に外見で目立つものとしてはタイフォンカバーがシャッター式から回転式のものに変更されている点が挙げられます。
 これは東北地方に多く採用されたタイフォンカバーですが、113系/115系一族での採用例はこのグループ8両以外には存在せず、非常に珍しい例といえます。

▲1983年に113系2000番代から2700番代に編入した車両。特徴的なタイフォンの様子がわかる。

クハ111-7704 ‘22.7.17 近江舞子 P:MSかぼちゃ(日本かぼちゃ電車学会)

 JR化後の2002年ごろには、小浜線の電化開業が決定します。
 朝ラッシュ用として湖西線と同じ113系耐寒耐雪装備車を導入することになったのですが、国鉄が製造した113系700/2700番代は湖西線・草津線用でちょうどの数であり、小浜線を管理する福知山電車区に車両を提供する余裕はありません。そこで、1983年と同様に、113系2000番代(正確には高速化改造が施工された7000番代)に耐寒耐雪装備を追加する改造が行われました。この改造では1983年の施工内容と細かい点で異なっており、特にタイフォンに関しては原型のスリットタイフォンカバーにお椀型の簡易的なカバーを取り付けるにとどまっていますが、番号はこれまでの車両の連番となっています。
 この改造は、小浜線に投入するための4連1本と、小浜線用に車両を提供した湖西線への車両補充としてのクハ4両が改造されたほか、後に4連1本が湖西線用として追加改造されました。また、小浜線に投入された113系に関しても2007年までに湖西線へと復帰しています。

▲2002年に7700番代に編入された車両。このグループの車両は全車が体質改善40Nの施工車となっている。

クハ111-7707 ‘10.8.9 京都 P:おれんじらいん(日本かぼちゃ電車学会)

 これらの車両は、新製・編入以来、一部編成の嵯峨野線への転用や、先述した小浜線への転属、さらには置き換えによる山陽地区への転用こそあったものの、多くの車両が京都・滋賀地区、そして湖西線・草津線で運用を続け、中には新製時から一度も湖西線・草津線を離れなかった車両も存在しました。
 現在ではその姿を見ることはできなくなりましたが、湖西線のために設計され、湖西線で長年運用されたこの車両は、まさしく「湖西線の主」というべき存在なのかもしれません。

 なお、7月20日発売予定のRM MODELS 348号では、これらの車両(特に700番代)についてさらに深掘りした記事を、4ページにわたり掲載しています。この記事で湖西線の113系に興味を持たれた方は、ぜひお手にとって頂けると幸いです。

MSかぼちゃさんの連載記事「徹底研究!国鉄近郊型電車113系・115系」はRM MODELS 348号に掲載!

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