185系

特集・コラム

プラレールで「入換」に「出区」!?楽しい往復EF66のブルートレインセットの全貌

2024.04.19

text & photo:なゆほ

▲洗車場から客車を引き出すEF66。

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は1976年に発売された「往復EF-66ブルートレインセット」をご紹介します。往復機構を持ったEF66+ブルートレインのセットで、プラレールで出区→運転→入換・入庫という、車両運用の一連の流れが、往復機構で楽しめる逸品でした。今回はプラレールにおけるEF66とブルートレインの歴史も振り返りつつ、この製品について深堀します。(編集部)


 先日、新たなプラレールリアルクラスの公式ティザームービーがYouTubeで公開されました。詳細の公開はまだ先だと思われますが、映像を見る限りEF66牽引のブルートレインと思われる車両のシルエットが映し出されました。
 20代後半以上の世代にとって、東海道・山陽本線のブルートレインと言えばEF66牽引の列車という印象が強く残っているものだと思います。プラレールでも全国流通品の「S-39 ブルートレイン」として「あさかぜ」が2003年から2007年までラインナップに乗り、2012年にはプラレール博などのイベント限定品として「ブルートレイン はやぶさ」が登場し、近年まで現役の製品でした。
 この2つ以前のプラレールのブルートレインはEF65牽引となっています。しかし、「あさかざ」「はやぶさ」以前にも一度だけEF66のブルートレインが発売されたことがありました。それが今回紹介する「往復EF-66ブルートレインセット」です。

【写真】「往復」するEF66牽引のブルートレイン!セットの全貌写真はこちらから!

▲1985年発売の「往復EF-66ブルートレインセット」の外箱。

 EF66形電気機関車は1968年に貨物機として登場しました。その出力の大きさから「マンモス機関車」として知られ、鮮魚貨物特急「とびうお・ぎんりん」の牽引機として走った姿は有名です。
 プラレールでは1976年に「EF-66でんききかんしゃ」として、当時ラインナップにあったED70に続く2つ目の往復機能付き車両(おうふくプラレール)として発売されました。貨物機なので付属する車両は当然貨車です。以前記事でも紹介した「タンク車」と「無蓋車」が付属しました。
 ED70の連結器が後尾側にしか付いていなかったのに対し、EF66では両端に付けられ、前進・後進のどちらに動いても貨車を牽引・推進できる画期的な製品として開発されています。車両もさることながら箱も変わった構造をしており、当時の蓋と身に分かれる「上下箱」とは異なり、駅弁の箱のような、蓋が身と一体となった通称「上蓋箱」が採用されていたのもコレクターの間では有名な話です。
 せっかく発売された「EF-66でんききかんしゃ」ですが、製品としては短命に終わってしまい1977年にはカタログ落ち。同年からは機関車1両のみでの発売となり、翌1978年には更にリニューアルされ、ED70と同じく連結器が片面のみの仕様となりました。ED70がこの頃に絶版となっているため、後継製品として仕様の統一を図ったものだと考えられます。

 1985年3月14日に国鉄のダイヤ改正が行われました。この改正からEF66が旅客列車にも充当されるようになり、貨物専用機から一転、ブルートレインの牽引を行うようにもなりました。この旅客運用開始を反映したセット品が同年に発売されました。それがこの「往復EF-66ブルートレインセット」です。
 エンドレスの中に洗車場付きの車庫があるという、1975年に発売されたED70のセット「おうふくプラレールせんしゃじょうセット」と同一の構成ですが、ブロックトンネルが新たにレイアウトのアクセントとして追加されています。客車は単品の「EL05 ブルートレーン」と同一のもので、テールマークは「富士」ですが、EF66も単品と同一なためヘッドマークの表現はありません。

▲「洗車場」は元々はおうふくプラレール用の情景部品。1975年の登場当初からリターン機能が付いていたが、2003年に廃止されている。手前はリターンレール。

 往復車両であることを生かし、ブルートレインを連結した状態で車庫から発車、本線を走り、本線上にあるリターンレールで逆転して推進回送で車庫に戻るという動きが楽しめます。前身とも言える「おうふくプラレールせんしゃじょうセット」もこのセットと同様、客車と機関車が洗車場のある車庫を行ったり来たりする内容です。しかし、車両の組み合わせが「EF15の車体を流用したED70」と「0系新幹線の車体を流用した客車」という実車をベースに考えると完全に架空のものだったため、このブルートレインのセットではよりリアル寄りにリニューアルされたと考えることもできます。

 このように既存の製品を活かして、実際の鉄道の動向を再現したセットでしたが、EF66牽引のブルートレインが定着したからと言ってプラレールの車両単品に反映されることはなく、相変わらずEF65牽引のままラインナップされ続けました。
 往復車両であることに加え、前面の形状が複雑なためヘッドマークを付けるためには車体の改修が必要となることが通常品にはならなかった原因だったのか、そのまま1992年にEF66の往復機能が廃止され、1994年には一度絶版となっています。
 2001年に「貨車がいっぱい操車場セット」にて貨物色、「ファーストトライセット こん」にて国鉄色が、それぞれディテールアップを施して製品化され、2003年に冒頭で触れた「S-39 ブルートレイン」としてヘッドマークが付いた姿で発売されました。「往復EF-66ブルートレインセット」の発売から実に18年後の事でした。

 「おうふくプラレール」は1992年以来途絶えていましたが、2014年の動力更新により同一の規格に様々なギミックを搭載する手法が確立、そのシリーズの一つとして2021年に「往復シャーシ」として復活を果たしました。
 今後もし、 「リアルクラス」にEF66が登場し往復シャーシが搭載できれば、「往復EF-66ブルートレインセット」を彷彿とさせる遊びができるのかもしれません。本線上から姿を消して久しいマンモス機関車のブルートレイン、再びプラレールの世界で楽しめる日が待ち遠しいですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加