text:鉄道ホビダス編集部
▲普通列車用に改造されたキハ185系3100番代。特急型時代は愛称を表示していた前面幕は、行き先を表示している。
‘20.5.28 予讃線 伊予石城〜双岩 P:山﨑遥大
(鉄道投稿情報局より)
特急や急行といった優等種別で使われていた車両や、グリーン車など特別車両の中には、後継車の登場や車両計画により、従来よりもサービスのグレードを落とされることがあります。そのグレードが落とされた車両自体をレイル・ファンの間では「格下げ車両」、その際に行なわれる改造のことを「格下げ改造」などと言われることがあります。
【写真】私鉄にもあった!様々な「格下げ車両」を写真で振り返る
■どういった改造がなされるのか?
一言に「格下げ車両」といえども、ほとんど改造を受けないものから、徹底した改造により格下げされたものまで、様々なバリエーションがあります。
古くは時代の変化によるサービス面の陳腐化によって、特別車両から普通車へ格下げされた車両もあるほか、元々グリーン車だったものを座席改造を経て普通車に格下げされるものもなどもあります。さらに、国鉄急行型から近郊仕様に改造した車両だと、中央部のクロスシートは残しつつ、扉の周囲をロングシート化してセミクロスシートとしたものなどが挙げられます。他にも国鉄特急型グリーン車を、近郊型のグリーン車に格下げ転用されたこともあります(サロ110形300番代など)。
扉数に関しては、優等列車では1箇所、または2箇所程度で済んだものが、普通列車で使うとなると、乗降のしやすさという観点から増やされることもしばしば。こちらは座席の改造とは異なり、外観にも大きく影響を与えます。
このように、一言で「格下げ」と言えども、特急型や急行型といった同じ区分け内で、グリーン車などの特別車から普通車に格下げされるものから、区分けの垣根を越えて特急・急行型から近郊型等の一般型に格下げされるものまで、そのパターンは多岐に亘ります。
■実は普通列車用 手の込んだ格下げ改造車たち
国鉄分割民営化直前では、車両を新製する余裕があまりなかったため、余剰となった特急・急行型を活用した格下げ改造車が多くみられました。その中でも特に昼行・夜行と両方で活躍した特急型電車である581系・583系を、近郊型へ改造した419系・715系は、全廃された今なお語られることの多い車両です。
581系・583系の車体構体を活用しつつも、扉数を1箇所から2箇所に増やして窓も開閉できるようにしたほか、セミクロスシートへの改造など、可能な限り近郊型として使用できるようにしています。さらに、足りない先頭車に関しては中間車を先頭車化改造しており、この際寝台車時代の深い屋根構造をそのまま流用したため「食パン」みたいな見た目になったのも特筆されます。この車両は、当時近郊型を地方に新製配置できるほど余裕がなかった国鉄の苦肉の策といえました。
かなり苦しい改造を受けた車両ではありましたがJRにも継承され、419系に関しては2011年まで活躍を続けて、比較的長寿な車両となりました。
■今も乗れる格下げ改造車
●元グリーン車 乗り得な500系新幹線の6号車
現役最古参の新幹線車両として、山陽新幹線の「こだま」として活躍を続ける500系。その6号車に当たる526形7200番代は16両編成時代はグリーン車だった車両です。これは8両化に伴い施工された改造で、フットレストや読書灯などといった新幹線グリーン車の定番設備こそ撤去されていますが、シート自体はそのまま、シートピッチも変更なしで、座り心地は変わらないまま料金は普通車と同等という「乗り得」車両になっています(ただし指定席)。
●格上げと格下げが混在する381系「やくも」
定期運用からの引退も近づき、ますます注目が集まる後藤総合車両所所属の381系「やくも」には、格下げ車両のほか、格上げ(グレードが上がる)車両も存在します。特に、国鉄色で走る6両編成は、グリーン車だったサロ381形を普通車に格下げしたサハ381-231と、普通車クハ381からグリーン車に格上げされたクロ381-141の両方が組み込まれています。
●贅沢な普通列車 キハ185系
普通列車で運行されていたキハ58系を置き換えるため、N2000系導入により、特急用だったキハ185系の一部が玉突きで普通車に格下げ改造されました。これらの普通列車仕様車は3000・3100番代と新たに区分され、リクライニング機能の停止や枕カバーのビニール化などが行なわれました。とはいえ基本的には特急時代のシートのままとなっており、格下げとはいえ贅沢仕様な普通車なのが印象的です。