text：MSかぼちゃ（X：@MS3167）
photo（特記以外）：豊田不動
111系・113系・115系といった直流近郊型電車の研究を活動のメインとし、鉄道系サークル「日本かぼちゃ電車学会」の主宰も務め、動画や同人誌でその成果を発表しているMSかぼちゃさんの連載！「徹底研究！国鉄近郊型電車113系115系」。今回のテーマはしなの鉄道に残る115系たちにクローズアップします。JR東日本からはすでに全車引退しており、東日本地区の115系はしなの鉄道所属の車両が最後となりました。引退も予告されている同社の115系ですが、独自のリニューアルやカラーバリエーションなど、見どころが多いのも特徴です。（編集部）
JR東日本の新潟地区から115系が引退したことにより、東日本地区で活躍する115系は、しなの鉄道が最後の存在になりました。1997年の移管開業以来115系が多く在籍しており、最盛期は合計59両を数えていましたが、SR1系での置き換えが進み、現在では3両編成が8本の合計24両にまで減少しています。今回は、そんなしなの鉄道の115系の「現在」に迫ります。
▲湘南色を纏い現在も活躍するS3編成。写真はパンタグラフ交換前の姿である。
’21.12.28 しなの鉄道 しなの鉄道線 小諸〜滋野
同社における115系は、1997年の移管開業時に加え、169系置き換え時の2013年と、北しなの線移管開業・JR東日本長野総合車両センター所属115系の定期営業運転終了時の2015年の3度にわたって、JR東日本から譲渡されていますが、現在活躍する車両は全車が1997年に譲渡された車両で、独自のリニューアル工事が施工されています。
この工事は、JR東日本の長野・新潟地区の115系向けに施工したものをベースとしたもので、JR車と同じ長野総合車両センターで施工されていますが、化粧板の貼り換えの省略や、床材材質の変更など、一部にしなの鉄道独自の仕様を見ることができます。他にも、ワンマン運転に対応するための設備や、ドア上に設置されたディスプレイ、東海道・山陽新幹線と似た音のドアチャイムも同社に所属する115系の特徴です。非常に細かい点ですが、運転席部の前面窓向かって左上にウインドウウォッシャーが設置されていることも特徴として挙げられます。これはしなの鉄道に限らず長野地区の115系に対し90年代以降に施工されたもので、長野に所属したJR東日本の115系はもちろん、新潟地区の一部の115系（最末期）など、長野地区を由来とする車両で見ることができました。
▲新潟の115系に残存していたウインドウウォッシャー。
’21.9.8 クハ115-1232 P：MSかぼちゃ
最近の変化としては、2022年ごろから乗務員室上の信号炎管を撤去している他、ひし形のPS23とシングルアーム形のPS35Aが混在していたパンタグラフを、2021年ごろからPS35Aに統一するために換装を行っています。PS23は狭小トンネルに対応したパンタグラフであり、かつては中央本線を走行する115系をはじめとする国鉄型車両に広く採用されていましたが、現在ではS8編成「ろくもん」が系列全体で唯一の装備例となっています。
また、しなの鉄道の115系には、多種多様な特別塗装車やリバイバルカラーを纏った車両が在籍していましたが、これも多くが運用離脱やしなの鉄道色への復元により数を減らしており、現在では「ろくもん」を除けばS3編成（湘南色）、S7編成（初代長野色）、S11編成（アニメ『Turkey!』ラッピング）の3本のみとなっています。
2024年3月現在、「ろくもん」を除いた3両編成7本の計21両がしなの鉄道線・北しなの線全線とJR信越本線長野〜篠ノ井間で運用されています。同線には快速列車も存在しますが、115系を使用した運転は2023年に終了しており、普通列車のみで使用されています。「ろくもん」は、長野～軽井沢間で運用されるほか、1月に1度ほどの不定期的運行ではありますが「姨捨ナイトクルーズ」としてJR篠ノ井線篠ノ井〜聖高原間にも入線します。
▲現在もPS23型パンタグラフを搭載して活躍するS8編成「ろくもん」。
’18.7.22 しなの鉄道 しなの鉄道線 千曲〜屋代
しなの鉄道では、115系を2028年までに順次引退させる事、ならびに引退までの4年間で「プロジェクト115」と銘打ち、様々な企画を実施することをアナウンスしています。
信濃路から115系の姿が消える日はそう遠くはないようですが、引退まで我々をもっと楽しませてくれることでしょう。
（2024年5月10日 加筆の上掲載）
