185系

特集・コラム

これは渋い!プラレール「つくばエクスプレス」のセット品は隠れた名作だった?

2024.05.17

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は通勤路線である「つくばエクスプレス」をモチーフにしたセット品をご紹介!内容的にも渋いものですが、付属の車両やレール、情景を見ると意外にも凝った内容になっていました。(編集部)


【写真】持ってた方も多いのでは?「つくばエクスプレス高架レイアウトセット」の全貌写真はこちら!

 プラレールのセット品には大きく分けて、基本となる地上線のレイアウトと、高架線をモチーフとしたレイアウトの二種類があります。そこに、地上(平面)と高架を組み合わせたもの、車庫を入れたもの、ギミックを組み込んだもの、プラレールらしさを出したタワーレイアウトなどなど、そのバラエティの幅は非常に広いです。
 中でも高架線のセットは「高架レール」が登場したことにより、地上線とは異なる雰囲気のレイアウトを演出します。そんな高架線のセットですが、線路の性格上新幹線を題材としたものが多い中、通勤路線がモデルとなった「渋い」セットが過去に発売されていました。今回はその渋めなチョイスだった「つくばエクスプレス高架レイアウトセット」についてご紹介していきます。

▲赤い車番プレートが特徴的なTX-2000系。セット限定の仕様だ。

 2005年8月24日、秋葉原~つくば間を結ぶ新路線「つくばエクスプレス」が開業しました。秋葉原~守谷間で使用される直流電車のTX-1000系と、全区間で使用される交直流電車のTX-2000系がデビューし、プラレールでは開業と同日に前者をモデルとした車両単品「S-56 つくばエクスプレス」が発売され、通常ラインナップに仲間入りしました。
 開業から約半年後の2006年3月、今度はセット品が発売されます。それが「つくばエクスプレス高架レイアウトセット」です。その名の通り、高架区間が多いつくばエクスプレスの線路をモチーフとしたセットで、「高架レール」のグレーを基調としたシックな色合いが目を引きます。
 単純なエンドレスではなく、駅を「Y字レール」で挟み、反対側にもストップレールを配置することで電車の行き違い遊びを楽しめるようになっているのがこのセットの特徴です。
 駅は「プラキッズ街の駅」のカラーバリエーションとなり、真新しい駅をイメージしたと思われる白いホームに、つくばエクスプレスのイメージカラーである紺色の屋根という、このセット限定のカラーリング。時刻表と番線表示ももちろんつくばエクスプレス仕様で、ストップレールが付いている側が2番線の「秋葉原方面」、反対側が1番線の「つくば方面」となっています。駅の売店は今や過去のものとなってしまった「am/pm」が入居しています。
 駅自体はモデル地を指定しておらず、実際に高架駅である駅のうち、直流区間の「北千住」「八潮」「柏の葉キャンパス」「守谷」がシールで用意され、自由に選ぶことができます。
 「Y字レール」も2005年に発売された当時の新製品レールですが、高架レールに合わせてグレーに成型されています。ストップレールも同様のカラーリングですが、駅のレール部に合わせてストップパーツが黄色になっており、並べた際にバランスよく見えるよう配慮されているのがポイントです。ブロック橋脚は濃いめのグレーに成型されており、2006年当時に既に存在していた他のセットのグレーのブロック橋脚や、2008年に単品発売された「高架直線レール」「高架曲線レール」の同梱品とも異なる、このセット独自のカラーです。

▲白いホームに紺色の屋根が特徴的な限定カラーの駅。駅名標はシールによる選択式。

 車両は前面の赤い車番プレートが目立つTX-2000系となり、単品で製品化されているTX-1000系と差別化が図られています。セット内容が行き違い可能なレイアウトとなっているので、車両単品と合わせて秋葉原~守谷間のイメージで遊べることができます。付属の駅名標シールが直流区間のものとなっているのもこういった想定からでしょう。
 新路線の製品化ということで、車両の造型も素晴らしいものとなっています。単品では直流用のTX-1000系とされていますが、車体は交流用機器を積んだTX-2000系がベースとなっているため、碍子をはじめとしたパンタグラフのモールドが表現されています。
 シャープな先頭部の表現も素晴らしく、尖った形状はもちろん、ワイパーや前照灯・尾灯分も丁寧に再現されています。また、ワイパー下に車番プレートのシールが貼ることでTX-2000系を再現しています。編成は開業時に用意されたうちの最終編成である2166Fです。行先表示は「区間快速 秋葉原」となっています。

 このセット以降も高架レールで構成されたものが発売されていますが、冒頭で述べた例に漏れず、いずれも新幹線のセットです。また、他の新幹線のセットも一部区間を高架としただけで平面がメインとなるレイアウト構成のものが多く、発展性の兼ね合いもあってかなかなか高架線だけで完結するセットというのは出しづらいものと考えられます。通勤電車のセットに限定すると、つくばエクスプレスのセットが現状最初で最後です。
 発売から既に18年以上が経過し、再評価の機会もあまり無いこのセットですが、こうして改めて見るとやはり「渋い」印象です。特にグレー成型のY型レールとストップレールは今でも欲しがる人がいるなど、隠れた名作セットだと言う声もあります。
 高架線を走る通勤電車は都市部では馴染み深いので、いずれまたこのようなコンセプトのセットを企画してほしいところです。

 開業時に用意されたTX-2000系の製品化はこのセットの一度きりとなりましたが、2008年に前面と側面に赤帯が入った増備車が導入され、これを反映して2010年に従来のつくばエクスプレスを置き換える形で「S-56 つくばエクスプレス2000系」が発売されました。
 その単品の2000系も2017年に絶版。現在のプラレールではつくばエクスプレスの製品は発売されていません。2020年にデビューしたTX-3000系も製品化されておらず、東京に来る電車としては少々不遇な印象を受けます。
 来年2025年で開業から20周年を迎えるつくばエクスプレス、再びプラレールで登場する日を期待したいですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加