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国鉄からJRへ 通勤電車「顔」の変遷 振り返るとわかる時代の移り変わりとは

2024.04.22

text:鉄道ホビダス編集部

▲現代の首都圏通勤輸送を支えるE235系(左)とE233系(右)。いずれの系式もヘッドライトは上部に設けられたデザイン。

‘19.8.21 山手線・京浜東北線 田町 P:堀畑哲也
(今日の一枚より)

 電車に乗る時、皆さんは車両の「顔」に注目して見たことはあるでしょうか。駅で電車を待っている時は、そんな余裕がなかったりすることが多いかと思いますが、通勤電車の顔にも歴史があり、その時々のトレンドや傾向によってさまざまスタイルが変わってきました。今回は通勤型電車、その中でも国鉄新性能電車の初期から現在のJRの最新車両まで、その変遷を見ていきましょう。

【写真】懐かしの101系・103系から現在の車両まで!通勤電車の「顔」の変遷を見る!

■101系から始まった国鉄新性能電車

 1957年に登場した国鉄101系。この車両からカルダン駆動を採用するいわゆる「新性能電車」の歴史が始まりましたが、その顔はヘッドライトは上部に埋め込まれ、左に運行番号表示器、右に行先表示器、3枚連ねた前面窓と、車両下(裾)部にテールライトというスタイルで、これは旧型国電の72・73系電車の「全金車」と呼ばれるグループと似た形状をしていました。
 非常にシンプルで素朴な顔つきですが、この顔はのちに改良型として登場し、その後3000両を超える両数が製造された国鉄のベストセラーでもある103系電車にも細部は異なりますが、基本スタイルは継承されていくことになります。

■黒いアクセントが印象的 劇的に変わった201系

 長きに亘り製造された103系でしたが、流石に1980年代ともなると、私鉄各社の新型車両と比較して性能の陳腐化が否めなくなりました。そこで従来の抵抗制御から改め、当時最新技術であった電機子チョッパ制御を国鉄で初めて採用した201系が1979年に登場します。
 201系では前面のヘッドライトと窓、運行番号と行先表示器を一つにまとめるように、周囲を黒色で処理しました。さらに、従来の国鉄型車両は左右対称のデザインが多かった中で、201系では左右非対称のデザインを取り入れたことも特筆されるポイントでしょう。また、屋根の曲線も103系と比べて浅いものとなり、車体断面で見た時の雰囲気も大きく変化しました。

 この黒色の前面はのちに登場するさまざまな車両に影響を与えていくことになります。1985年に山手線でデビューした国鉄初のオールステンレス車205系も、201系同様の黒い前面と左右非対称の窓を持ちますが、ヘッドライトは腰部の帯上に移り、その顔のイメージはまた変わることになりました。

■JR誕生 ヘッドライトは下へ

 1987年4月1日、国鉄は7社に分割民営化され、新たにJRグループが発足しました。国鉄民営化直前より、通勤型電車のヘッドライトも運転台上から徐々に下へ配置されていきましたが、90年代に入ると角形ライトケースに前照灯と尾灯を一体に収め、それを車体裾に配置する前面スタイルが見られるようになります。その最たるものがJR西日本の207系とJR東日本の209系でしょう。いずれの車両も直線主体のデザインながら、ところどころに丸み帯びた形状というデザインを取り入れたことで、従来の国鉄型から大きくイメージチェンジすることに成功しています。また、全国的に90年代以降の通勤型電車はステンレス製、またはアルミ製車両となっていったことも特筆されます。

■独自の発展を遂げる通勤型電車の顔

 JRになって以降は各社独自で車両形態がが発展していきます。近郊型との垣根をなくして「一般型」と分類したJR東日本や、近郊型の3ドアを基本としたJR西日本などが例に挙げられるでしょう。
 また、近年都市部を中心に整備が進むホームドアの波及により、車両の顔のみならずデザインも大きく変わっていくことになります。2015年に山手線でデビューしたJR東日本のE235系ではヘッドライトは上部に設けられ、側面帯もホームドアに配慮し、ドア部分に縦で配置されました。先代にあたるE233系やE231系近郊タイプもライトは同じく上部に配置されましたが、上の方がより視認性が高いことからこの位置になっていると考えることができます。これは101・103系時代の灯具配置に近いとも言え、通勤(一般)型電車の車両思想も時代を巡っているように思えます。
 逆に、大阪環状線の最新鋭車両323系は、前面は223系・225系で確立された腰部にライトケースを配置するスタイルを継承し、車体に関しても他の近郊型車両に合わせる形で通勤型ながら3ドアとするなど、独自の進化を遂げています。JR東海の315系も同様に、腰部にライト類を配置し3ドアの車体を持つ通勤型ですが、近年ではあまり見かけない丸みを帯びたライトケースが非常に特徴的なデザインとなっています。

 国鉄時代とは異なり、各社の設計思想や地域の事情や時代に応じて、それぞれで進化をしている通勤型車両たち。その進化や思想は「顔」にも色濃く現れています。

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