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特集・コラム

「空気圧」で操作するプラレール駅の珍品!「笛コントロール駅」とは?

2024.04.05

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は1977年から1981年まで発売されていた「笛コントロール駅」という一風変わった情景部品についてご紹介します。実際の鉄道と同様に、「笛を吹いて発車する」というギミックをプラレールで楽しめるという製品でした。ギミック的にも珍しい製品ではありましたが、実は意外に現代のプラレールにも受け継がれている思想が垣間見えます。(編集部)


 鉄道玩具であるプラレール。もちろん、情景部品として「駅」は外せません。ですが、一言に「駅」と言っても、そのバリエーションは多岐に渡ります。ただレールの横に置くものもあれば、ストップレールと一体になったもの、到着した車両が自動で発車するもの、サウンド機能が付いているもの、積み重ねる事が出来るものなどなど、非常に多彩です。

【写真】珍しいギミックの「笛コントロール駅」!45年以上前のプラレール情景部品の写真!

 今回紹介する「笛コントロール駅」は、分類するなら「ストップレールと一体になったもの」になります。以前の記事でも少し触れた製品ですが、今回はよりクローズアップしていきます。

▲1977年から1981年にかけて発売されていた「笛コントロール駅」

 「笛コントロール駅」はその名の通り、付属の笛で操作できる構造になっている情景部品です。チューブを介して駅と笛、またはベローズを接続し、空気圧でストップ機構を上下させて列車を停車・発車させるという、プラレールの歴史において他にはない唯一の構造を持ちます。ホーム上にある信号機もこれと連動しています。カラーリングは以前の記事で紹介したように、緑のベースに白いボディという当時の情景部品でよく見られた配色ですが、他の製品では赤い屋根をしているものが多いのに対し、この駅では田舎にある駅を表現したと思われる茶色い屋根となっています。
 駅名標には「こうがいのえき」と記されています。前後の駅は「やま」「まち」で、プラレールの駅で言うと「こうげんの駅」と「ライト付えき(とかいのえき)」の間に存在するというイメージでしょうか。「こうげんの駅」は発車ベル付きだったため、それに対して小さな駅となる「笛コントロール駅」は発車ベルが無い駅として作られたものだと考えられます。笛はただの部品として付属させても良かったように思えますが、チューブで接続して吹鳴すると発車するという、実際の鉄道と同じ動きを楽しめるようになっているのが面白いです。
 駅自体はかなり小ぶりでホームの有効長は直線1本分以下、ホームはほぼ駅舎が占めているという、なかなか攻めたデザインをしています。駅舎には階段でアプローチする昔ながらの駅です。駅舎内には「こうげんの駅」「ライト付えき」「いなかのえき」などと同様、有人改札があります。自動改札機が普及していなかった頃の製品なので当然ですが、時代を感じさせます。しかしベンチ等は表現されておらず、駅舎があるだけという簡素な作りです。

▲セット品として「ふえふきはっしゃセット」が存在するが、駅の単品との差異はほとんどない。

 駅そのものは今でも出回る機会が多いですが、同時に発売されたセット品の方はなかなか見る機会がありません。新製品のアピールとして発売されたセットで、こういった商品展開は今でも見受けられます。レイアウトは基本的なエンドレスで、他の情景部品として、立木が2本、並木、架線柱が付属しています。収納の関係上、単品ではネジ留めされている駅舎とホームが分離出来るようになっています。車両は郊外を走る電車をイメージしてか、583系「寝台特急」が選ばれました。中間車を抜いた2両編成と短めですが、郊外の路線のイメージがよく出ていると思います。

 なかなか面白い情景部品でしたが、あまり長期間は生産されずに1981年に絶版となりました。1980年代以降、現実の鉄道では発車ベルの電子音への置き換えや発車メロディの導入、地方の小さい駅でも都市圏と同様の発車ベルの導入が進んだことにより、車掌や駅員が笛を吹いて発車の合図を出す光景もあまり見られなくなってきました。

 しかし時代が下ること2015年、情景部品ではありませんが、付属の笛を吹くことで遠隔での発車・停車が出来るシャーシを搭載した車両「笛コン」シリーズが発売されました。これもあまり長続きしなかった製品でしたが、笛で列車を操作するというコンセプトは「笛コントロール駅」に通じるものがあります。

 こういった昔の「駅」も、掘り下げていくと現在に繋がるところが見えてきて面白いものです。

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