185系

特集・コラム

旧福知山色リバイバルで再注目!113系5300番代の「不思議な」魅力とは

2024.06.14

text:MSかぼちゃ(X:@MS3167)

▲先日旧福知山色に復刻されたS9編成。すでに運用を開始している。

S9編成 ’24.6.5 山陰本線 上夜久野〜梁瀬 P:わかさじ

 111系・113系・115系といった直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさんの連載!「徹底研究!国鉄近郊型電車113系115系」。今回は、先日「旧福知山色」にリバイバルされ、注目が集まる113系5300番代にクローズアップしました。福知山区に所属するワンマン対応の2両編成ですが、掘り下げれば掘り下げるほど改造時に生まれた不思議な点や、特異な形態が見られるのが魅力です。ここではそんな5300番代の概要から特徴、運用までを紐解いていきます。(編集部)


【写真】不思議な形態が際立つ113系5300番代 過去から現在までの写真はこちら!

 2977両が製造され、国鉄近郊型電車の代名詞的存在であった113系。新型車両による置き換えが進み、2024年3月ダイヤ改正では、ついに稼働数が計34両にまで減少してしまいました。
 そんな中、2024年現在も活躍を続けている113系が、前に当連載でも紹介した岡山区に所属する「B編成」と、今回紹介する福知山区の113系5300番代「S編成」です。
北近畿地区で活躍する同車は、113系としては異例である2両編成を組成し、さらにその形態も他には見られないものを持つ、まさしく「不思議な113系」というべき存在なのです。

 113系5300番代の最大の特徴は、なんといってもその側面。一番先頭のドアの後ろに、なんと戸袋窓が2枚並んでいるのです。
 先述した両数も、113系としては非常に短いものといえます。そもそも、113系の新製車に制御電動車は存在しないため、編成は最短でもクハ+モハ+モハ+クハの4両編成となるため、5300番代は必然的に先頭車化改造が行われた車両、ということになります。
 一体、なぜこのような特徴的なスタイルを持つこととなったのでしょうか。

▲白帯が入った湘南色を纏っていた頃のS7編成。先頭のドア後ろの戸袋窓が2枚並んでいるのがわかるかと思う。なおこの頃は運行番号表示器やベンチレーターが残存していた。

クモハ113-5307 ’11.3.25 福知山線 福知山 P:おれんじらいん

 113系5300番代は、1996年3月の山陰本線園部〜綾部間電化開業に際し登場しました。
 113系0番代新製冷房車(通称0’番代)のモハユニットに対して先頭車化改造を施工したもので、ワンマン運転に対応しています。
 特徴的な戸袋窓も、この改造によって生まれたものです。北近畿地区のワンマン運転では、運転士が運賃を収受する方式を採っているのですが、乗務員室に一番近い乗降扉を前方に移設しているのです。2枚並んだ戸袋窓の正体は、「ドアが前方に移設されたために新設された戸袋窓」と、「種車時代に使われていた戸袋窓」なのです。
また、先頭車化改造自体の工法も、非常に特徴的なものでした。国鉄時代から行われている113系・115系の先頭車化改造車では、新製した先頭部を取り付ける工法が一般的なのですが、5300番代ではコストの削減のために、廃車となった先頭車から前頭部を切り出して、それを接合するという工法を採っています。この工法は5300番代の前には、同じくJR西日本の115系550番代(クモハ)にのみ採用例があったもので、逆にこれ以降のJR西日本による113系・115系の先頭車化改造車は、さらなるコスト削減のため当連載でも紹介したような切妻形状の工法に移行しているため、過渡期ならではの工法であるといえます。
 この他にも、ワンマン運転のための乗降口表示器や、寒冷地を走行するためのボタン式半自動装備や霜取り用パンタグラフ(一部編成)、連解運転のための自動解結装置付き電気連結器がこの改造で取り付けられており、この車両独特の物々しい印象を醸し出しています。

 2024年現在、113系5300番代は5本が運用中です。山陰本線綾部〜城崎本線間・舞鶴線全線で運用されており、平日朝には2編成を併結した4連運用も存在します。また、1日1往復KTR宮福線にも乗り入れており、特に宮津駅を18時半ごろに出発する福知山行の快速808M「大江山」は113系・115系では現存唯一の快速運用となっています。
 S2編成とS4編成の2本は体質改善40N工事を施工しているほか、S4編成とS9編成は霜取り用にパンタグラフを増設しています。しかし、2022年3月をもって使用を中止しているようで、以降は通年全編成がパンタグラフを1基のみ使用している状況で運用を行っています。
 S9編成は、JR西日本が展開する「懐鉄」シリーズ企画の一環として、6月より塗装をかつて113系800番代が纏っていた「旧福知山色」に変更しています。

 北近畿地区で今も活躍する「不思議な113系」、その正体は特殊な運用環境で活躍するための「特別装備車」だったのです。

 なお、6月20日発売予定のRM MODELSでは、この車両についてさらに深掘りした記事を4ページにわたって掲載しています。この記事で5300番代に興味を持たれた方は、ぜひお手にとって頂けると幸いです。

MSかぼちゃさんの連載記事「徹底研究!国鉄近郊型電車113系・115系」はRM MODELS 347号に掲載!

◆RM MODELS 8月号 Vol.347:1,320円(税込)
2024年6月20日発売予定

最新情報はRM MODELS公式Xをチェック!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加